エライ【短歌10首】
「エライ」 工藤吉生
よいしょ、って座ったソファが思ってたよりも深くて天をあおいだ
眼球のない目でこっちをにらんでるマネキンのコートもう秋だねえ
何時間寝たか計算しているがよくわからない二時間がある
玉ねぎが十キロ入っている箱を持ち上げるときこころはひとつ
悪臭はするけど誰がすかしたかわからぬ電車の客、客!客。客?
コインだと思えばあまり痛くないすごく激しい雨のつぶつぶ
クイズ出しブーとかピンポン言っている中学生の男の背中
オレなんて寝っころがっていたいのにキャッチボールをしていてエライ
看護師のピンクの肩を見てすぎて午後の散歩の六割おわり
さびれてはいるけれど森襖店の中の親父の黒ぶちメガネ
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