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ハルカ 1

高校生活の初日
ハルカは、あの日のように、
突然ボクの前に現れた。

ショウタくん!

彼女は、驚くほど明るく笑い、その美しさに僕はドギマギしてしまった。

どうして?
ハルカちゃん…

ハルカでいいよ。
私、この町にまた引っ越してきたの。

お母さんが再婚して、上越にいるんだけどね、
何かいづらくなって、おばさんがいるこの町で、一人暮らしすることにしたのよ。

一人暮らしって言っても、おばさんがやってるアパートの一室借りてるんだけど…

小学校一年の終わりに、2ヶ月くらいしか一緒にいなかったけれど、ハルカは一年に一回ハガキをくれた。
僕はハルカを忘れることができなかったし、ハルカも同じだったようだ。

でもハルカは、今の僕をみて、どんなふうに思ったのだろう…
カッコいいわけでもなく、クラスでは地味なタイプの僕に、ハルカはがっかりしたのではないかと不安になった。

放課後僕は初めてハルカちゃん、
いやハルカと一緒に下校した。
僕は自転車をひいて、ハルカは徒歩だったけど、途中までは同じ方向だった。

話したいこと
聞きたいことが沢山あったけれど、何から聞けばいいのか分からず、喋り続けるハルカの話を聞くことしかできなかった。

ハルカは、転校ばかりで友達ができなかった話や、あの頃がどれだけ楽しくて、その後の心の支えになったかなど、話し続けた。

ハルカちゃん、明るくなったなあ…

それから休み時間や放課後、いつもハルカは、僕の席のところにやってきた。
同中のカズキが、知り合い?と聞いてきた。

そういえば、カズキは、4年生の時に転校してきたから、ハルカのことは知らないのか…

僕は、小学1〜2年の頃、少しだけうちの学校にいたんだよー、というと、カズキは不思議そうな顔をした。

よく覚えてたなあ。

いいな、お前
あんな可愛い子と…

僕はちょっと得意げな気持ちになって、
そっかー
そんなに可愛いか?
なんて、思ってもいない事を言った。

ハルカは、美術部に入ると言っていた。
今でも絵を描くのが好きなんだな…

僕はハルカが毎年送ってくれたハガキに書かれた花の絵を思い出した。

僕は中学から続けている陸上部に入ることにした。

僕は野球とかサッカーとか、大勢でやるスポーツは、どうも苦手。
一人でコツコツ走れる陸上がいいと思って、中学から陸上部に入ったのだ。

レースで一位になれるような選手ではなかったけど、練習を続けていって、自己ベストを日々更新していけるのが、何より楽しい。

僕が校庭を走りながら、4階の美術室を見上げると、ハルカがこっちを見ていた。

僕は思わず走るベースを上げた。
なんだか足が軽くなった気分だ。

それから僕は、時々4階からの視線を感じつつ走る部活の時間が、楽しくなった。

部活の練習を終えて、帰ろうとしていると、タイミングよく、ハルカが校舎から出てきた。

ショウタくん、一緒に帰ろう!
ねえ、ショウタって呼んでいい?

もちろんだよ。

ねえ、ショウタって彼女いるの?

いないよ

じゃあ、好きな子いるの?

僕はドキッとした。
中学の時に好きな女の子がいた。
しかし、告白どころか、話しかけることもできずにいた。
それでも彼女と同じ高校を受験し、無事二人とも合格した。

クラスは違ってしまったけれど、高校になったら、告白しよう!
そう思っていたのだ。

しかし状況は変わった。
彼女に告白したところで、オッケーされる可能性は低い。

でも、ハルカなら…

そんなずるいような気持ちが、湧いてきた。
それにハルカは、彼女と比較しても引けを取らない可愛さだ。

いないよ

そーなんだ。
嬉しそうな顔をしたハルカに、ちょっと後ろめたい気持ちで、僕はハルカの顔を見れなかった。

とはいえ、ハルカは僕の想像以上に人気があった。

ハルカといつも一緒にいる僕に対し、
睨みつける奴や、
冷たい態度をとる奴もいた。

しかし元々、みんなと仲良く喋るタイプではなかった僕は、別に気にもしていなかった。

しかしある日、女子に人気がある堀田先輩が僕のところにやってきた。

キミ、モモタハルカと付き合ってるの?

い…いえ…
付き合っているわけでは…

そっか、ならいいな。

ただ、唖然としている僕に背を向け、
その先輩は、ウキウキと僕の前から去って行った。

ハルカがオッケーするわけない。

そんな自信に似た気持ちは、翌日には簡単に裏切られた。

私、堀田先輩と付き合うことにしたんだ。

えっ?  なんで?

なんでって、告白されたから…
初めて、人から告白されたんだもん

先輩のこと好きなの?

よく知らないけど、良さそうな人だったから…

僕は、愕然とした。
ハルカが好きなのは、自分だと勝手に思っていたのだ。

なんてバカだったんだろう…
真っ先に、付き合おうって言っておけばよかった。

そう思ったけれど、あとの祭り。

僕は、放課後校庭を、ひたすら走り続けた。
4階からの視線を、感じてはいるけれど、
一度も見上げることはなかった。

なんで!
なんで!
なんで!

ハルカへの苛立ちのような
自分への苛立ちのような
もやもやした気持ちは、
走っても走っても消えることはなかった。




ハルカとショウタが出会った頃のお話は
こちらです😊

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