『親のリーチ』は"魔法の言葉"?

手元のデータを少しばかりご紹介。今回のテーマは「親のリーチ」に主眼を置いて、色々な考察をしてみたいと思います。

※本記事のデータは特別な記載がない限り、Mリーグ公式戦(Mリーグ駅伝・Mトーナメント等のカップ戦を除く)2018-19シーズンから2023-24シーズンまで全1,308半荘・15,952局(チョンボの2局を除く)・12,589回の和了を分析しています。

定義

ここでの「平均打点」とは「ロンまたはツモを宣言して和了が成立した際に得られた得点の合計を、その回数で除して得られた数値」と定義します。
また、「得点」とは特に注記がない限り、積み棒・供託・他家リーチ棒を考慮しない純粋な和了による得点とします。
なお、和了が成立する権利を有しているのにロンまたはツモの宣言をしなかったケース、頭ハネにより和了の権利が消滅したケースは、上記の「和了が成立」を満たしていないものとします

ということで、Mリーグルールの平均打点は何点なのでしょうか?
これまで12,589回で得られた得点は84,251,900点、上記の計算式で計算すると

84,251,900÷12,589≒6,693 平均打点は6,693点です。

…と、これだけで記事は書けません。さすがに芸がなさすぎます。
もう少し深掘りしてみましょう。

状況別平均打点

麻雀で得ることができる得点は、大きく3つの状況に大別されます。

①親(荘家)か子(散家)か
親番は子の1.5倍の得点となるので、当然考慮されるべき要素です。
②和了形態
麻雀は「リーチ」「副露」「黙聴」のいずれかで和了が発生し、特にリーチによる和了では得点アップの大きな要素となる裏ドラが発生するため、これらの状況も考慮が必要となります。
③ロン和了かツモ和了か
門前の場合ではツモでも1翻がつくこと、ツモテンパネ2符の影響が僅かにあることから、理論上同じ翻数でもツモ和了の時の打点は高くなります。

①が2通り、②が3通り、③が2通り、全て組み合わせると全12パターンの和了状況が発生するため、今回の平均打点分析では12状況を考慮して分析していきます。

図表1-状況別平均打点

図表1は全12パターンに分けた平均打点の別です。
俗に「親のリーチは魔法の言葉」と言われますが、ご覧のとおり親番のリーチでは平均打点が1万点を超えており、ドラが7枚かつ、一発・裏ドラがあるMリーグルールの高打点の状況がこの図表からも見えてきます。

少々面白いのは「黙聴」の項目。理論上、状況が同じであれば親の平均打点は子の平均打点の1.5倍に近似するはずであり、例えば「リーチ・ロン和了」の平均打点を親と子で比較すると、親は子の平均打点に対して約1.47倍となっていますが、黙聴ではロン和了1.75倍、ツモ和了1.65倍と理論上の想定平均打点を大きく上回っています。親の場合、打点十分の満貫は黙聴とする傾向があります。

ツモとロンの世界線

この図表でロンの平均打点は、裏を返せば状況別平均放銃点とも見ることができます。
親の平均打点がx点なので、放銃した場合このくらいの点数を失うと思考する場合、より正確にはロン和了時の平均打点がどれくらいかという点を考慮しなければなりません。
図表では親リーチ・ロン和了の平均打点が10,450点、子リーチ・ロン和了の平均打点が7,099点、聴牌が明白なリーチ宣言に対して、放銃した場合、これくらいの点数分の失点を受け入れられるかが目安となります。

そして、ツモ和了の平均打点は親の場合は3で除した場合が、理論上の子の支払い分、子の場合は2分の1が親の支払い分、4分の1が子の支払い分となります。

期待値世界は?

図表2-状況別和了回数・打点状況

図表2は状況別の和了回数と、12パターン別の打点状況の一覧です。
親のリーチロン和了は約40%で満貫以上、子のリーチロン和了は48%で満貫以上となります。そして簡易的ですが、この図表から被ツモ時の期待値の近似値が計算ができます。

事例として、親リーチを受けて子は全員降り局面である状況という単純状況下では、子方の支払い期待値は以下のとおり3,882点の支払いとなります。
ただし、このケースは「親リーチの成功率が100%・子は全面的に降り」というモデルなので、もう少しテコ入れが必要です。

図表3-ツモられ期待値

魔法の言葉は+940点。

親リーチの和了回数が818回、和了以外の決着となったのが2,359回、つまり親リーチの成功率は約25.75%と計算されます。
和了以外の決着を分析すると、子の和了が1,343回(うち、子ツモ和了580回、子同士の横移動530回、親の放銃233回)、流局1,016回となり、実観測ベースでの親リーチ状況における期待値は図表4のとおりです。
注)放銃・被ツモ・横移動は供託リーチ分の失点を反映

図表4-親リーチ時の期待値

親のリーチは魔法の言葉。期待値世界では親がリーチを宣言した瞬間に、約1,600点のプラス収支が期待できる計算となります。モデルケースが単純とはいえ、Mリーグルールにおける今季の親番の平均収支が全局通して669点であることを鑑みると、リーチ宣言によって期待値世界では940点もアップするのです。

結び

今回の記事は統計学の素人が、気になった点を書き連ねたところであり、有意差を求める検定は行っておりません。しかし、実測ベースで平均打点を知っていることにより、自分の手の和了出来る確率と、状況別の平均打点と成功率を頭に入れておくことで押し引きの一つの判断になりうるかもしれません。
決定的な間違い、考察の誤りについては記事を読んでいただいた皆様よりご指導いただけましたら幸いです。

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。