イカ室たぎった

このマンションには、
魚室、タコ室、イカ室と、
ちょっと豪華な伊勢海老室があった。

イカとタコは、たいそう仲が悪かった。
イカは、いばりんぼうで、気が短かく、タコは議論好きで、のんびりやだった。
イカとタコは、どちらが優れているか、
いつも喧嘩をしていた。

お前は足が8本しかないくせに。
とイカが言うと、タコは
お前の足はひょろひょろじゃないか。
と言った。

俺の方が早く泳げるぞ。
とイカが言うと、タコが
俺の方が、どんなに狭いところも通り抜けられるぞ、
と言った。
イカが、
お前は人間が作った家に自ら入り込んで捕まるアホじゃないか
と言うと、タコが
夜人間が発する光にふらふら寄っていって捕まえられるお前の方がアホだ
と言う。
議論を楽しんでいるタコ達に対し、
イカ達は興奮して、熱くたぎってきた。
あんまり熱くなり過ぎて、イカ室は煮えたぎり、イカ達は茹で上がってしまった。


ヘイ、いらっしゃい！
今日は、イカが茹でたてで美味しいよ。
お客さん、お一つどうだい？

本文ここまで　410文字

これは、たらはかにさんの企画、毎週ショートショートnoteの裏お題
「いか室たぎった」に挑戦したものです。

#毎週ショートショートnote