白いくじら
ある朝男が空を見ると、
真っ白い馬が青空を駆けていた。
男は長い長いロープを持ってきて、馬を捕まえた。
男はその馬に乗って、空を駆け回ったが、しばらくしてまた馬に乗ろうとした時は、馬の姿はどこにもなく、ロープだけが残されていた。
また別の朝、男が空を見上げると
真っ白い大きな鷲が青空を飛んでいた。
男は大きな大きな網を持ってきて、鷲を捕まえた。
男は鷲の首にロープをつけて、鷲に乗って空を飛び回った。
しかししばらくしてもう一度鷲に乗ろうとした時は、鷲の姿はどこにもなく、ロープだけが残されていた。
数日後の朝、男が空を見上げると、
大きな白いくじらが、青空を泳いでいた。
男は長い長いロープを持ってきて、くじらを捕まえようとした。
ロープは鯨の尻尾にかかったが、くじらは大きくて、手繰り寄せることができない。
それどころか、男の体が空に浮き上がった。
男はロープを手繰り寄せ、なんとかくじらの背中に這い上がった。
男はしばらく鯨の背中で空を遊覧した。
少ししてくじらは、小高い丘の上に男を下ろして行った。
あなたは、我々を捉えておくことなどできないのだよ。
男は、その夜くじらの言葉を思い出しながら考えた。
ロープで捉えることができないのならば…
男が翌朝空を見ると、そこには、空を飛び跳ねるたくさんのうさぎがいた。
男はカメラを持ってると、可愛いウサギたちの写真を撮った。
その翌日は、気持ちよさそうに伸びをするネコがいた。
男は、そのネコも、カメラに収めた。
気づくと、男の家の壁という壁が、白い生き物たちで溢れていた。
男はその部屋で夜寝ている時、たくさんの動物に囲まれて一緒に遊んだり、空を飛んだりした。
そして朝になっても、彼らはそこにいた。
白い動物たちも、彼の夢の中で自由に動き回れるので不自由に思うこともなく、そこにいて彼を見守っていた。
年月が経ち、彼が最後の時を迎えた時、白い動物たちは彼を伴って一緒に空へと上っていった。
残された彼の部屋には、雲ひとつない快晴の空が広がっていた。
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