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【小説】復讐代行者 シロツメ【3】

「そんでまー坊よ。今回はどういった内容だ?」
女子…リリーから差し入れられた小さくお洒落なフルーツタルトを一気に口に放ってから、再びソファに座った高身長の男がぼくに訊ねる。
そこでノートンくんで探し当てたとある掲示板の画面をスクリーンショットしたものをプリントしてきた紙を、ぼくに向き合うようにして話しかけた高身長の男と、その隣でソファに軽く腰掛けているリリーに見せた。

「うわぁ…」
「こりゃひでぇ」
その紙を注視した2人が口々に嫌悪を滲ませた声を洩らす。ぼくはその声に被せるように、ひとまずここに着くまでに得た基本情報を話した。

「依頼者のハンドルネームはシャル、本名は小渕 紗々音(こぶち ささね)。県内の私立中学に通ってる」

「中学生ですか。加害者はクラスメイトということですね?」
「今時の中坊はこんなこともすんのかよ…この国の先行きが不安だぜ…」

男の言葉にはぼくも同感だ。ただ、他人に苦行を強いるのは年齢も何も関係ない。特にこの国の国民性から見て、彼らは楽な方に流れがちで良くも悪くも他者に同調しやすいとぼくは思っている。
少しだけ考えてみて欲しい。眼前に道が2つしかなく、一方が楽な近道でもう一方は苦しい思いしかしない遠回りの茨道だったら、あなたはどちらを選ぶだろう。

つまりそういうことだ。人に手を差し伸べるにはそれなりの覚悟が必要だけれど、流され見て見ぬ振りをする方がずっと生きやすいし何より『楽』なのだ。

「話戻すね」
ぼくは言いながら2人の前に差し出した紙を、彼らの向かい側に設置してある深めに腰を下ろしているソファの傍らに置いた。

「依頼者が受けてる被害は、主にさっき見せた『資料』の通り。で、どうする?」
試すように問いかけて、ぼくは2人を見た。双方はしばらく顔を伏せたままだったが、やがてほぼ同時に勢いよく顔を上げた。

「当たり前じゃないですか。こんなことするなんて許せません!」
「確かに。年齢だとか立場がどうだとか、んなもん関係ないわな」
「決まりだね」
2人の目は決意に充ちていた。まぁ、焚きつけなくても彼らなら同じことを宣言していただろう。

「これから2人にして欲しいことを伝える。私怨と私情は混ぜないようにね。ぼくらはあくまで、3枚の葉なんだから」

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