見出し画像

サンダルを洗った夜。

夏は苦手だ。というか、この暑さが平気な人なんていないと思うのだけど、毎日毎日、息をするだけで一苦労だ。
この殺人的な暑さと、あらゆる方向から降ってくるストレスの嵐で、ここ最近は体調が優れず、気分が落ち込むばかりだった。

そんな身体が重たい夜、ふと思い立って、サンダルを洗った。
黒ずみが目立ち始めてきたけれど、知らんぷりをしてきた、マスタード色のサンダル。
この夏は毎日のように履いていて、平日も休日も出ずっぱりだ。
汚れてきたかわいそうなサンダルを長いこと見て見ぬ振りしてたのに、なぜか突然、「今だ!」とピンときて、思い立ったら即行動のわたしは、たわしと洗剤を持って、いそいそとお風呂場へ急いだのだった。

汚れを力いっぱいこすっていると、みるみるうちに、綺麗になって、まるで新品のように、大変身したではないか!
毎週末、上履きを洗っていた小学生の頃を思い出した。
「ものを大切にするとは、こういうことね」と、思わずひとりごとがポロリ。

掃除をしたり、部屋を綺麗にしたりすると、もやもやした気持ちが晴れることってあるけれど、この夜、サンダルを洗ったことはまさにそうだった。
「周りからちゃんとしてないって思われるよなあ」と少し引け目を感じつつも、なかなか綺麗にできなかったサンダルを、綺麗さっぱり丸洗することで、わたしの罪悪感やら、恥ずかしさやらの、頭の片隅へ追いやっていたけれど、じわじわ広がっていたいや〜な感じまで、同時に洗い流されていった。

息がし辛いような、もやがかかったような、そんな気分だったけれど、毎日履いているサンダルをピカピカにしたら、ハーブティーをゆっくり飲むよりも、ヨガやストレッチで身体をほぐすよりも、心が少しだけ、晴れやかになった。

何もしないのだっていいけれど、また思い立ったとき、自分のために、自分のものを、綺麗にしてあげようと思った。


この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?