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放送局(部)に入りたい人へ


放送局は何をするのか

 ここでいう放送局というのは高校の部活動ないしは委員会的なものだ。今書いた通り、放送局には2つの側面がある。学校の「委員会」的な役割。これは主に校内の業務で、例えば、

  1. 行事の運営

  2. 校内放送の実施

  3. 備品・設備の保守管理

  4. 高文連・高体連の当番校業務

など多岐にわたる。これが放送局の活動の軸だ。次は「部活動」的な側面についてだ。これはコンクール・大会に出場することだ。放送の大会は「校内放送発表大会」という名前になっていてそれぞれの大会の趣旨は基本的に「日頃の校内放送の成果を発表すること」であって、それはプログラムなどにも書いてある。なので筆者は、明らかに校内放送の延長線上ではない作品であふれかえる放送の大会には懐疑的である。
 以降の文を読むに当たって、高校内におけるエンターテイメント、生徒による学校運営とは何かという2点を考えながら読んでみて欲しい。

「委員会」としての放送局 ~1.行事の運営~

行事と一口に言っても様々だ。入学式や卒業式といった儀式的行事に加え、体育祭や学校祭といった文化的行事、健康安全・体育的行事などがある。(こういった行事の役割についてはぜひ高等学校学習指導要領解説特別活動編を参照してもらいたい)
 さて、儀式的行事だが、大きな特徴としてまずトチれないということがある。入学式や卒業式の荘厳で晴れやかな場でハウリングや、音が聞こえないなどのミスはあってはならない。なので、気を抜かずまじめにやらなければならないのである。ただ、ここで創意工夫をするということは忘れないで欲しい。たとえば、マイクのスイッチが上がっていなくて音がならずに赤っ恥をかく人がいないようにマイクのスイッチをネジで止める(そういう機構があるマイクがある)ことや、話している人が不安にならないようにモニタースピーカーをしっかり設置するなどである。前年度うまくいったからといって、それより良い方法があるのなら、それと同じ必要はない。前回うまくいったのは偶然かもしれない。「毎年これだから」ではなく毎回の「カイゼン(改善)」が大事なのである。
 ここまで、カイゼンを忘れがちな儀式的行事について書いてきたが、学校祭・体育祭について紹介していきたい。学校祭では、音響に加え、映像制作・会場内ビジョン投影という業務も行っている。学校祭・体育祭の運営に必要な力は、
・出演者が何をしたいのか聞き出す力
・それををどのような方法で実現できるか提案できる力
・今ある備品で何ができるか把握していること
・放送室にはどのような備品があるか把握していること
・校内にはどのような機器があるかそれで何ができるのか把握していること
・盛り上げる力
だと思っているし、筆者はこれらを実践してきた。ただ、いまある自分で使える機器でできることしかやらないという選択肢ももちろんあると思う。ただ、「〇〇を▢▢したいんだけど」という出演者に対して、「△△みたいなこともできますよ」と提案したり、会場の様子を見ながら曲をかけたり、会場内でステージの映像を投影するスクリーンを設置したりなどより上質なエンターテイメントを学校に対して提供していく姿勢を示していくことで、放送局の立場や認識は入局当初と比べて大きく変わったと感じている。

「委員会」としての放送局 ~2.校内放送の実施~

 校内放送はあんまり好きじゃない。行事運営に対する熱い想いを綴ってきたわけだが、それは自分が普通に好きだからで、好きじゃないと金ももらってないのに(←ここ大事)あんな熱量でできない。校内放送が好きじゃない理由としては、昼休み中に耳を否応なくジャックしてしまうことと、単純に準備がめんどいことと、昼休みはゆっくりご飯が食べたいなど複数の理由がある。ただ、最初にも書いた通り校内放送というのは一応軸となる業務の一つのため定期的にやるのが望ましいとは思っている。
 やる気があるであろうここまで読んだ読者の皆さんには、録音番組をおすすめする。生放送はたいてい滑るし、緊張する。台本を書いて録音して編集するという番組制作の練習にもなるだろうから、そちらの方が良いだろう。
 「昼休み中に耳を否応なくジャックしてしまうこと」と書いたが、このことについてはぜひ留意してもらいたい。校内放送はある種の公共の電波と同じようなものなので、内輪ネタを避けたり、心地よいぐらいの音量にしたりなどの配慮が必要だ。

