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ホームランプロジェクト

2021年7月9日。連合チームの1員として参加した彼(以下Sくん)。相手は強豪松本国際(旧 創造学園)高校。第一打席、手も足もでず三振。そして第二打席。直前でピッチャーが左ピッチャーにスイッチ。真ん中より少し内側を得意とするSくん。スタンドで見守っていた私はチャンスを感じていた。その初球。Sくんがバットを振りぬくと、ライナー性の当たりがレフト前へ。

Sくんの約1年間の努力が報われた瞬間だった。

そこから約1年前・・・

2020年9月。夏の大会が終わり2年生主体のチームに入れ替わる。9月末の時点で選手登録は1名、マネージャー1名となった。新チームを連合チームで戦い、公式戦がしばらくなくなるそのタイミングで、Sくんに聞いた。

何を目的とするのか。

何を目標とするのか。

彼(以下Sくん)は

目的:野球を通して人間的に成長するため

目標:ホームランを打ちたい

と定めた。中学のときに補欠で試合になかなか出られず、悔しい思いをしてきたSくん。忸怩たる思いで高い目標設定をしたと思う。

そこで題名にもあるホームランプロジェクトを立ち上げた。

そこから、選手が最大限成長する指導とは何かを考え、その時の最善を尽くそうと決めた。そんな高い目標を決めたSくんに対して私は、

指導者としてプロでありたい。

と志を立てた。私はSくんと最大限向き合い、Sくんが望むホームランへの道を共に歩むことに決めた。

ホームランを打ちたいと望んでいる一人の生徒をホームランが打てるレベルまで引き上げられなかったら、プロの指導者として失格

そんな覚悟で始めようと。

また、前任校を離れて感じたていたことがあった。高い目標を選手に強要し続けて、選手との距離がどんどん離れた。そんな自らの指導の在り方に疑問を抱いていた。『選手は勝利することで成長する』という私の正しさによって、勝利を押し付けてきた。その結果、人間関係は必ずしも良いものとは言えなかった。この点をぜひ変えていきたかった。

この選手との人間関係を良好にしつつ結果(ホームラン1本)を出す。卒業後「先生飲みに行きましょう」と誘われるような関係性を築く。

例え結果が出ても、一生恨まれる存在にはなりたくない。なにより、やらされる野球ほどつまらないものはない。あくまで、生徒が達成したいという気持ちに寄り添う。だから、どんな時も会話を大事にしようと決めた。そして私も生徒と共に目標を掲げて、一緒にトレーニングすることにした。それは以前の投稿にある130キロプロジェクトで書いた。

9月末から7月まで約300日。記憶を呼び起こしながら保存用としてnoteに記しておく。

何から取り組もうか

Sくんとのミーティングで、まずフィジカルの向上を図ることに決めた。ホームランを打つためには、ホームランが打てる身体つきになることが先決だ。実際その時点でロングティーは60m程度。しかし1年生の時、練習に手を抜くことはなかった。しっかり練習に取り組んでいた。ホームランまでは遠い道のりだった。だから技術を高めるより、体を強くして、金属バットという道具にも助けてもらおうという考え。「心技体」で言えば、「体」の部分をまずということで。

フィジカルを高める

ウエイトトレーニング、瞬発系トレーニング、身体操作系トレーニング、柔軟トレーニングの4つ。

選手一人ということもあり、練習時間は2時間。その分限界まで追い込んだ。

実際技術練習は楽しい。フィジカルを上げるトレーニングは直接バットを握ったりボールを投げたりしないので、どうしても辛い。ただSくんは「ホームランを打つためにはどんなにきついこともする」という意気込みだった。だからフィジカル練習の手を抜かなかった。

今思えば、よく辞めなかったと思う。

なぜなら、指導者が僕のほかに1人いたので計2人。指導者2人対選手1人。どう考えても地獄だ。しかも指導者2人は選手と同じメニューを行った。どんなときも一緒にトレーニングした。手を抜けばすぐわかる。私がその状況なら、逃げ出してしまうかもなと思った。

広島県の武田高校を参考にして、2週間に1回体力測定を行った。そこで2週間の練習がどの程度効果があったか振り返ることとした。

練習内容を確認する週1回のミーティング

選手と指導者で毎週1回ミーティングをした。先週の振り返りと今週の最重要項目の確認。選手の言葉を聞くことで、練習の意図がどの程度伝わっているかがわかった。

何のためにその練習をするのか。

これは非常に大切。必要なことを得るために「質より量」とするのはOK。でも目的もなく素振り1,000本というのは×。こういった話し合いは効果的であった。

ミーティング内容をスタンドFMに収録

スタンドFMというラジオを手軽に収録し公開できるアプリが出たので、何回かは公開した。ミーティングの内容を聞き返せるということと、私自身の指導の振り返りも含めて。

このアプリは無料で収録して発信できる。非常に便利であった。選手と指導者の意思疎通。指導者同士のミーティングを録音することにより指導方法の統一。それを公開することで短い時間でも質の高い練習を見込める。以前の学校で生徒との距離を感じていたと書いたが、そういった考え方の食い違いも話すことによって理解できると考える。

