Mリーグ2019レビュー⑦ セガサミーフェニックス編

シリーズでお伝えする今期のMリーグの総括編。
8チーム29選手の今期の試合内容を、独自の指標で査定を行います。
第7回目のレビューは今期年間総合2位、セガサミーフェニックスを特集します。

チーム総評:ダブルエースの活躍で捲土重来の2019シーズン。最終日に無念の逆転を喫するが、攻守ともに輝きを放ち不死鳥は三度目の飛翔へ。

全216試合で争われた2019シーズン、思えば開幕戦のトップは昨季壁にぶち当たった魚谷選手のトップからシャーレ争奪戦の号砲が鳴り響いた。
序盤は新規参戦チームサクラナイツと風林火山に先手を取られ中位集団からのスタートとなったが、12月最終戦に和久津選手が29人目のトップをマークすると一気に開花。Mリーグ新記録となるチーム5連勝を飾り一気にトップ浮上となるとレギュラー後半は完全なロンリーバトル。個人賞を総なめとする1位通過を果たし、優勝戦線筆頭に躍り出た。セミファイナルは持越しのアドバンテージを活かしてサクラナイツに抜かれはしたものの危なげなく2位通過、ファイナルの各日第2試合終了時でランキングの最上位に位置しシャーレ獲得はもう時間の問題かと思っていた。
影も形もその感触も、不死鳥の爪先にしっかりと感じていた最終日、海賊船からの猛攻を受けするりとシャーレがその掌から零れ落ち、栄光へつながる折れ線グラフの尾根道を最後の最後でパイレーツに奪われた。

グラフ1-1

セミファイナルグラフ

ファイナルグラフ

データは攻守ともに非常に優秀。
通期和了率は18.74%と平均的な数字だが、通期の平均打点は7249点とリーグトップ。それでいて、通期放銃率9.54%とパイレーツと0.10%差の2位となり、対戦相手にはたまったものではないデータとなっている。
チームトータルでは+518.8pts。素点だけで+178.8ptsと今季圧勝をしながらも、ファイナル12戦の短期決戦でパイレーツに競り負けてシャーレを逃したが、『不死鳥はいつか羽ばたく』と声高に宣言したあの時からもうフェニックスの黄金期は幕を開けているのかもしれない。

選手別総評

魚谷侑未選手:攻守ともに文句なし。レギュラーシーズン個人王者、ハイスコアレコード、ファイナルシリーズ個人王者のタイトル奪取。平均打点の高さがゲームを支配し、年間最優秀選手に選出。

【査定】攻撃A+ 守備A 加点効率B 運B 総合査定A+ ★年間最優秀選手

22-4魚谷総合

22-1魚谷レギュラー

22-2魚谷セミファイナル

22-3魚谷ファイナル

絶え間ないプレッシャーとエースの自覚を背負った2019シーズン。最も輝きを放った選手は間違いなく魚谷選手だろう。レギュラーシーズンの平均打点は驚愕の8333点。満貫以上の和了率がずば抜けて高いことが要因である。

打点分布

今季の和了統計を分析すると、全体での和了は2058回。そのうち親の和了は557回、子の和了は1501回となっている。
このうち満貫以上となった打点は親247回で、満貫以上和了率は44.34%(247回/557回)子の満貫以上となった打点は658回で、満貫以上和了率は43.84%(658回/1501回)となっている。
これを踏まえて、魚谷選手の和了内容を分析するととんでもない状況である。子での満貫以上和了率は61.54%で29人中トップ親でも57.14%が満貫以上を和了しており、平均の43~44%を軽く凌駕している。結果、レギュラーの子の平均打点は7672点とほぼ満貫に近い数値を叩き出しており、親と子を合わせた平均打点も8000点を超える圧倒的火力を誇った。
守備でも全く見劣りしない。通期放銃率は8%台と上位にランクインして、平均放銃点も5385点で平均よりいい数値となっている。
16試合連続ラス回避(歴代2位タイ)10試合連続連対(歴代2位)1試合獲得スコア+114.4ptsの燦然と輝くMリーグレコードを引っ提げ泳ぎ切った2019シーズン、今季最強雀士・年間最優秀選手として査定した。

近藤誠一選手:悲哀知らずの裸一貫、鉄壁の要塞を築き上げ点棒流出をシャットアウト。見る者を唸らせる23試合連続ラス回避、74局連続無放銃記録の金字塔を打ち立てる。

【査定】攻撃A 守備A+ 加点効率C 運A 総合査定A

23-4近藤総合

23-1近藤レギュラー

23-2近藤セミファイナル

23-3近藤ファイナル

守備指標が光る結果となった2019シーズン、レギュラーシーズン放銃率は恐るべき6.97%平均放銃点5705点となり、放銃期待値は全選手中トップの397.56となった。全く振り込まず、振り込んだとしても打点が安い安定感が後押しし、驚異のシーズン跨ぎとなる23試合連続ラス回避を樹立した。
近藤選手の勝つ要因はズバリ「親番での加点」にある。レギュラーシーズンでの親番平均収支を見ると1805.71点となっているが、これは『親番1回を経験すると1800点加点する』ということである。シーズン全体を通したこの指標は617点であり、平均値から約3倍の数値となっている。
分かりやすいイメージだと【1回親番を経験すると1800点加点する=他三者は近藤選手の親番では有無を言わさず600点を差し出す】と考えるといかに恐ろしいかイメージできる。『近藤選手の親=1翻』の価値があると言ってもよい。堪ったものではない。
親番1回あれば全てがひっくり返る持ち味があるのが近藤選手の特色である。

