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こっちおいでよリス丸くん その2

原案・イラスト  ゆなぞ
文        ねこやま




神さまは突然ぼくの前に現れた。
そしてつぎの瞬間、

「なんで神ってだけで頼られなきゃならないんだよ〜」
「神にだってね、苦手な人はいます」
「神に期待すんなよ〜みんな勝手にがんばれ」
「それよりも冒険に出たい」
「ねぇ、きみもそう思うよね」



めちゃくちゃ話しかけてきた。
神さまは職務怠慢だった。そして素直だった。
ぼくが言うのもなんだが生きづらそうな神さまだ。


「神さま、少しお疲れでしょう。
うちで良ければ休んでいって下さい。
特製のどんぐりコーヒーです。落ち着きますよ」


「いや、全然疲れてはないんだよね。
疲れてはないけどつまんない。退屈なんだ。
ひとりで旅するのにも飽きたしさ。

いいこと考えた!きみ一緒に来ない?
そうだ。それがいいよ!一緒にいこう!」

「いや、無理ですよ。
ぼくは今まで旅に出たことなんて一度もないし
この森で毎日穏やかに過ごすのがぼくには向いているんです。冒険になんて行けません。」



「そうかなぁ?なんか話聞いてると
なんか色々ツイてないし、素直じゃないし
きみも大概生きにくそうだよね。
わたしはそんなきみが面白いんだよ!
言わば研究対象だ!わたしたち、一緒に居たら面白い事が起きると思わない?」


「…………..。」


「黙ってるって事は賛成してくれたと取るよ。
大丈夫だって。わたしが保証する。
これから毎日たのしくなるよ〜!」



こうして、ぼくの思考が追いつくよりも先に
神さまとの旅がはじまったのだ。




今回は神さまとのたくさんの冒険の中から
はじまりの冒険のお話をしようかな。



神さまが半分強引にぼくを冒険のお供にしたので
てっきり行き先は決まっているものと思っていたのだけれど、特に決まっていなかったらしい。

それでも、ここではないどこかへ
楽しい光が指す方へと進むのが
ぼくが出会った神さまなのだ。


今までのぼくだったらきっとそれを
ノープランの『見切り発車』だと思っただろうなぁ。
でも、神さまと行動してみて分かったのは
とにかく出発してみる事が大切だということ。


神さまはとにかく楽しいこと美味しいもの
新しいことや、わくわくすることが好きだし、
何より好きの気持ちに忠実だった。


一生を森で過ごそうと思っていたぼくにとって
ぼくの居た森が全ての基準で
それ以上もそれ以下もなくて
『知っているわくわく』と『知っているがっかり』の間を行ったり来たりしていたんだなぁ。と思い知った。



ぼく達は、神社というところに向かった。
神さまの『おつとめさき』らしい。
そこに忘れ物を取りに行くというのだから、
なんともうっかりした神さまだ。
(ぼくがしっかりしなければ!)



ぼくの記念すべき第一回目の冒険は
神さまの忘れ物の回収だったのだ。
神さまにとっては冒険に行く前の寄り道だったかも知れないけれど、ぼくにとっては森から出た事が
すでに冒険だったのでとてもドキドキしたよ。
心臓がどくんどくんと跳ねるのが自分にも分かった。
今までは不安な事が起きる時に、心臓が跳ねるのを感じたけれど、『楽しい時もドキドキするんだ!』
と初めて思ったんだ。


「神さま、おつとめってなんですか?」


「ん〜、みんなの願いを叶えたり、叶えなかったりすること。かな?」


「叶えてくれない事もあるんですね。
職務怠慢なのではなくて??」


「失礼だな〜。叶えることの方が少ないくらいさ。
大体はね『見守る』ことが多いんだよ。
ほとんどの願いは、願った人が努力をして
自分の力で願った自分に近づくしか方法がないからね。
だから、見守るの。それがおつとめ。」


「それなら神さまは冒険に出ないで
神社に居なきゃなのではないのですか??」


「確かに!!!!
まぁ、それはそうなんだけど、今から取りに行く
鏡があれば世界中どこにいても見守る事ができるからね。それを取りに戻るのさ。」


(そんな大事な物忘れて旅に出たのか。
やっぱり僕がしっかりしなくちゃ!!)




                    (続)



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