二日酔いとまどろみの中で
朝9時、頭痛とともに目を開ける。完全な二日酔いに見舞われた。朝のうちにランニングへ行こうと思ったが、これでは全然ダメだとひとりごちる。まったくと言っていいほど頭が働かない、虚ろな意識のなかでキッチンに向かい、平日シンクに溜めていた食器を洗い出す。
手を動かしてはっきりとしていく意識とともに昨夜のことを思い出した。
マッチングアプリで知り合い、先週電話をした人と飲みに行った。1つ上の29歳、IT系の企業で働いているというその人は初めて電話をした日から「タメ口で話さない?」と優しく語りかけてくれて距離感が縮まった。
ゆっくりと話す、ふわふわとした雰囲気に惹かれた。読書が好きで、休みの日はカフェで本を読むという趣味や美術館に行くのも好きという話で、共通の話題もあった。
まだ会っていないのに、タメ口で話してくれる距離感の近さ。しかし、嫌な距離感の近さではない。LINEで久しぶりに、誰かとたわいもない会話をしていることに気づき、胸がぎゅうっとなった。浮き足立つような感覚。
金曜の夜。横浜のとある居酒屋で飲むことになった。街は平日が終わる、浮ついた陽気な空気がそこここに漂っている。店の前で待っているとその人は現れた。
淡い緑のブラウスを着ていて、おっとりした雰囲気。店に入り、カウンターに通されると、横並びに座りビールを頼んだ。お互いゆっくりと話し始めた。
ふわっとした丸みのあるフォルムのブラウスを着ていること、少しぽっちゃりとしたその顔は好きな佇まいだった。お互いどう呼ばれたいとか、これまでの恋愛の話、お互いの印象を話していく。
「真琴くんって眠たくなる声だよね」
「お互いゆっくり話すよね。あと、このブラウスかわいい」
と話をしていく。その後も、日本酒を飲みながらあれやこれやと3時間以上は話していた。
ただ、彼女と話していて、楽しいのにあることに引っかかっている自分がいる。相手が高卒という事実に。友達だったらまったく引っかからないことなのに、パートナー探しとなると、やはり大卒以上であってほしいと頭のどこかで思ってしまうのだ。
自分と同じくらいであってほしいという思いもあれば、周りからの目線を気にしてしまう自分もいる。フラットに人を見ていると言いながら、結局どこかで自分は学歴というフィルターで人を差別してしまうのだなと気付かされる。
まったく自分というのは、現金なやつだ。
みんな、そういうところってどう思っているのだろう。好きになったら学歴なんて関係ないのだろうか。それともやはりある程度は気にするのだろうか。
そこが気になって、このまま進んでいいのだろうかと悩む自分がいる。2回目も遊ぼうと自分から言ったけれど、このままフェードアウトしようか。
もうひとつ、今朝身を起こしてから思い出していて、昨日の自分の行動の気持ち悪さに自分で引いていた。はじめて会ったというのに、距離感が近くなったからって、膝と膝をくっつけたり、笑いながら話したときに肩をポンとさわったり、ちょっと近づき過ぎた……。
距離感が近くなると、異性に甘えたくなる悪い癖が出てしまう。さすがに気持ち悪い。よくない。
まあ、くよくよ悩んでも仕方がないし、まだ会うのも二人目。相手だって自分以外に会っているだろうから、他にも並行して会っていこうと思う。
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