画像13

レギュラーシーズンの第45節第1試合、ラス前では箱下まで突き落とされ誰もが連続ラス回避記録が潰えると思っていたこの試合、親番最強雀士・近藤選手が親番リーチ3タテで42000点を稼ぐ、『大きく打って大きく勝つ』を体現した試合は、筆者の今季ベストゲームの5本の指に入る名勝負だった。
通期で見ても平均打点は非常に高い。魚谷選手には及ばずとも親/10336点、子/6623点と上位に位置し和了率19.53%も全く悪い数字でない。ファイナルシリーズ2試合のラスは誤算だったものの、今シーズン30試合登板でラスはたった3回という鉄壁の要塞が、来季未だ誰も成しえていない『レギュラーシーズン4着0回』を冗談抜きに達成するのではないかと期待を寄せる。
そして、守備力の権化・近藤選手が唯一全ツする『まつかよゾーンでのキャバクラタイム』がどうなるのか密かに楽しみである。是非ともコンプライアンスに反しない程度で頑張ってもらいたい。

茅森早香選手:攻め手を欠き我慢のシーズン。11戦トップなしがシーズン中に2回も現れトップが遠く大きくポイントを減らした。慢性的火力不足に陥り攻撃力半減が敗因。

【査定】攻撃E 守備C 加点効率C 運B 総合査定D

24-4茅森総合

24-1茅森レギュラー

24-2茅森セミファイナル

24-3茅森ファイナル

昨季の平均打点女王は今年は揺り戻しで大幅ダウン。しかしそれもやむを得ない。手がとにかく入らず我慢に我慢を重ねて通期連対率5割に乗せるのがやっとのシーズンであった。
守備は健闘したが平均放銃点が下位半分のグループとなっており、手数でカバーできれば下位脱出もあり得たかもしれないが、攻撃指標はかなり苦しい数字となっている。通期和了率17.24%は25位、平均打点も6512点で18位と守備指標の健闘も攻撃がついてこず、ゲームでのポイントを失っていった。
子での平均打点はそこそこある通期6435点、しかし親の平均打点は6652点子と大した差がない26位。親番の和了のうち平均40%少々で満貫以上となるが、茅森選手は19%しかない。親で稼ぐことができず、ゲームを決めきるだけの爆発力が足らなかったのも敗因として挙げられる。今季30試合でノー和了試合数はたったの1試合。和了は生まれるものの対戦相手の火力に力負けをしてしまった反省を生かし、打点女王の復活を2020シーズンに期待したい。

和久津晶選手:攻撃雀士にMリーグの洗礼。攻撃意識先行で押しすぎによる守備崩壊を招き自滅した。攻守のバランスのアジャストが来シーズン浮上の必須科目に。

【査定】攻撃C 守備E 加点効率E 運D 総合査定E

25-4和久津総合

25-1和久津レギュラー

25-2和久津セミファイナル

25-3和久津ファイナル

連盟ルールでの押しっぷりが買われ、見事ドラフトで席を射止めた和久津選手だったが、その攻撃意識に捕われ攻守のバランスが崩れ落ちた。
課題は明白、完全なる押し過ぎ。そして、先手を取られた時の引きすぎ。この2点が和久津選手を苦しめた。
通期和了率が20.35%と6位で高いが、平均打点が5621点とリーグ27位。数値上では小林剛選手のような打点は控えめで手数で勝負するイメージだが、この戦法が成り立つのは守備力が高いものであってからこそだ。一撃は低く、手数を増やす場合、自身の平均打点より相対的に相手の打点が高くなるため、一撃放銃でゲームプランが崩れる危険があるという側面を持つ。小林選手は通期放銃率7.78%でリーグ2位の高指標であったからこそ手数勝負戦法が嵌まったのであるが、倍近く放銃する通期放銃率13.72%では守備に失敗したと言わざるを得ない。
2点目のポイントは流局聴牌率他者に先行された場合は完全にオリに回る展開が目立ち、通期の流局聴牌率は24.44%でブービースコアの28位。これで全体的な放銃率が低ければ、あるいは一撃の打点がものすごく高ければ勝負になるのだが、そのどちらも欠いているのでは他者に先行されて苦しい立ち回りとならざるを得ない。
味わった洗礼は来期に生かさなければならない。ファンを魅了する押しの攻撃麻雀を理想としながらも、攻守そして押し引きのMリーグ仕様のバランスがどの程度になるのか来季はこの2点のピント合わせを早めに済ませておきたいところだ。

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次回は、年間総合優勝 U-NEXT Piratesのシーズンレビューをお届けいたします。