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【短編小説】カプセル

お、やった。シークレットだ。

ん、あぁこれ?
知らない?カプセルトイ。ガチャガチャとも呼ばれているやつだよ。

ほら。表記された小銭分入れて、このハンドルを回すでしょう?
その時の音からきてるんじゃないかな。まぁ詳しくは知らないけれど。

どうせだし、あんたも先行き占うつもりでやってみ?お金なら出すから。
そうそう。そこにコインを入れて…そんで、それ回してご覧?

おぉ、あんたもってるねぇ。レアが出たよ。

ちなみになんだけれど、あんたはどうやってここへきたの?旅立つ前に教えてよ。
……。ふぅん、なるほどねぇ。

あはは、睡眠薬のカプセルを過剰摂取してやってきた場所で、カプセルトイを回しているってわけだ。

ところで今の話だとさ、あんたにはまだ希望がないわけではないんだろう?あんたを気にして、隔離病棟に押し込まれたあんたの元へ毎週訪ねにきてくれるだなんて、随分健気な弟くんじゃないか。
あんたはまだ、世界に見捨てられてはいなさそうだよ。

で?どうする?あんたはまだ引き返せる。それでもこの先に進みたいのかい?

そうか。

あんたのことは結局、あんたがそうやって決めるしかないんだ。その道の先が崖だとしても、ボロボロになった命綱を守るように握り続けてくれる人がいる。それって割と幸せなことなんだよ?


それじゃあね。命を全うするまで、もうここには戻ってくるなよ。

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