見出し画像

みかちゃんとゆきちゃんの白い靴【シロクマ文芸部】

白い靴可愛いね、
みかちゃんとゆきちゃんは、靴屋さんの前で見つけたその靴が、とても気に入って欲しくなりました。

そこで2人は、お母さんに頼んでお揃いでその靴を買ってもらいました。

ゆきちゃんは、嬉しくってその日のうちに履いて遊びました。
みかちゃんは、いつ履こうかしら…
と、楽しみに靴を眺めていました。

ある日ゆきちゃんは、その白い靴を履いて、みかちゃんの家に遊びに来ました。

ゆきちゃんとみかちゃんが遊んでいる間、玄関で白い靴達が話をしていました。

みかちゃんの靴がいいました。
なんて事だ!君はあちこち汚れが着いて、もう白くなくなってるじゃないか。

ゆきちゃんの靴がいいました。
君は靴のくせに、まだ一度も履いてもらってないのかい?
君は靴ではなく置物なのかい?
どんなに汚れても、いつも履いてくれる方が幸せじゃないのかい?

みかちゃんの靴は負けじと言いました。
みかちゃんは、いつも靴を眺めては、素敵素敵って大事にしてくれる。
それに、今度のお出かけの時に履くんだって、楽しみにしている。

お互い幸せならそれでいいさ。

しばらくして、又ゆきちゃんがみかちゃんの家に遊びに来ました。
みかちゃんの白い靴は驚きました。
ゆきちゃんの靴が白くなっていたのです。

なんか、白くなったな、どうしたんだい?

するとゆきちゃんの靴がいいました。
少し前に汚れてしまった僕を、ゆかちゃんが一生懸命洗ってくれたんだ。
おかげでまた、白くなった!

みかちゃんの靴は、ゆきちゃんといつも一緒の白靴が羨ましくなりました。
でも、悔しいので、
どんなに洗っても、元の真っ白にはなりないじゃないか!と言いました。

ゆきちゃんの靴は、昔のままの真っ白なみかちゃんの靴が少し羨ましくなりました。
だけど悔しいので、
一生懸命綺麗に洗って、また履いてもらえる方が、幸せさ、と言いました。

お互い幸せならそれでいいさ。
ちょっぴり、羨ましさを感じながら、靴達は別れました。

一年がたちました。
ゆきちゃんが、みかちゃんの家に来た時、もうあの白い靴を履いていませんでした。

みかちゃんの靴は、ゆきちゃんとみかちゃんの話を聞いていました。

みかちゃん、まだ靴真っ白だね。大事に履いているんだね。
私の靴、汚れて底が擦り切れて、もう履けなくなってしまったから、仕方なく新しい靴を買ったの。

するとみかちゃんは言いました。
そんなに履いたんだね。
私、あんまり履かなかったから、まだ綺麗なままだけど、もう小さくなって履けなくなってしまったから、親戚の子にあげることにしたの。

みかちゃんの靴は、もうゆかちゃんの靴に会えないことを知りました。
寂しいけど、ゆきちゃんの靴はたくさん履いてもらって、幸せだっただろうな。

僕は、また別のこのところに行って、その子に大事にしてもらうんだ。
僕だって、みかちゃんが、特別の日にとびっきりウキウキした気持ちで、僕を履いてくれたこと。ずっと僕のことを好きでいてくれた事が幸せだったよ。

その時どこからか、ゆきちゃんの靴の声が聞こえてきました。

お互い幸せならそれでいいさ。

みかちゃんの靴は、ゆきちゃんの靴が煙となって天に昇っていたんだな、と思いました。

次に会う子は、どんな子かな?
たくさん履いてもらっても、
大事に履いてもらっても、どっちでもいいな。

♯シロクマ文芸部

小牧さんの、シロクマ文芸部の企画
「白い靴」から始まるお話
に参加したものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?