それを伝手という

一年半振りに元同僚からの連絡。

嘗てその人から連絡があった内容は、勤め先が潰れ全員失業するので転職先を探している旨。
仲介会社から弊社を紹介されたので、現在の社内の感じはどうかという内容だった。

自分の前職から弊社に転職してきた人間は当時多くいた。
多くは当時の前職の大規模な社内改革に嫌気がさした者、社から婉曲に退職を勧められた者。自分は後者だった。
元同僚はその中でも辞めなかった者に含まれていたがその後も体制が大きく変わったらしい。
前職から弊社に転職した中で自分が認識している存在が一人いた。その人以外は一年以内に辞めていったといっても間違いではないだろう。

直属ではないが、その相手は立場的に上司に当たる。一時期上司である時期もあったが、その時は何の関係もない顔見知り程度だった。悪い人ではない。

問題は弊社の社員紹介を使うか否かという話に至った。
自分だけでは判断の付かない問題だったので件の上司にも相談をした。上司は元同僚と仕事上の面識は一切無く、互いに名前を出しても知らないようだった。
仕事内容がどういうものなのか、仲介会社から弊社を紹介され興味を持っている元同僚に対し説明するのは自分には身の余るものだった。

そこで上司にも同席頂き、フランクに仕事内容を話す時間を設けた。

結論として、社員紹介は使えなかった。
理由として、仲介会社経由で紹介されている元同僚を社員紹介として採用する事が出来ないという事が大きかった。
また、社員紹介は一年間は同じ人には使えないという事になった。

一年後、再び同僚に聞いてみたところ派遣会社に登録したらしく、その時点では大手の会社で派遣として働いているということだった。

その同僚より最後のやりとりから一年半振りに連絡があった。
派遣元の案件が終了し契約も終了する事を報告してくれたのだ。

再度弊社の社員紹介を使うことは今なら出来る。
また保険として友人にも話をしてみる事にした。

友人は嘗て会社を立ち上げたが今は役員になっているらしい。
つい先日縁があり六年振りに再会したばかりだった。
元同僚からの許可を貰った上で以前元同僚から受け取った職務経歴書を友人に渡す。

人の好き嫌いが多い自分にとって、元同僚は唯一最後まで分け隔てなく接していてくれた友人だ。
殆どの場合、転職して職場が変われば余程の事が無い限り交流などなくなるが、この元同僚は転職後もこうして時折連絡をくれる。
業界が同じという利点はあるが、利用するだけ利用しようとする人間もいた中、元同僚は本当に困窮しているようだった。

年齢的に上がれば上がる程転職は難しくなってくる。余程のスキルを持っていない限り。
だからこそ自分も今の職場では転職する事なく長く続けている。
一度入社出来れば余程の事がない限り退職など促されない会社なのだ。
元同僚もあの時皆と一緒に辞めておけば良かったのに、と今でも思う。
ただ家庭がある場合にも転職は容易ではないだろう。蓄えがあるのならばまだしも。

元同僚自身も派遣元と相談すると言っていたし、今ならば弊社の社員紹介も使えるだろう。
最後に連絡を貰ったのが一年半前だったので、元同僚はもう辞めているだろうと思っていたらしい。
確かに一年半前ならばそうだった。
元同僚とやりとりをしたその数ヶ月後、診断書を提出し今の部署に異動する事が出来た。
望めば自分が働く場所を移す事もできるのだ。

元同僚の進退がどうなるのかは今の段階では分からない。
しかしながら元同僚の未来が希望あるものになるように祈っているし微力ながら強力ができればとも思う。