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嵐が<J-POP>と歌った日-新曲「Turning Up」で5人が伝えたいこと

前回「嵐の定額制音楽配信サービスへの解禁&YouTubeアカウント開設に思うこと」という題の記事を書いてから約半月、それに続く展開が嵐サイドから早々に発表された。

デビュー記念日である11月3日、公式YouTubeチャンネルを通じてメンバー5人が出席する記者会見がライブストリーミングされた。そこで5人それぞれの口から発表されたのが以下の6つのトピックだ。

①Twitterなど5つのSNSアカウントの開設
②デビュー曲「A・RA・SHI」から最新曲「BRAVE」までの64曲+初のデジタル・シングル「Turning Up」を含む全65曲を定額制音楽配信サービスにて解禁
③アジア各都市(バンコク、台北、ジャカルタ、シンガポール)を弾丸訪問する「ジェットストーム」実施(11月10、11日)
④敢行中の最新ツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」最終公演である12月25日・東京ドームでのライブの模様を全国328館520スクリーンにて生中継
⑤新国立競技場でのライブ開催(5月15、16日)
⑥2020年に中国・北京での海外公演を開催(具体的な時期は未定)

ここでは②を中心に掘り下げていくが、2020年に東京オリンピックの開催、さらに過去SMAPが尖閣諸島問題で上海公演を中止(2010年)したことがあるように、否応なしに国家間の関係性も絡んでくるであろうことも考慮すると、⑤と⑥に限っては通常のエンタメ・ニュース以上に今後多くの場面で取り上げられることになるだろう。

では本題に。嵐が全シングルを配信解禁すること自体はそれまで5曲と絞って楽曲を公開していた状況も鑑みて、なんとなくだが予想はできた。現に記者会見に向けてのコマーシャル映像を受け、そういう旨のツイートを自分はしていた。

だが、いざ全シングルが解禁されると、その光景はなかなか壮観だった。会見にて松本潤は21年目を迎えるにあたり“Reborn”というテーマを掲げることを発表。「ファンと今まで以上に身近に、より早くつながれるよう」にと、まさに嵐と僕らがいつでもつながることができる時代が訪れたのだ。

そして、“Reborn”というテーマ、ファンとより近くでつながることを結晶化させたのが、グループ初のデジタル限定配信シングル「Turning Up」だ。同楽曲は、11月3日21時にYouTubeプレミアにてミュージック・ビデオが解禁。このイベントでは、5人がチャットにリアルタイムで参加するという、これまででは考えれられないようなスキンシップも早速行なわれていて非常に興味深かった(その前には公式Instagramで初のインスタライブも行なわれていたそう)。

解禁された「Turning Up」のビデオは、アリアナ・グランデやドレイクの作品などを手掛ける米メディア制作会社:THE YOUNG ASTRONAUTSがディレクションを担当。グローバルなアイデアを取り入れた映像を見てもわかるとおり、ロサンゼルスをメインに撮影されたビデオには、メンバーの最高に楽しそうな表情とキレよく歌い踊る姿が鮮明に映し出されている。Cサビでは、これまでレッド・ツェッペリンやザ・ローリング・ストーンズ、最近ではBABYMETALがライブを行なったことでも知られるロスを代表する会場、The Forumを貸し切ってのパフォーマンスもとても印象的だ。

個人的に今回の発表で一番衝撃的だったのは、嵐がその新曲で<J-POP>と歌っていることである。正しくはサビのキメに《Turning Up with the J-pop》、つまりは「一緒にJ-POPを盛り上げていこう」と高らかに宣言している。それを嵐が、だ。

紛れもなく、嵐は日本の音楽=J-POPの一端を担っている。その嵐が「J-POPを盛り上げる」ことを積極的に、かつポジティブに伝えているのは何とも刺激的だ。さらに重要なのは、それが皮肉ではなく純粋な気持ちで、ファンと共に(with)、名詞として("the")J-POPを捉えている点も嵐が新たな挑戦を試みていることを証明している。

前後に顔を出すギター・カッティング、シティ感溢れるサブベース、そしてビートに対してアクセントとしても機能するトークボックスなど聴きどころ満載な「Turning Up」は、嵐の新たな旅立ちを告げるファンクネスを存分に感じ取ることができるナンバーだ。振り返ると、シングルだけみてもデビュー曲の「A・RA・SHI」、「きっと大丈夫」、「復活LOVE」などテンポや情景は違えど、ファンクはいつも嵐を次なるステージへと導いていたように思う。

松本潤は会見で「僕らは(活動する)期限が決まっている」「いつでもぼくたちの音楽を楽しんでもらいたい」「(配信解禁することで)活動を休止している間もみなさんが寂しい思いをせずに楽しんでいただきたい」と述べていたが、その想いはこの曲の歌詞の至るところで前向きな形で言及されている。

1コーラス目のAメロにある《閉ざされたドア 開く鍵はHere》、そしてサビでの《ポケットにはFunky beats to drop》は、どちらも今回の配信解禁を指しているようだし、なんといっても櫻井翔によるラップ詞は、その全てが嵐の「これまで」と「これから」を表現しているように受け止めることができる。

Hey! Everybody! お待たせ
もうseamless あの空まで
山 風(嵐)とほら朝まで 
もう
seamles あの“彼方へ”
Let’s get the party started again
ずっと近くでsmile again and again

“seamless”とは、まさにファンと嵐を隔てる境界線がなくなったことを説明しているとして、“山風”(山+風=嵐)と「おまかせ→空まで」からの流れを汲み取りながら韻を踏み外すことなく自分たち(嵐)の存在を忍ばせているそのボキャブラリーには脱帽した。さらに《Let’s get the party started again》(さぁパーティーをやり直そうぜ)と歌ったのち、《ずっと近くでsmile again and againn》と「感謝カンゲキ雨嵐」のワンフレーズを拝借するなど、ファンが思わず涙してしまう要素も加える、櫻井翔の粋な一面にもしてやられた。

「Turning Up」、そして一連の発表で伝わってきたのは、2020年を持って一度足を止める決断をした5人が、トップでいることに慢心にならず、むしろトップでいつ続けるため、何よりファンと離れ離れにならないために選択した道だということだ。デビュー20周年を迎え、21年目のスタートを切った嵐がJ-POPを歌った日に届けれらた「Turning Up」には、大切なファンへ送られた嵐の<深い愛おしさ>が詰め込まれている。

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