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大リーグの選手はなぜガムを噛むのだろう?

大リーグ中継をテレビで見ていると、メジャーリーガー達が、ガムを噛んでいる光景をよく見ます。
選手だけでなく監督やコーチも噛んでおり、生活習慣の違いなのかなと思っていましたが、そこには科学的根拠があったのです。

噛むことで、ストレス物質の増加を抑えるという結果が1999年に発表されました。
大リーグの選手はノルマや契約など、常に緊張感の中でプレーをしています。
決して、ガムを遊びで噛んでいるのではなく、過剰なストレスにならないように、意識して噛んでいると言えます。
また、噛むことには運動能力をあげる効果もあります。良く噛めば背筋が1割~2割くらいはアップすると言われています。運動能力も良くなり、過剰なストレスも抑えられるという2つの面があるということを、プロ選手は良く理解して、ガムを噛んでいるのかもしれません。

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噛んで脳を鍛える

1995年には、運動量を増やすと海馬という記憶を司る中枢神経が活性化することが発表されました。その後、噛むことだけでも海馬の神経活動の活性が高まることが確認され、噛むことは記憶に関わる脳を活性化させるということがわかったのです。

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岐阜大学の研究では、高齢者にチューインガムを噛ませて記憶テストを行いました。脳のどの部分が活性化されるかがわかるMRIによって、噛むことが脳の活性化に関わることを確認することが出来ました。
チューインガムを2分間ほど噛んだだけで、高齢者の記憶能力が平均10ポイントアップしたという結果が出てきたのです。ボケないためにも、しっかり噛まなければいけないということになります。

 

 
噛むってなんだ?

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私たちが物を噛む時は、最大で体重の2~3倍の強い力で噛み砕きます。
ところが、現代の食べ物は軟らかい物が多く、口の中に入れるとお粥状態になって、すぐ飲み込めてしまい、噛むという行為自体が無くなってしまいます。
噛むということには、食べ物を小さくして、胃の消化を助けるという効果もありますが、その前に噛んだという物理的な刺激が歯全体にも加えられ、歯を支えている歯根膜繊維(コラーゲン繊維)からあごの骨に伝達されます。
さらに、顔の筋肉を介して頭全体の骨に伝達され、骨の甲にある細胞を圧迫したり、けん引します。こういう状態になると細胞が非常に元気になり、栄養やカルシウムを摂取して、丈夫な密度の高い骨を作り始めます。つまり、噛むことは顔全体の骨や筋肉を丈夫に育てているのです。

また、「噛む」という情報は脳にも入力され「これは一体何だろうか」、「どれくらい噛んだら良いか」を、歯ざわりや硬さなどからすぐに判断します。そして、「これは間違いなくお刺身だ」、「食べても良い」、「コリコリしていて美味しい」というように脳全体が活力を持って動き出すのです。
さらに「この食べ物はお袋が作ってくれた物である」とか、あるいは「友達と楽しく食べた」とか、「食べ損なった」とか、喜怒哀楽などの情報も「噛む」という行為の中には入っています。決して、食べ物を胃に入れるための準備過程ではなく、脳の中枢を介した全身の変化や活力を引き出すための重要な行為であるのです。

ですから、2~3回、ご飯粒に歯型を付けて飲み込むような食べ方ではなく、口の中に入れたら一口30回、しっかり噛むことを目標にしましょう。

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噛んで美味しく健康のもと

食べるということは自分以外の物が体に入ってくるということなのです。
牛乳、肉、魚などいずれも大切な栄養源ですが、人間の体に直接入った場合、すべて異物(人体にない物質)として抗原になります。つまり、すべての食べ物は人間にとっては“毒”あるいは“有害物質”なのです。
この“危険”な食べ物を自分の味方にする方法が、よく噛むことなのです。噛むことが消化・吸収をしてくれる「胃腸の働き」を守るのです。しっかり噛まないと胃での消化が不十分になりますから、たちまち自分の免疫機能が衰えてしまうことになります。

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胃では食べ物をバラバラにし、豚か牛か魚か完全にわからない状態にして、たんぱく質の抗原性を無くすための「消化」が行われます。だからこそ、胃腸に入る前に出来るだけ口(歯)で良く噛んで、小さな分子にして、消化率を良くするということが消化の大前提になります。


この時、噛めば噛むほど唾液というものが出てきます。唾液と食べ物が良く混ざると、食べ物の本来持つ刺激性を抑えて、オブラートに包むような形でやさしく胃に対応してくれます。だからゆっくり噛んで唾液と混ぜることが大切なのです。

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唾液は不老長寿の妙薬!

唾液は通常寝ている時はほとんで出ません。
起きている時でも何もしないと、だいたい1分間に0.3~0.5ml程度しか出てこないのですが、噛むとその5倍~10倍も出てきます。
唾液の中にはムチンというネバネバした物質で、胃を保護し食べ物を飲みやすくする成分がありますが、それ以外にも大切な成分がいろいろと入っています。

例えば、アミラーゼはご飯やパンを分解して麦芽糖にする酵素です。リゾチウムは炎症をおこした時などは、抗炎症剤として薬で使うくらい強いたんぱくの分解作用がある成分で、バイ菌の増殖を抑えてくれます。その他にも、細菌の発育の抑制をするラクトフェリンや、免疫作用に関係するIgAという抗体、歯の中にしみ込んでいって歯を石灰化して強くさせるスタテリンというものも含まれています。

これらは、唾液の外分泌成分なのですが、外分泌液が出る過程で体の中に吸い込まれていくものをホルモンと言います。
いろいろある唾液ホルモンの1つですが、EGF(上皮成長因子)というホルモンには皮膚を若々しくする作用があります。それ以外にも血管・粘膜・臓器などあらゆる細胞の増殖に関係することがわかっています。
噛んで唾液を出すことが自分の体を若くし、特に皮膚や胃腸粘膜を良くし、非常に元気に顔もツヤツヤにするのです。

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老化は口から

噛むということは口を動かしますが、口だけが勝手に動いているのではありません。口は、脳の体制運動野からの命令で動いています。
口を動かすということは脳に命令され、しかも、噛んでいるという情報は脳の感覚野というところに伝達されます。
すると、美味しいとか不味いなどを含め、いろいろな食感の情報を照合し、食べている物が何であるかを確認しているのです。つまり、食べ物を通して脳と対話し、脳が寝ていられない、脳を活性化させるということに直結しているのです。

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手や足を動かすと同様に、口もしっかりと動かしてあげることが、人間の五感や運動能力を活性化することになります。
従って、噛むということには半分寝かけて、老化している脳に喝を入れ、脳の働きを活性化させるという効果があるのです。


手軽に噛めるガムはお菓子というよりも健康グッズ

たかが噛むこと、と軽く考えていた人も「噛む」と「健康」の関係について考えて頂きましたでしょうか?

噛むことは痴呆症、ストレス、生活習慣病などの予防に直結しているのです。
軟食グルメ化した現代人の咀嚼力の低下を補い、「噛む」という機能の回復を果たすためには、歯ごたえのある物を食べ、一口30回を目標として、しっかりよく噛むことが望まれます。
特に、手軽にいつでも噛めるガムは、お菓子や嗜好品というよりも「健康グッズ」の一つであると言えます。自分好みのガム一枚を食前に噛めば、満腹中枢を刺激し、過食を防ぐ確実なダイエット法になります。
また、食後には、キシリトール(白樺などの樹木からとれる天然の甘味料)入りガムを噛むことで、虫歯や歯周病を防ぎ、歯を健康にする効果もあります。

活力に満ちた健康を保つためにも、改めて噛むことの大切さを見直してみてください。 

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