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K.385の開始について(改)

K.385の冒頭2小節がアウフタクト的に3小節めに係っている。ということに気がついた、とは前に書いた。だが、これが「前奏」であるという先週の考えは撤回する。よくよく楽譜と付き合ってみるとそうではないのだ。
だが、このアウフタクト的な主題の構造がわかったおかげで作品の造りが良く見えてきた。予定されていた「反復」に矛盾があるといのも認識の誤りだった。逆にこの「アウフタクト音形」を鍵にすると音楽の重心を捉え易くなる。

この開始は二つの小節を分母とする6拍子で動き出す。

1 2 | ①3 4 ②5 6 ③7 8 ④9 10 ⑤11 12 ⑥13 14 |15…

こうして15小節めに至るのだが、ここでも13小節目と14小節目がアウフタクトになって15小節目を導き出す。そう捉えると対位法的な仕組みがリアルに見えてくること、そして24小節めに向けての圧縮と拡張の過程が生き生きと蘇る。

①15 16 ②17 18 ③19 20 |
①21 ②22 ③23 |
①24 25 ②26 27 ③28 29 |
①30 ②31 ③32 |33…

という綺麗な造形が顕になる。

さらに3拍子と拡大3拍子と4拍子の見事なリレーが美しい。

33 34 35 36  |
①37 38 ②39 40 ③41 42 |
43 44 45 46 |
47 48 49 |
①50 51 ②52 53 ③54 55 |
56 57 58 59 |60…

この拡大3拍子のミルフィーユに変化を齎すのは66小節めからの5拍子の挿入がきっかけとなる。この5拍子挿入は後で94小節めの提示部終了に大事な鍵となる。

92 93 94 , 95 96 | 97…

こう考えると反復指示は決して矛盾しない。この音形がアウフタクト的な位置にあることに注目すると形を間違うことはない。

さらに言えば、このアウフタクト開始がこのK.385の遺伝子型だとも言える。この件はまた後日触れるけれど、こういう「鍵」が見つかって作品を解く道が開かれる思いがしている。

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