仄暗い温泉とわたし
友達と温泉に入りに行くところから話は始まる。
明らかにボロッボロの旅館だったが、まあ仕方ないかとほぼ真下の階段を降りて建物に入った。建物の中は小綺麗で、若い子に「インスタ映え~!」とか何とかウケそうな造りだった。
周りを見渡していたら若いお兄さんと、女の人と、小さくて可愛い女の子がいた。少し話したら小さい子に懐かれて、一緒にお風呂に入る約束をしたので、服を脱いで、パシャパシャ遊びながら入った。
そうしたら、胡散臭い笑顔を貼り付けたお兄さんが話しかけてきた。
(女湯という概念がなくてプールみたいな感覚)
お兄さんは長髪で金色の髪で、それらを三つ編みにして前に流していた。服装は曖昧なので割愛。
直感で「こいつ怪しいぞ…」と感じたので距離をとると、一気に不穏な空気になった。すると、一緒に入ってた友達が悲鳴をあげる。
「紡祁!ここ急に深いから気をつけて!まるで、海みたいな…」
何かおかしいぞ、と足を抜いたらあたりが仄暗くなり、巨大な魚が何匹も飛び出してきて悲鳴をあげた。ここにいてはいけないと警鐘が鳴る。あまりの恐ろしさに足がすくみ、震えが止まらなかったが、一刻も早くここから逃げたい一心で無我夢中でとにかく走った。
お兄さんは胡散臭い笑いを貼り付けながらこう言った。
「この先に建物があります。ただし壁と近すぎるとその壁に住む化け物に食われてしまうので気をつけて」
夢の中のわたしは馬鹿みたいに素直なのでそれを信じた。
実際、熊や見たことの無い魚が壁に埋め込まれて展示されていたので、お兄さんの言葉通りそれらから距離を取って進むと、御手洗場のようなところに着いた。
すると、何故か右上にワイプが見えて、よく知る人がバカウケ(お菓子)を洗面台の排水口に突っ込んでいた。すると、お兄さんの弟を名乗る子が光を纏いながら出てきたのが見えた。
(誤解のないようあえて書かせてもらうが、排水口から出てきたわけではない)
多分これは他の人の記憶を、ワイプという形で見たんだと思う。夢の中のわたしは馬鹿みたいに素直だからそれを真似した。意味の分からない世界で、こんな死に方だけはしたくなかった。
そしたらワイプで見た通り、弟を名乗る子が出てきて、何か話してくれたけど記憶が曖昧だから割愛。
お兄さんは光に当たって「僕から逃げられると思うな」やら何やら言葉を残しながら消えた。
仄暗い海のようになったお風呂も嘘だったかのように元に戻り、わたしたちも元いた場所に戻った。