「委員会」としての放送局 ~3.備品・設備の保守管理~

 備品・設備の保守管理は、簡単に言えば、片付け、修理、予算の作成だ。これは活動時間の8割と言っても過言ではない。筆者の最大の得意分野で、自分で言うのもなんだが、だいぶ学校に貢献したと思っている。どこに何があるか漁る、壊れていたら捨てる、直せるんだったら直す、要らないものは捨てる、捨てる勇気を持つ、取扱説明書を読む、継続的に管理がしやすいような形態で保管、設置する、仕事は無限にある。予算の策定は、概算で要求する形ではなく、何を買いたいか具体的に決めておかなければならないの結構大変だ。修理はもちろんのこと、片付け、予算の作成にも音響機器や映像機器の基本的な知識に加え、最新の技術や規格の知識も必要だ。音響機器や映像機器で難しいのは、一般的な知識はもちろんのこと、その特定の機器の特性や使い方の重要性が大きいということ。「ミキサーはこういう機械で~」という知識にとどまらず、「YAMAHAのこのミキサーは~」までいかなければ話にならない。筆者は音響・映像機器が大好きなのでいっつもネットサーフィンしていたから良いものの、勉強感覚で見るとなるとかなり過酷なのではないかなと思う。放送局にある機械だけ使えればいいじゃないかと思うかもしれないが、放送局にある機器はいずれ壊れる。壊れる前に機械は更新し続けなければならない。予算の執行できるタイミングが年に1度しかない。壊れたら次の4月まで待たなければならない。ただ行事に穴はあけられない。だから、毎年度壊れる前に、より高性能でより使いやすい機器を購入し続けなければならない。そのためには、やはり「この製品が良さそう」と目をつけたりし続けなければならないのだ。

「委員会」としての放送局 ~4.高文連・高体連の当番校業務~

 これが一番楽しいから!ガチで。正直「コレコレコレ~~~~~♪」と思いながやっていた。腕がなるぜという感じだ。一番高度な知識・技術、コミュニケーション能力が求められる。

「部活動」としての放送局

 筆者は、番組制作を仕方なくやっていただけで正直全然好きじゃないし、嫌いだ。だって金と人もってるやつが勝つ採点競技だから。採点競技は金があるやつが勝つものだと言ってるのではない。あと、正直過激に書いたが、細々とやっている部活でも上位になることも稀になる。わたしたちは、金と人がない時点で同じスタートライン立っていないということを認識しなければならない。上位校にあるのは、一眼レフ、ジンバル、高いマイク、ドローン、エフェクトがんがんいっても余裕なパソコン、演技ができるかわいい女子、演技ができるかっこいい男子、話題を提供してくれる町の人々、やる気。わたしたちはそれらの1つすら無い。言い訳がましいと思うかもしれない。だが、水泳や陸上のような用具の絶対数が少ないスポーツとかとは金であるかないかで有利不利が決まりすぎるのではいか???しかも採点するのは素人のただの高校教員。個人的には全く好きになれない競技だった。ただ、演技ができるかわいい女子とかっこいい男子と、話題性のある町の人々さえいればどうにかなりそうだとは思う。

奉仕する喜びを感じる裏方という仕事

 放送局は、裏方の仕事だ。「目立つ」ということが「失敗」を意味する場面も多い。今、学校に、出演者に、放送局が活動していくために、何が必要なのか、どうすればカイゼンできるのか、どうしたらみんなが笑顔になれるのか、ステージの上やカメラのフレームと、生徒との間に介在して、学校にコミュニケーションとエンターテインメントを確立していくのが放送局の仕事だ。もちろんお金はもらえない。でも、私たちを必要とする人がいる、私たちが笑顔にしたい人がいる。裏方という立場に誇りを持って、最先端の技術とコミュニケーションで、盛り上げるのが放送局の仕事なのである。



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