見出し画像

秋のギャラリー巡り!  ~私なりの「現代アートの楽しみ方 」~


現代アートのギャラリー「CADAN有楽町」を訪ねた。
有望作家4人が競演するグループ展が開催中だ。

すぐれた芸術品が光を放つのはなぜだろうか?

このギャラリーでは、会員の画廊が持ち回りで企画展を開いている点も興味深い。

ビル群から光を放つギャラリー

東京有楽町にあるモノトーンのビル群。
その1階から、ひときわ明るく、鮮やかな光を放つガラス窓!

画像16

ビルの一角に「CADAN有楽町」はある


画像2

外に向かって作品が訴える

それが、現代アートを展示するギャラリー「CADAN有楽町」だ。
地下鉄を降りて地上に出ると、場所を探すまでもなく目に飛び込んできた。

CONBINEコンバイン!」と題した企画展が開催中で、色彩豊かな作品やネオン管を使った作品は、窓の外へと強いメッセージを発信しているかのようで、ものすごいパワーを感じた!

すでに注目を集め、これからますます活躍が期待される若手・中堅の作家4人が競演するグループ展。

競演する4人の作家

<水戸部七絵(Nanae MITOBE)>

まず目を引いたのは、水戸部七絵の作品。

画像3

ロックシンガーがシャウト!

ミュージシャンが描かれ、本物のエレキギターがアッサンブラージュされている。
ロックシンガーが作者に代わってメッセージをシャウトしているかのよう!

絵画というよりも、絵の具を貼り付けて盛り上げた立体作品。
粘土を貼り付けて作品を作り上げる彫刻の大家「柳原義達やなぎはらよしたつ」の手法を彷彿とさせる。

画像17

飛び出しそうに盛り上がっている

画像4

オブジェは彫刻のよう

<鬼頭健吾(Kengo KITO)>

その隣には鬼頭健吾の作品。

洗練された色使いと構図。水戸部作品とは対照的だ。

画像5

ビッグバンのようなパワーを感じる

鮮やかな色が自由奔放に描かれているように思ったが、よく観ていくとロシア構成主義を思わせるような、計算された曲線と面が背後に隠れているように見える。

さらに、色彩は平面から飛び出して立体となっているが、これはアルミや真鍮などの金属で表現されている。

宇宙で起きたビッグバンを思わせるように、色彩や形状が光となって、見る者に鋭い勢いで迫ってくると同時に、空中へと飛び出して行く。

画像6

アルミなどの金属が飛び出して表現されている

<やんツー(yang02)>

隣の壁面には、パネル上を静かな機械音とともに何かが動いている。

画像7

「ミニ四駆」がゆっくりと往復する

それは自動車模型「ミニ四駆」。
曲線のコースでスピードを競うはずのミニ四駆が、直線をゆっくりゆっくりと往復している。

自動車の車輪が高速回転するのを見ていると、その一瞬一瞬がコマ切れのように目に止まり、あたかもゆっくりと逆回転しているように錯覚する。
このミニ四駆の動きは、まさにこの現象を連想させる。

1次元から2次元へ、そして3次元の表現に加え、このミニ四駆のスピードという概念で、4次元の時空を表現しているように感じた。

ドローイングマシーンにより、人の手を離れてパネルに描かれたコースを飛び出して、ミニ四駆が駆け抜けているかのようだ。

画像8

パネル上に描かれた曲線は、ミニ四駆のコースのようだ

<小金沢健人(Takehito KOGANEZAWA)>

ギャラリーのショーウインドーに天井から吊るされ、静かに光を発する作品。

画像9

静かに揺らめいている

会場内のわずかな空気の動きを感じ取りながら、静かに揺らめいている。
見る者をゆっくりと惹きつけて、何かを訴えてくるようだ。

画像10

ギャラリーの外へ光を放つ

まさにこれは茶道の世界。
薄暗い茶室の床の間に、しつらえた掛け軸のようで、対話をしたくなる作品だ。

壁を挟んで裏側のスペースに置かれた、円を二つ並べた作品は、禅の思想や「具体美術」を思わせる。
廃材のネオン管と木製パネルを混成した新作シリーズは、一見、洋風でありながら、実は和の思想を表現した作品とみた。

