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夢を追っても、諦めても「負け組」だった、あの頃の私へ。

プロの音楽家を目指して通っていた「音楽大学」という世界は、世間一般の大学とは違う部分がたくさんありました。

なにが違うのか?と問われると、授業の内容とか、学校の風潮的なものもそうですが、なにより個人的に一番違うと感じていたのが「就活」。

過去の私は自分の就活に強いコンプレックスを感じていて……という話は、過去にエッセイも執筆しています。

今日は、このエッセイの続きをお話してみようかな、と思います。

卒業後すぐにプロになれる人なんて、ほんのひと握り。

プロを目指す音大卒業生のほとんどが、「フリーランス奏者」を名乗りながら、日々アルバイトに明け暮れて、たま〜に入ってくる単発の演奏・レッスン案件をこなすのが実情です。
声優さんや役者さんの下積み時代と同じような感じ、といったら分かりやすいかな。

業界外の人に「卒業後はフリーランス」といっても、フリーランスという言葉自体がそれほど知られていなかった当時は「つまりフリーター?」なんて返されることもザラ。

なにより「フリーランス」なんてカッコよくいっているクセに、実態はただのアルバイターな自分も、なんだか受け入れられませんでした。

フリーランス=フリーター=ニート、という具合に、世間一般からは就職しないことに「負け組」レッテルを貼られるのです。


なんだかんだ悩んだ末に、私は学部を卒業後、同じ大学の別の学科に進学。

進学といっても、その学科は授業はほとんどなく、週に1回実技レッスンがあるのみで、通う期間もたった1年間です。
学校に行く日よりもバイトに行く日の方が圧倒的に多い。そんな感じの毎日。

週4でバイト、週1でレッスン、バイト後や休みの日に音楽の仕事があればラッキー、というフリーランスもどきの生活を1年間やりました。

で、結局経済面とか色々苦しくなって、ようやく就職を視野に入れるわけです。


普通であれば「勝ち組」が確定する内定ゲット。

でも、私の場合はこれもちょっと違ったんです。


音大生でも、最初からいわゆる「普通の就活」をする人はたくさんいます。
でもね、私のように「本当はプロになりたかったけど就活する人」は、所詮ただの「夢を諦めた人」なんですよ。
結局、ここでも負け組になってしまう。

音楽を諦めて、企業の合同説明会に参加するわけでもなく、学部卒業から一年空けてしまったために同期の就活仲間がいるわけでもなく、求人サイトを頼りにたった一人で挑戦した私の就活。

無事に内定をゲットしても、「おめでとう」っていってくれる人なんてほとんどいないし、私自身も全然嬉しくなんかありませんでした。

だって、その「内定」は、私が本当に欲しかったものではないと、みんなも私も分かっていたから。

内定が出なければ、「就活失敗しちゃった〜!」を言い訳に、もう少し音楽を頑張れたかもしれない。
自分で就職試験を受けておきながら、「落ちたらよかったのにな」なんて矛盾した気持ちがずっとありました。

入社式の前日、「私は明日から音楽業界の人ではないんだ」と悲しくなって号泣したのを、今でも鮮明に覚えています。


それから紆余曲折を経て、結局私はパラレルワーカーというかたちで音楽の世界に舞い戻ってきたわけですが、今となってはあの頃の私をちょっと叱りたい気持ちもあります。


そもそも、人生に勝ち負けなんてなくない?


人から評価され、結果を出さなければいけない音楽の世界にどっぷり浸かりすぎた私には、自分の価値=人からの評価、という固定観念が染み付いていて。

なにごとにおいても、良いか悪いかの判断基準は、自分の気持ちよりも「人からどう見られるか」にありました。

働き方や生き方が多様化してきた今も、やっぱり「世間体のいい仕事」と「そうじゃない仕事」と区別されてしまう風潮はあるし、それは仕方ない。

それに、価値基準は人それぞれ違うのだから、誰かにとっての「いい仕事」は誰かにとっての「最悪の仕事」かもしれないし、その逆も有り得るわけです。

どんな生き方をしていても、人に迷惑をかけず、自分がハッピーでいられればそれは正解だし、正社員だろうがアルバイトだろうが、はたまたフリーランスだろうが、自分が「コレがいい!」と心から思えればみんな「勝ち組」になれるんですよね。

「負け組」だったあの頃の私は、世間ではなく、私自身が作り出してしまったものだったのかもしれません。

数年前の私へ。

どの選択も、全然負け組なんかじゃないよ。

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