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惰性のエッヘン解放


少年はある日、父親に尋ねた。
どうして校長先生やテレビで喋る偉い人は話す前に「えー エッヘン」ていうの?
すると父親は答えた。
あれは自分が偉いことをみんなに示したり、みんなに注目させるために、言っているんだよ。

少年は、大人になって国会議員になった。
彼は、自分は庶民の感覚を持ち、人々と同じ目線でものを考える議員であると言って、偉そうな「エッヘン」は要らない!と
「惰性のエッヘン解放」
を公約の1つにあげた。

彼は自分の意見をはっきりと言う、庶民の味方として人々から支持され、とうとう党首になった。

党首の挨拶の時だった。
流石の彼も緊張し、喉がカラカラになった。

カメラの前に立った瞬間、頭の中が真っ白になった彼は

「えー…」

やっと声を出したが、喉に何かが詰まったようで思うように声が出ない。
彼は思わず
「えへん」
と咳払いをした。

その場が凍りついた。
彼は慌てて叫んだ。
これは「惰性のエッヘン」ではない。
ほんとに緊張で喉が詰まったんだ!

本文408文字

これは、たらはかにさんの
♯毎週ショートショートnote
の企画に参加した物です。

お題はそのまま
「惰性のエッヘン解放」
なんのこっちゃ⁈って感じのお題でしたが、なんとか捻り出しました。

昔は、人前で喋る人の
えー エッヘン
は、なんだか偉い人がもったいぶって喋るイメージでしたが、年と共に
実は彼らも、それなりに緊張してたり、あれ?なにいうんだっけ?
と思いながら、喉の調子を整えているだけかもしれない…
なんて思いました。


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