画像11

禅や具体美術の「円」を思わせる作品だ

立体作品の難しさ

これらの作品は平面から飛び出して、あるいは当初から立体として表現されている。

立体作品は平面作品のように、その作品の中で完成するわけではない。
作家は、この東京有楽町という都市空間、そしてこのギャラリーで展示されることを想定して作っているはずだ。

そのため、作品と、それを取り巻く環境を配慮して作らなければならない。
そうした制約、あるいは作品を引き立てる環境を踏まえて創り出された作品であるに違いない。

画像12

テーブルに置かれた立体作品

すぐれた芸術品が光を放つわけ

作家の表現力や技術力はもとより、作品を作り出す根拠や背景に深い思索があってこそ、すぐれた作品は生まれるはずだ。

逆に言えば、作家自身の中で繰り返された思索がマグマのように充満し、それが個性的な表現方法で爆発するように制作されて作品が誕生する。
だからこそ、これらの作品からはパワーや光を感じることができるのだろう。

色の明るさやネオンの光だけでは、モノトーンなビル群に向かって光を放つことはできない。

画像13

静かに燃え上がるようにも見える

企画展のタイトル「COMBINEコンバイン!」の意図

この企画展「COMBINE!」のリーフレットには、次のように書かれている。

「1950年代の初頭、斬新で過激なコラージュの一形式として生まれたコンバイン・ペインティングを再考し、写真や3次元オブジェを組み合わせた技法が、いまどのような含意で用いられているのか、現代アーティストの表現を探ります。」

「コンバイン・ペインティング」は、アメリカの美術家ロバート・ラウシェンバーグが、自らの作品を定義した言葉である。

二次元の平面に、日用品や廃品などを貼り付ける表現手法のことだ。
当時から70年以上が経過し、現代の4人の作家が、この表現方法でどのように作品を作り出したかが、見どころの一つというわけだ。

画像14

アッサンブラージュされたマイクの線は、下まで垂れさがる

ギャラリーも個性を競う

実はCADANとは、「Contemporary Art Dealers Association Nippon」の略称で、一般社団法人日本現代美術商協会のことである。

日本の現代美術の発展に寄与することを目的として設立された、非営利の業界団体だ。

画像15

作品が外まで訴えかけてくる

そして、この財団が運営する「CADAN有楽町」では、会員のギャラリーが2〜3週間ごとに交代で企画展を開催している。
そのため、個々のギャラリーが個性を競っているようで、毎回趣向が異なっていて変化もあり楽しめる。

今回の企画展を開いたのは、群馬県高崎市の「rinリン art associaion」だ。
新進気鋭の作家からベテラン作家まで、独自の審美眼でセレクトした作家を紹介している。
CADANの会員の多くが東京であるが、地方から中央へ情報を発信している点も大変興味深い。

私なりの「現代アートの楽しみ方」

現代アートの楽しみ方は人それぞれだ。

私の場合は、
・作品を見て感動するか、しないか。
・感動したならば、なぜ感動したのかを、表現方法や、作品のメッセージを自分なりに考えてみる。
作品のメッセージに多様性があれば、それらが広がってさらに楽しくなる。

できれば作家と直接会って、自分が解釈したメッセージと作者の意図したメッセージが、同じだったり違っていたりするのを確かめてみたい。

また、ギャラリーが、ギャラリストとしてセレクトした作家を、どのように評価しているのかも知りたい。

さらに、今回参加した4人の作家が、10年後,20年後にどのように活躍しているのかも楽しみだ。

画像16

10年先、20年先、この作品はどう変化していくのか

芸術の秋はギャラリーへ!

著名な、あるいは評価の定まった作家の作品を、美術館で見ることは楽しい。

しかし、今現在どのような作品を制作し、今後どのように展開していくのかを想像しながら、現役バリバリの若手・中堅作家の作品をギャラリーで見ることは、同時代を生きるアートファンとしてはとても臨場感があって至福の喜びとなる。

芸術の秋を迎え、各ギャラリーとも力の入った企画展を開催中だ。
ぜひ多くの人に現代アートのギャラリーに足を運んでもらい、自分なりに現代アートを楽しんでいただきたい。

企画展「COMBINE!」
会期:2021年10月19日(火)~11月7日(日)
会場:CADAN 有楽町 (東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F)




最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございました。 ほかの記事もよろしくお願いいたします。