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HACHI - Close to heart感想会

 10/9に開催されたHACHI LIVE TOUR 「Close to heart」東京公演に参加してきたので感想会です(今更)。ネタバレを多分に含みますが、細かく個々の曲の話はあんまりしないかも。
 

 個人的な全体感想として、聞き入って浸るライブでした。
 テンション上げて跳ねたくなる曲もあったし、それも楽しかった。けれどそれ以上に聞き入って、浸って、音楽に身を委ねているのが気持ちいいライブだったなと。
 この音が流れている今がずっと続いて欲しい、なんて思いながら会場で揺れてました。 


そもそも歌が凄い

 HACHIさん、普段の配信なんかを聞いているとエモエモの感情表現もめちゃくちゃ上手いんですよ。
 一方でオリジナルの楽曲では明確ないし露骨な感情表現を抑えているように感じます。ある種押し殺したような、丁寧に折りたたんだようなフラットなトーンの狭間から、それでもなお滲み出してくるような感情表現の印象が強いです。このお陰で、なんというか押し付けがましさがなく、聞き手がどんな心情・状況でもそれに合わせた魅力を感じさせてくれるような歌だなと。
 一方で歌自体の強弱や声色の使い分けは実に多彩で、ドラマチックな要素はたっぷりとある。この感情の潜め方(および滲ませ方)と、ダイナミックな表現の両立がこの人の歌が染み入る理由ではなかろうか。

 

あとシンプルに声がいい

 正直毎度新しい曲を聞くたび、歌い回しの素晴らしさに引っ張られて、第一印象は「歌が(ものすごく)上手い」という方向になりがちなんですよね。
 ただその衝撃が脳に馴染んでいくと、今度は声質そのものの良さがガツンとくる。何度新しい曲を聴いても、何周目かで「いやこの人めちゃくちゃ声いいな!?」とびっくりしています。
 聴いてもらったほうが早いんですが、頑張って言語化を試みます。
 厚みがあって響きがよく、表面に微かなハスキーさを伴った透明感。というか。シーグラスをもう少し透明に近づけたような触り心地の歌声。聞き心地の良さがありつつ、力強さと浸透力があり、艶や陰も覗くような。そういう……いややっぱり聴いたほうが早いよ。
 あと繊細なウィスパーから強く張り上げるところまで、声の魅力がどんな声量の時も損なわれないというのも凄いところだなと。全部美味しい。

 

ライブという環境とのマッチング。

 ライブの醍醐味はテンションブチ上げで盛り上がるとか、目の前で演奏されている事実に実在を感じられるとか、証明や演出込みでの没入感とか、色々あると思うんです。
 ただ何よりも大事なのは、音楽に集中し浸ることを自分に強制できる点ではないかと思っています。
 逃れようのない大音量、舞台と演者の存在、周囲の空気、安くないチケット代など これらの要素で強く強く音楽に没入することになる。
 そういったライブの環境が元々強烈な引力を放つ歌と合わさった結果、もうダボダボに気持ちいい音楽に浸り続けられるライブに成っておりました。本当にずっと浸っていたかった。


アルバムの良さ

 そもそも本公演はこちらの最新アルバムを引っ提げたもの。このアルバムそのものがすごく強い。
 良さみは色々あるんだけど、個人的に全体を通してグッと来る要素として、歌い手の能力を信じた作りの曲たち、というのがあります。素晴らしい楽曲への解釈と、完璧な歌唱がハマることを大前提とした曲がズラリ。
 ことさらわかりやすく感じるのはビー玉でしょうかね……上述の滲むような感情表現と、歌声の美しさをダバダバに味わえます。さすがの信頼関係。
 しかし他の曲もすごい。個人的には空が待ってるがどストライクの中でもどストライク。美しく強く響き渡るのに軽やかで伸び切っていく歌。Deep Sleep sheepの諦観と、諦めきれない悲しさだけではない"何か"の滲む様。さよならfrequencyのサラリと耳心地の良い空気の中に漂い続ける寂しさ。
 あと結構、歌声の細かい揺れみたいなものがしっかり残してあるところも大好物です。このサブスク時代に、神は細部に宿るを地で行くような美しい作品群。
 そしてそれを生歌でも余すところなく、さらなる魅力を乗せて表現するHACHIさんの強さですよ。散々思い知ってても圧倒されてしまう。


ステージの上で気持ちよさそうにしてくれるの最高

 それと御本人の内心がどうなのかは勿論分からないけど、HACHIさんはとても気持ち良さそうに歌うなぁと。
 素晴らしい楽曲に最高の歌を合わせてやるんだと言うような、全力を出す楽しさみたいなものをビシビシに感じるステージでした。
 Vのライブはこの辺が結構難しいと思っているんですよね。避けようのない隔たりはどうしても発生するので。
 もちろんそれを超える手助けとしての演出や舞台づくりの良さもありました。特にステージに奥行きを産んで"そこ"にいるように見せる舞台作りはすごく良かったです。配信の画も見たいので円盤ください。
 ただ仮にそれを抜きにしても、歌と音だけでも存分に浸れる楽しさとオーラのようなものがバチバチにあった。実際たまに目を瞑って浸ったりしていた。最高でした。

 

 などなど、そういう聴いて揺れて浸れる良さがどっぷりありつつ、コンサートではなく「ライブ」だったと思う。客席の傍観者ではなく、音楽の中に放り込まれて揺蕩っているような……そういう飛び込み感、没入感も加えての浸れ具合がすごく気持ちよくて。

 つらつらとここまで来て、感じたものを全然書ききれてないん気がするのですが、乏しい語彙も尽きてきたので一旦このあたりで。
 東京公演のアーカイブは終わってしまったけど、アルバムだけでも彼女の良さの多くを感じることはできます。ライブはその拡大爆発版みたいな感じ。
 あとは台湾公演の配信もあるようなので、そちらをぜひ。


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