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リンパ管は「毛細リンパ管」から始まる

今回のテーマは、MLDの要である「毛細リンパ管」についてです。
(専門的な記事ですので、興味のある方向けです。)


毛細リンパ管とは
〜毛細血管との違い〜

毛細リンパ管(起始リンパ管)は、リンパ管のスタート地点です。
皮膚の真下0.3ミリのところから始まり、先の部分は「盲端」と言い、手袋の指の部分のように袋状になって閉じています。


同じく浅い層に存在する毛細血管は、血管が
山手線に例えられるように、動脈と静脈で繋がっていて行き止まりがありません。


これに対して、リンパ管は一方通行です。
始発は皮膚の下、終点は静脈角(内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部)です。


また、血液は心臓から出て心臓に戻ってくるため「血液循環」と言い表します。

これに対してリンパ液は、皮膚の下で組織液が毛細リンパ管に取り込まれると「リンパ液」と名称を変えリンパ管の中を流れていきます。
行きつく先は静脈角です。
このことから、リンパは厳密には「循環」とは言いません。

血液循環とリンパ輸送


毛細リンパ管の構造

毛細リンパ管の直径は15〜75μm です。
毛細血管の直径は5〜20μmですので、毛細リンパ管の方が大きいことが分かります。
※1μm = 1000分の1ミリ

毛細リンパ管は一層の薄い内皮細胞で構成されています。
内皮細胞の外表面には「繫留フィラメント」という細い繊維が付着しており、周囲の組織と繋がれて固定されています。
この繋留フィラメントが、水分や老廃物を取り込む際の大きな役割を担っています。


水分と老廃物の回収

リンパは、組織内に溜まった過剰な水分や老廃物を回収しています。
では「どこで」「どのように」回収されているのでしょうか?

回収している場所、つまり毛細リンパ管は、皮膚の真下0.3ミリのところから始まり、真皮層(皮膚の下2〜3ミリ)の部分に存在しています。

回収の仕組みは以下の通りです。
組織内の水分が溜まってくると、組織圧の変化により繫留フィラメントが引っ張られ、内皮細胞間の隙間が広がります。
そこから組織液(老廃物も含む)が毛細リンパ管の中に流れ込み、リンパ液として流れていきます。

組織液は毛細リンパ管に入ると名称が「リンパ液」となる


リンパ液の経路は
毛細リンパ管(起始リンパ管)
     ↓
前集合リンパ管(起始リンパ管)
     ↓
集合リンパ管
     ↓
リンパ節
     ↓
リンパ本幹… というように、だんだんと太いリンパ管へ、体の中心(深部)へと流れていきます。

そして、最終的には静脈(静脈角で血液と合流)に流れ込みます。
(「静脈に戻るのに、なぜ別ルートでリンパ管を通る必要があるのか?」という疑問については後述します。)

水分や老廃物が、リンパ管に取り込まれてから静脈に戻るまでの一連を 〝回収している〟と説明するのがリンパ系であれば、リンパ系の中の「毛細リンパ管」は〝回収する場所〟ということになります。
※リンパ系(リンパ管、リンパ節、リンパ組織の総称)



血液との共同作業

リンパを語る上で血液の役割を理解することは欠かせません。
血液は何のために流れているのか?

心臓から送り出された血液は、動脈を通り毛細血管まで流れていくと、血液成分の一部 (血漿、電解質、アミノ酸 、糖、コレステロール 等)が組織内に滲み出て全身の細胞に栄養と酸素を供給します。

その後、老廃物や二酸化炭素を回収して心臓へ戻る血液を運んでいるのが静脈です。

このとき、動脈側の毛細血管から組織内に滲み出た水分の約90%は、静脈側の毛細血管に再吸収されて心臓へ戻ります。

そして、残りの約10%の水分は毛細リンパ管に吸収されます。
この10%が重要な役割を果たしています。
( 9:1は吸収される水分の割合であり、含まれる老廃物の割合は7:3と言われている)


リンパ菅が存在する理由

ここで先ほどの
「リンパ液が最終的に静脈に戻るなら、なぜリンパ管を通る必要があるのか?」という疑問に戻ります。

リンパは主に、血液では運ぶことのできない老廃物を回収しています。
それは、分子が大きく血管に入ることができない老廃物です。

ーリンパが回収するものー
たんぱく質・脂肪・老廃物・ウィルス・細菌
死んだ細胞・がん細胞・リンパ球・水分
コレステロール 等


毛細リンパ管は、内皮細胞間の隙間が大きいことも毛細血管との違いとして大きな特徴です。
これが、血液では回収できない分子の大きな物質を毛細リンパ管が取り込める理由です。

同時に、これらを運ぶことがリンパの役割のひとつであり、血管とは別に存在する理由です。

例えば、家庭ゴミも毎週のように全てのゴミを1つのゴミ収集車が回収してくれるわけではありません。
大きなゴミや種類が違うものは、別の収集車が別ルートで回収しています。
そう考えると分かりやすいと思います。


毛細リンパ管の重要性

上記で示してきた通り、毛細リンパ管は毛細血管では回収できない物質を取り込める構造となっています。

また、リンパ管の長さは20万キロメートル(血管は10万キロメートル)もあり、毛細リンパ管はその始まりとして重要な管と言えます。

血液循環の重要性は言うまでもありませんが、その血管に関しても、数年前には「ゴースト血管」という言葉が話題となり、毛細血管の重要性が見直されました。

美容、リラクゼーション業界では、ここ数年でリンパが大きく注目されるようになり、ゴールの静脈角に関しては「鎖骨付近は大事」と謳われています。
毛細リンパ管は、リンパ液排出手技にとって重要な役割を果たしており、リンパの構造や仕組みを理解すると、スタート部分もいかに重要であるかが分かるかと思います。

マニュアル・リンパドレナージ(MLD)サロン
小泉 優子

https://www.lombrage.jp/

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