見出し画像

サブカル大蔵経273pha『しないことリスト』(だいわ文庫)

目次の見出しを並べただけでも惹きつけられる逆張り感。

自分だけで独占しない。頭の中だけで考えない。高く積み上げない。元気でいつづけない。2択で考えない。自分の実力にしない。つながりすぎない。何かのためにしない。

こう見ると、みんな「◯◯ない」です。否定論法といえば、大乗仏教の祖、龍樹ナーガルジュナの論書が否定論法です。本書の著者phaさんも、ドロップアウトした遊行者の趣き。本書は、現代に蘇った「空」の経典かもしれない。

画像1

〈1人でやろうとしない〉人は結構何かを頼まれたがっている。/頼み上手や、頼まれ上手になろう。p.88

 これ読んでから、いろいろな依頼を勇気もってできるようになりました。

〈すぐに決めない〉ピンと来ないときは、すぐ決めずになんとなく待ってみる、というのが結構有効だったりするのだ。情報を寝かせるためには、いったんすべて忘れてしまって、また後で続きを再開できるようにメモ残しておくのがいい。メモを残すときのコツは「未来の自分は他人だと思う」と言うことだ。p.94

 この本のいいところは、けっこう具体的なところです。

〈一カ所にとどまらない〉何かに行き詰まったり、何かを変えたいと思うときは、「気持ちを入れ替えて頑張ろう!」と精神論で自分を変えようとするよりも、まわりの環境を変えたほうがいい。/人は何かものを考える時「その時に自分がどこにいるか」と言う地理的な条件に、結構左右されるものだ。p.105.106

 これは自分にも周りにも勧めています。場所の可能性。あの思想は"どこで"生まれたか、この本はどこで執筆されたのか。を想像する楽しみ。原武史さんが、地理や鉄道や広場について論考されています。そしてまた、読書も"どこで読んだか"は結構重要だと思います。そういう研究本が出ないかなあと昔から思ってます。

結局、人間は自分のポジションを基礎にしてしかものを考えられないので、ポジショントークを肯定的に捉えることが大事だと思う。それが他者の存在を肯定することにもつながる。p.114

 たしかに、ポジショントークしかできないし、それを恥じたりして自己否定しがちだが、あきらめよう。

予定というのは守らないほうが楽しい。p.132

 予定に殺されているのが、現代かも。旅でも予定に縛られる旅と、逸脱してトラブルになり、いいトラベルになる場合と。

〈人の意見を気にしない〉話半分で充分p.178

 半分という塩梅が大事なのかも。

〈議論しない〉議論が得意な人は優れていると言うよりも、単に議論と言うスポーツに勝つことが好きなだけだと言うことに気づいたからだ。p.182

 議論しないはずなのに、なぜか議論してしまう時がある。なぜなんだろう。スポーツ嫌いと議論好き、スポーツマンの議論好きは重なる…かな?

面白いのは、有能な働き者よりも有能な怠け者の方が指揮官によいというところだ。怠け者ほど他人に仕事を任せたり、些細なことを気にせずに大きな決断をすることができるから、上に立つ人間として向いているということだ。逆に1番よくないのは無能な働き者で、無能な怠け者よりも悪いとされている。無能な働き者がなぜ悪いかというと、別に何もせずにじっとしていいときでも、やらなくていい余計なことをして事態を悪化させてしまうからだ。p.70

 ドイツの軍人ハンマーシュタインの言葉。「有能な怠け者は指揮官にせよ。有能な働き者は参謀にせよ。無能な怠け者にはルーチンワークをやらせる。無能な働き者には一切の責任を与えない。」を受けて。

 さまざまな関係や人を想起させる。働き者は要注意ということなんですね。

本を買って読みます。