Mリーグ2019レビュー⑤ KADOKAWAサクラナイツ編
シリーズでお伝えする今期のMリーグの総括編。
8チーム29選手の今期の試合内容を、独自の指標で査定を行います。
第5回目のレビューは今期年間総合4位、KADOKAWAサクラナイツを特集します。
チーム総評:蕾を膨らませる花冷えの後、春を謳歌した勇敢な桜騎士団、最後は矢尽き刀折れ葉桜となる。
リーグ参戦1年目。満を持してドラフトで最強の3名を選んだ勇敢なる桜騎士団が今季の台風の目となった。
リーグ序盤、圧倒的攻撃力を誇る沢崎選手を中心にポイントを伸ばし、第15節に初の首位浮上に成功すると年内は風林火山との熾烈な首位争いを演じた。年明けからV字回復のフェニックスに首位を明け渡すと、一時期チームは停滞期に。あわや6位転落も有りうるかと思わせながら、何とか0pts付近で踏み止まり、第89節でABEMASと共にレギュラー通過一番乗りを手にした。
セミファイナルは、内川選手・沢崎選手に試合を集め、岡田選手は温存。これが嵌まり、16試合で260ptsを叩き出し、シリーズ6チーム中トップの勝ち頭でファイナルを手繰り寄せた。
しかし、桜の季節過ぎ去る6月、予期せぬリーグ中断がリズムを狂わせたかファイナル12試合のうち序盤4戦で連続ラスを引き万事休す。早々に条件戦を押し付けられる不利な展開となり、ジョーカー・岡田選手投入も流れを変えられず、無念の12戦ノートップ。初夏の桜は来期にまた大輪を咲かせるための葉桜となりファーストシーズンを終えた。
データをひも解くと、親番での打ち回しが非常に特徴的な印象を持つ。
親の連荘率は通期で選手平均が34.25%、サクラナイツの3選手は内川選手35.88%、岡田選手36.99%、沢崎選手38.01%といずれも平均を上回った。
親番平均収支も特徴がある。内川選手こそ平均を下回る481点だが、岡田選手は1001点、沢崎選手は1149点と平均の617点を大きく上回り、親番への執着と1.5倍のアドバンテージを最も生かそうとしたチームであると分析できる。
和了率・放銃率いずれも全体平均値から大きく乖離しておらず、数値上のデータは平均的な打ち回しだったが、親番での苛烈な攻めが印象に残っているファンの方も多いだろう。レギュラー・セミファイナルでの攻め立て具合が短期直接対決のファイナルで見られれば来季の大舞台でシャーレを掲げられるかもしれない。
選手別総評
内川幸太郎選手:連対率5割クリアも、トップ率・ラス回避率では負け越し。平均的データを並べて1年目はギリギリの及第点だが、ポテンシャルを考えればまだまだ魅せ足りないか。
【査定】攻撃C 守備D 加点効率C 運A 総合査定C
ドラフト最注目株で予想通りの指名を受け今季初参戦。桜色の騎士団の一番隊長として名を馳せる。データを見る攻撃面では平均的だが、守備指標はやや平均を下回る項目が目立つ。放銃率が12%台と硬い打ち手が多いMリーグではやや放銃が気になるところ。
攻撃データを見ると一発長打タイプとなっているのが分かる。レギュラー平均打点は7107点とリーグ上位、和了率は中位の18.70%となっており、守備力低下の反面攻撃にかじ取りをしていた印象である。
だからこそ、ファイナルの和了率7.69%は厳しい。レギュラーの半分以下しか和了のチャンスが無いという焦げ付く展開がシャーレへの街道に立ちはだかる大岩となった。
そして、実は巷の噂ほど赤ドラはない。あるのは表ドラで、愛称の『赤川運太郎さん』は『表ドラ運太郎さん』だった。
岡田紗佳選手:攻守の切り替えにメリハリを見せるが全体的には弱火。攻撃力アップが上位進出の鍵となるか。
【査定】攻撃C 守備D 加点効率E 運E 総合査定D
最年少Mリーガーとして参戦した岡田選手だが、データは凡庸な数値が並ぶ。セミファイナル以降のラウンドが4試合とデータが乏しいのでレギュラーシーズンのデータを中心に紐解いていく。
まず、攻撃指標。和了率が18%台とやや平均を下回るがリーチ成功率が63.27%と高い成績を残す。特徴的なのが平均打点の項目で、親番の平均打点は10386点でリーグ6位に対し、子での平均打点は4441点とリーグ最下位。親番ではしっかり打点を作りに行き和了する姿勢を見せ、子方では相手のチャンスを潰す形の和了(キック)の傾向となっている。
放銃率こそ中間の15位だが、平均放銃点が6600点とやや高い。前述の通り4回に3回の割合となる子の平均打点が弱火であることから一撃の放銃が致命傷になりかねない危険性をはらむ。守備指標の改善よりは子方での和了率アップが成績を上向かせる要因となりうるか。
そして、気になるデータは流局時の聴牌率。連荘率は冒頭お伝えした通り平均を上回っているが、流局時聴牌率はレギュラーで24.14%と28位で、聴牌料収支は▲32000点でリーグ最下位となっている。先手を取られると専守防衛でオリに回される展開が多くなり、ここでの粘り具合の聴牌料でスコアアップの要因ともなるので回って聴牌を取り切る技術もどんどんと先輩から吸収してもらいたい。
沢崎誠選手:騎兵隊の鉄人、戦地で無双。今季53試合出場のMr.アイアンマンが押しに押したシーズンでチームを引っ張る。
【査定】攻撃B 守備C 加点効率A 運C 総合査定B
Mリーグに綺羅星の如く現れた最年長のスーパーMリーグルーキー。押すと決めたらどこまでも押しまくる剛腕大動脈がリーグ序盤で無双状態に。序盤戦の個人暫定トップ奪取など、Mリーグ2019シーズンの主役級に抜擢するプレイを見せるには十分だった。
成績指標は見事に個人の持ち味を出している。流局聴牌率はレギュラーで47.90%のリーグ5位、連荘率は40.58%でリーグ2位と、加点チャンスの親番を絶対に離さないという強い意志を感じるデータとなった。
攻撃の手は緩めない。レギュラー和了率20.65%はリーグ5位、平均打点6927点はリーグ10位といずれも平均を上回った。中でもリーチ時の平均打点は親・子いずれも特に高指標であり、いかにこの選手のリーチが驚異的だったか対戦相手位のマークも来季はさらに警戒が強まるデータとなった。
攻撃指標が強まると、守備指標が悪化するかと思いきや実は守備指標も大崩れしていない。放銃率、平均放銃点もいずれもリーグ平均となる中位ラインで抑えられており、イメージほど棒攻め&高放銃率ではないことがデータで示された。
しかし、ファイナルシリーズは内川選手と共に5試合登板となりながらノートップ。攻め手を封殺され得意の粘り腰も見せる機会が少なくなり、来季契約を勝ち取った際にはこの悔しさを対戦相手を青ざめさせる程の過激な攻撃で晴らしてほしい。
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次回は、年間総合3位 渋谷ABEMASのシーズンレビューをお届けいたします。