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【短編小説】青蜂商店

いらっしゃいませ、お嬢さん。
ご新規さんがここに辿り着いたのはいつ振りですかねぇ…。

ここは青蜂商店。青い蜂、と書いてセイホウと読ませます。
お客様が望むものを望む形で手に入れる為の品を扱う店、とでも言っておきましょうか。

お嬢さん、どうしても手に入れたい人がいるのでしょう?
隠さずとも分かります。えぇえぇ、そのお気持ちも痛い程分かりますとも…。
なので特別に、おまけしておきましょう。

さぁ、手をお出しなさい。

綺麗でしょう?
このブローチを、ライバルさんに贈ってください。

これにはまじないがかけられていましてね。
強大な力を持て余し、周囲から悪魔と罵られ、世界を呪いながら人生を終えた呪術師の思いの込められたまじないが。

いわゆる呪物、というものです。持ち主を呪い尽くし、巡り巡ってこの店へやってきたのです。

大丈夫、怖がらないで。
呪物といっても、ピンを通さなければただの何の変哲もないブローチです。手に持っているだけでは効力は発揮されませんので。

こちらの商品ですが、身に付けた者のところへはありとあらゆる不幸が訪れます。
既にライバルさんと近しい関係になっている人々は、結果的にその方を遠ざけるでしょう。誰だって不幸にはなりたくないですし、何だかんだ御託を並べようと自分の身は可愛いものです。

それはあなたが手に入れたい愛しい人も例外ではない…。
愛しい人の気持ちはあなたの方へと完全に傾くこととなりましょう。

例えまじないが原因でライバルが命を落とされたとしても、あなたは『どんな手を使っても』その愛しい人が欲しいのでしょう?

ふふ、即答とは…。
やはり、あなたはここにくるべくしてくる方だったようだ。

お買い上げありがとうございました。
あぁ、そうそう。

いつかまたこの店を見掛けても、決して立ち寄らないでくださいね。

蜂の生み出す蜜は甘いですが、2回目以降を欲張ると致命傷を負いかねませんので…。

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