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【短編小説】ある家の或るあの子

「うわー暑いー…」

それ何回言うのよ。でもまあ最近は、猛暑というより酷暑な時もあるもんね。

「なーんでこんな時に限ってエアコン壊れるかなーもー…」
本当にそうだよね…。必要な時に必要なものが見つからなかったり、必需品なのに稼動させようとしたら今回みたく壊れちゃったり。それが世の常みたいに私は諦めているけれど。

ん?あれって…。

「あ!ちょっと!
そっぽ向かないでよー!」
ああ、ごめんごめん。あっちの窓の外にイケメンを見た気がして。それで、何の話だったっけ?

あ。この足音は…あんたのママさんじゃない?

「今、この部屋のエアコン修理頼んだから。それでも取り組み始めるまで最低一週間はかかるって言われたけど」

「ちょっとママ!部屋入る時はノックしてってば!」
「はいはい。お年頃なわけね」
ママさん、今ちょっと娘さん借りてましたよ。そっかあ…修理までそんなにかかるんですね。

「お年頃な娘ちゃん、お昼何がいい?」
「んー…冷やし中華ー」
「たまには栄養価のあるものリクエストしなさいって言いたいところだけど、この暑さじゃ作る方も色々面倒なのよねー…。デリバリーにする?」
「さんせー」

「じゃ、下のリビングで一緒に決めよっか。扇風機のスイッチ切っといてね」
「はーい」
あ、分かった。一階に行くのね。じゃあ私もしばらく休んどくよ。

さて。エアコンが復活するまで、頑張ってあの子やみんなを涼しくしてあげなきゃね。

部屋のドアが閉められるのを感じながら、私は一人そう意気込んだ。

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