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D2Cトラベルブランド「Away」をPR観点から解説

海外D2Cスーツケースブランド「Away」のPR戦略を整理してみたので共有します。

D2Cとは

D2Cとは、「Direct to Consumer」の略で、自社で企画・製造した商品を、自社チャネルを通して消費者と直接的に取引をおこなうビジネスを指します。 

スーツケースD2Cブランド「Away(アウェイ)」とは

Awayは2015年にジェン・ルビオさん、ステフ・コーリーさんの女性二人で創業し、スーツケースを2年半で50万個の売上、インスタグラムではフォロワー54万人超、2018年には5000万ドルもの資金調達など数多くの成功を成し遂げているAway。

創業者

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(写真 引用:Inc.) 右がルビオ氏、左がコーリー氏。

ルビオ氏はフィリピン出身で、7歳のときに両親と一緒にアメリカのニュージャージー州に移住します。成績優秀なルビオ氏は、ペンシルバニア州立大学に進学するも、学業よりも企業で働くことに夢中になります。

ジョンソンエンドジョンソンやスキンケアブランドのニュートロジーナ、そして広告会社を経て、コーリー氏とWarby Parkerで出会いますが、ここですぐにコーリー氏とAwayを創業するわけではありません。コーリー氏はMBA取得をするためにWarby Parkerを退職し、MBA取得後はマットレスD2CのCasperに入社します。ルビオ氏は父の他界の影響もありWarby Parkerを退職し、その後イギリスのALLSAINTSに入社するも自身のキャリア観・仕事観と合致せず退職します。

Awayの創業の着想に至ったのは、ルビオ氏が旅行中に使用していたスーツケースが壊れたことをコーリー氏に連絡したのがきっかけでした。市場にはすぐに壊れてしまうような安価なスーツケースや品質の良い高価なスーツケースの両極端のものしかなく、「ユーザーが真に求めているスーツケースが市場にはないのではないか、自分たちならもっとユーザーが求めているスーツケースを作れるのではないか」と意気投合し、Awayを創業することになります。

そして、Awayが目指したのは単にスーツケースを売るメーカーになるのではなく、ユーザーにとって最高の「旅のパートナー、プラットフォーム」になることです。

Awayの「世界観」の伝え方

『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 」』の中で、佐々木氏はD2Cの定義をこのように述べています。

D2Cは「モノから͡コトへ」という消費トレンドの"シフト"ではなく、「コト付きのモノ」という"積層"によって、新たな価値を提供する

つまり、実質的・機能的な「モノ」だけでなく、「コト」の届け方・伝え方が非常に重要です。

Awayが顧客から多大な支持を得ている大きな理由は、Awayの「旅のパートナー」という世界観を顧客にうまく伝えているからです。ではどのような伝え方をしているのでしょうか?

Instagram

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ルビオ氏はWarby Parkerでソーシャルメディア担当ということもあって、顧客とのコミュニケーションにおいてSNSが重要な役割を果たすことを理解していました。そのため、ルビオ氏はAwayの世界観を伝えること、顧客からのニーズの汲み取りや顧客との関係構築のために、インスタグラムを中心としたプロモーションを展開していきます。

上記の画像が実際のAwayのInstagramになりますが、商品販促でありがちな「発売」「セール」などといった直接的な販促メッセージの訴求はなく、あくまでスーツケースは「旅のお供」として、人物や使用場面に焦点をおいたプロモーションを展開しています。

また、Awayではインフルエンサーマーケティングとして、著名人とタイアップして顧客により興味関心を抱いてもらえるよう、Awayの使用シーンの投稿や限定商品の販売、キャンペーンの展開をおこなっています。

雑誌

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Awayは2017年7月から『HERE』という雑誌を10名ほどの編集チームで刊行しており、独自のWebもあります。販売目的であれば、多くのアパレルブランドのよう商品カタログの作成を構想すると思いますが、Awayは「旅のパートナー」としての世界観を作りこむために、スーツケースのカタログではなく、旅のライフスタイル、写真、インタビュー、エッセイなどを掲載した「旅を中心したコンテンツ」を顧客に提供しています。そして、Awayの世界観に読者が共感し忠実なファンとなり、Awayのスーツケースを購入していくのです。

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これは『HERE』の実際のWebページになりますが、スーツケースの特集ではなく、観光地のガイドの特集がされています。たとえば、「リスボンの週末を過ごす方法」「リスボンの最高のコーヒーショップ」「女性にとってリスボンは一人旅に適している理由を見つける」など、コンテンツが具体的なので、記事を閲覧していると旅行欲を本当に掻き立ててくれるのでぜひ見てみてください!

リアル店舗

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インターネット上の販売のみでスーツケースを流通させていた頃は、アパレルのようにリアル店舗を構える必要性を感じていなかったAway。だが、ポップストアとして期間限定でリアル店舗を構えたところ、顧客からはインターネット上でスーツケースを見るものの、「実際に直接見て、触って確かめたい」という声を多く寄せられたそうです。

リアル店舗は、「売る場所」としての機能だけでなく、顧客と直接的にやり取りができる「コミュニケーションの場所、世界観・コトを伝える場所」としての機能があるのです。

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