練習や試合後に長々とミーティングしても選手は内容が入ってこない(以前沢山やってきました・・・)。だからミーティングを残すことでいつでも聞ける。大切なことはもちろんグランドで話すのだが。

ミーティングで先週の内容の改善点を見つけ、生徒と指導者で一週間のメニューを決める。メニューをPDFにして、選手に送る。だから1週間の練習メニューは把握した状態で練習に臨んだ。

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毎日2時間の練習。土日は休み。

12月から3月まではそうすることにした。なぜか。

10月はまだ練習試合があるので、平日2時間みっちりトレーニングして、週末試合をすると体に負担が来ていた。冬の時期は身体を大きくするという目標もありたっぷり休養を取りたい。あとは選手1人でやっているので、指導者からのプレッシャーも感じる。だから結果的に土日を休みにすることとなった。

今思うとその結果、私自身が家族といい時間を過ごすことができた。次に機会があれば、ちゃんと家族の時間を積極的にとったうえでの練習ができればと思う。大事なものを先に考えるという姿勢を生徒にも伝えたい。

実際振り返ると、十分に追い込めたし身体つきは変わった。私も一緒にトレーニングをしたが、休みがなかったら続けられなかったかもしれない。1週間のトレーニング内容と週末の休みによって、平日はかなり追い込めたと思う。私自身高校時代に、オフが全くなかったのでどこかしらで手を抜いていたと思う。イチロー選手が智弁和歌山高校を訪れた際に同じようなことを言っていた。

「(練習量が多いことによって)意識しなくても本能的に最後まで体力がもつように調節してしまうのが人間」

休むタイミングは2日連続でなくてもよかったかもしれない。3日トレーニング1日休みなど。突き詰めれば、チームで練習するのだが、個人個人で休むタイミングは違ってもいい。1日の練習で、しかも2時間全力を出し切ることの方が必要なことである。休養のタイミングに関しては永遠の課題だ。

「一冬超えれば」という考え方は危険

私が高校の時、「一冬を超えれば」変わると言われて一生懸命に努力した。努力すれば上達すると思った。きついトレーニングをすればうまくなる信じていた

結果的にレギュラーになれなかった。レギュラーの選手を追い越せなかった。理由は一つ。ほかの選手も同じように頑張っているから工夫なしに逆転は起きない。今考えれば当たり前のこと。

前任校で指導してた時も、やはり「一冬超えれば」の感覚だった。自分がそれで結果が出なかったにも関わらず…

冬のトレーニングの結果がわかるのは春先の練習試合だった。春先に結果が出せなければ?冬のトレーニングは意味がなかったということ。3か月間無駄なトレーニングだと春先に気付く。。。それはあまりにもきつい。

2週間に1度の測定

2週間に一度の測定によって、練習の効果がひと目でわかる。効果的な練習にするために。裏を返せば効果的でないとわかったら、即やり方を変えていくということ。効果がないことを続けても上達はしない。

2週間に一度という頻度は絶妙だった。正しい努力をすれば2週間でも数値は向上する。逆に効果がないことを続けても数値はアップしない。

効果的でない努力を続けてしまう

残念ながら起こってしまった。実際、私自身にも起こってしまった。Sくんが計測する上で全く伸びない種目があった。なのに方法を変えなかった。その時を振り返ると変えられなかった。

2週間という期間は非常に短い。だから数値が伸びない理由を「努力不足」捉えてしまうのだ。量が足りないと。もっと頑張らなきゃもっと頑張らなきゃと。今考えると違う。やり方が間違っていた。充分過ぎるくらい、追い込めていた。ここは非常に難しいところ。

変化を動画に収める

しばらく努力を続けても数値が伸びないとようやく気づく。具体的に言えば「股割り」に関しては2ヶ月くらい同じことをしてしまった。変化すると、一気だった。それまでが嘘のように伸びた。それが理解できると、他の種目に関しても工夫できるようになった。

大事なことは動画にとって確認すること。自分の意識レベルでは変えているからだ。本人の言葉を借りれば、「大きく変化している」らしい。しかし動画で自分の動作を見た時に「全く変化がない」ということが起きる。非常に使えるなと思った道具はスマホ三脚。これば素晴らしい。これがないと無理。正直、人に教えたくないくらいです笑 

動画に収めることをしてわかったことは、選手自身の知識も必要になってくるということ。動画を撮ることは誰にでもできる。ただ、その動画を見て分析して自分を良い方向にするには技術が必要。


春先の絶望感

練習試合が解禁になり、近隣高校との実践が始まった。そして理想と現実の乖離に、絶望。しかしこれは本人に火をつける良い材料となった。

これだから冬の練習は怖い。数値が出てなくても実践がないので、彼は「打てるだろう」とたかを括っていた。冬もできる限り実践をする必要を感じた。


作成中ですが、公開します。夏までやった事も含めて追加していきます。


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