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メガネ初恋【毎週ショートショートnote】


私の初恋は、私が売り場に出てわずか数日目のことだった。
メガネ売り場にやってきた彼に、私は一目で恋をした。
彼は私の目の前で足を止めると、
かけたり外したりして、鏡を見ながら考えている。
私は精一杯の笑顔で、彼に微笑みかけた。

しかし彼は、その後
また来ます
と言って立ち去ってしまった。
また来ますっていうのは、もう来ませんってことよね。
私はがっかりした。

みんなは、
初恋なんてそうそう実るものじゃないわよ。
なんて言うけど、私はいつ彼が来てもいいように精一杯綺麗にして待ち続けた。

1週間ほどしたある日、彼は一人の綺麗な女性と共に、店にやってきた。
彼はまっすぐに私の方に来て、私を手に取ると、
これ、いいだろう?
と女性に語りかけた。
素敵ね、
彼女に言われて、彼は嬉しそうに私を眺め、
これでお願いします
と私を店員に渡した。

私の初恋は実った。
しかし、そんな彼の横には綺麗な女性が微笑んでいる。
叶ったような叶わないような
そんなメガネ初恋の巻でした。

本文ここまで 410文字

これは、たらはかにさんの
♯毎週ショートショートnote
の企画に参加したものです。
お題「メガネ初恋」でした。


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