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工藤吉生(くどうよしお)の短歌【6】2012年10-12月〈20首〉



【第六期】2012年10-12月。140首発表。
「角川短歌ライブラリ刊行記念 わたしの一首コンテスト」で大賞を受賞〈11〉。
「短歌研究」誌の「短歌研究詠草」準特選〈3〉-〈7〉。
Ustream番組「歌会たかまがはら」へ投稿を開始。連作「ドラゴンクエスト3」制作。



〈1〉
小悪魔のごときフォークに削られてケーキがついに身を横たえる

〈2〉
地下鉄の全てのドアに貼ってあるシールの子供の挟まれた指

〈3〉
とよま市の教育歴史資料館元は明治の学校校舎

〈4〉
在りし日の授業風景再現し人形向かい合った教室

〈5〉
人形の女性教師が指導する生徒もみんな人形である

〈6〉
人形が授業している教室に入る気持ちは父兄の気持ち

〈7〉
校長室デスクで人形校長は半永久的残業時間

〈8〉
真っ黒でとても大きい 土産屋のハローキティがかぶる烏帽子は

〈9〉
『ドラえもんのび太の海底鬼岩城』読み終わるまで居る気の便座

〈10〉
細切れのあなたの思い出くっつけてわりかし泣けるゴミをつくった

〈11〉
小さな子小さな足をのせている小さな車いすはゆっくり

〈12〉
彫刻のトカゲを踏もうとした時にそれは命になって逃れた

〈13〉
身長の計測機器に寄り添えば頭にしかと手のひらが乗る

〈14〉
真っ青な四角い紙を鶴にすることができずに見上げてる窓

〈15〉
何もせず寝ていたいけど生きている意味を問う声なき声 ふいに

〈16〉
100kmを走る細川ふみえへとスキスキスーは繰り返されて

〈17〉
ボールペン薄くなりゆく 私もう元の世界に戻らなくては

〈18〉
秋の日の冷やし中華にツルツルと別れはテープ跡を残して

〈19〉
ニフラムにかかるスライム光へと包まれながら目を閉じてゆく

〈20〉
おうごんのカンダタこぶん 見てごらん夕陽が海にゆっくり沈む

短歌は以上です。ご覧いただきありがとうございます。
投げ銭を受け付けています。100円です。払っても新しくなにか読めるわけではありませんが、工藤がとてもよろこびます。

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