正義じゃない貯金なんかあるもんか!

息子が高校に入学して1か月、保護者会があった。

高校の保護者会って何するの?小学校や中学じゃあるまいし、役員決めとかあるのかな?(←ありました…どこまでいっても日本の学校には役員がついてまわるのです) 何も警戒せずにノホホンと学校へ行き、教室で待っているとクラス担任がやって来て、挨拶もそこそこに文庫本サイズの冊子を配り始めた。

某大手通信教育社のロゴが入っており、表紙に「受験生の保護者のためのガイドブック」と書いてある。確かに2ヶ月前までは受験生でしたけど、入学した後もまだ受験生なの?と首を傾げていると「これは大手通信教育会社が毎年高3生に配る保護者向けの冊子です。28ページを開いて下さーい」と先生は言う。

「はい、ここに 全国の大学受験生の平均受験大学数は10校です とかいてありますね? しかし、これはウチの高校からすると少ないです。だいたい15 校、ウチの高校の生徒は大学を受けます。多い子は30校受験します。

皆さんご存知と思われますが、大学の願書というものは、1校だいたい三万五千円です。その他に手数料や郵送費用なども掛かります。そして、これに往復の交通費や食事代、地方受験の場合は宿泊費もかかりますね。それで15校受けるとなると、はい、もうかなりのお金がかかる訳です。そして、さらにそこへ入学金も掛かります。本命に一発合格という子は少なく、だいたいは滑り止めと言われる大学に保険をかけて支払うわけですね。

皆さんは賢明でいらっしゃるので、学資保険などで大学受験のために費用を積み立てなどして用意されてる方も多いと思いますが、願書などの受験費用だけのために何十万も用意してらっしゃる方は多くはないと思われます。

いざ受験となったとき、それこそ50万以上用意して下さいといって即、用意だてられる家庭は多くはないでしょう。なので、今ここでお話させていただきました。

皆さんのお子さんが受験するまで、まだ3年弱、時間があります。それまでに準備できる時間があるのです。

皆さん、貯金して下さい。貯金は正義です!お金があるにこしたことはありません!!」

言い切る先生。

しーんと静まり返る教室。

ハッとして教室を見渡すと、クラス中の保護者たちがポカンと口を半開きにして茫然と前を見ていた。

だよねだよね。なんだよーーそれーーー

何校受けようが構わないけど( いや構うけど)行くのは結局1校なんだよーーー!

なのに、何十校も受けるなんて、どうかしてやしないか。おかしいでしょ。そんなのにお金かける前に、一校入魂!で本当に行きたい大学にエネルギーかける方がずっと効率もコスパも良いでしょう?そのための3年間ではないのか?

と、先生に言うべきか言わざるべきか。しかし、こんなところで反感買いそうな意見、堂々言う勇気はない。とりあえず、様子みる?と高1の保護者会はそのまま無言で帰宅した。


高2になって、また保護者会があったときは、もっと厳しい言葉があった。

「はい!これは昨年の我が校の受験結果です。100人分あります」

どさっと渡された A4コピー用紙の山をめくると、丁寧に黒いラインで消された氏名の下に、縦10横2枠の表が掲示されていた。その枠の中には細かな字で大学名と学部名、そしていくつかの丸や三角の記号が、ぎっしりと書き込まれている。

「縦10横2の表がありますね。このコースの子達の中で一番受験校が多い人が20校受けたからです。表枠の中の大学名が受験した大学と学部、○が受かった大学で◎は第一志望校に受かった記号、△は進学した大学を示します。つまり◎と△が同欄にある子は、第一志望に合格した勇者ということになりますね。

勇者…

っていうか、○とか△って………競馬かっ!!

呆れていると、先生はさらに細かい説明を始めた。

「この資料を見ると、さらに細かいプロファイリングができるんですよ。番号21の人の表を見てみますと、この人は早稲田と慶応を集中して受験していますね。でも○は一つもついていない。で、進学先は△がついているH大学ですね。

番号6の人は、東大に受かりましたが、早稲田慶応には一つも合格はついていません。東大に受かったので進学先も東大の△がついていますが、受からなかったら多分、進学先は○のついているM大学でしょう」

…と闊達に先生は表を指差し読み上げながら説明してゆくが、慶応早稲田上智、国公立の合格者は2割ほど、4割の子は日東駒専や成成明学、3割ほどがGMARCHという割合だった。

これは…えっと、すごいのか、そうでないのか。

いや、100%現役合格をうたっている学校方針には偽りないし。すごいよね…

っていうか、その…皆さん保護者さんが、これだけの大学を、お子さんに受験させて支払ったわけですね、大金を……絶句である。

先生はパラパラと「戦績表」をめくりながら、こういった。

「みなさん、これを見ていただければお分かりでしょう。この学年は、どこの大学に入るのにも激戦です。受ければ受けるほどに、可能性もまた広がるのです。

まず、出願しなくては受けられませんし、合格もしないのです。

受けられるだけめいいっぱい、出願しましょう!

そして、まだ時間はありますから、貯金に励むのです。貯金は正義です!

お金があるにこしたことはありません!!」

地獄の沙汰も金次第、って言葉があるけど、受験の合格も金次第とは…

どうするよ。ってするしかないでしょう貯金。

なんたって正義なんだから…

でもこれって、洗脳じゃないか?

納得いかんな、と思いながら、高二の保護者会も帰宅の途につきました。


さぁ、そしていよいよ高三、受験生です。

はたして大量の願書は出したのか?お金は?貯金は?

今、リアルタイムで受験が進行しております。

全て終わって、一息ついたら、貯金の正義の行方を記したいと思います。

乞うご期待!

そして、息子ーーーーーー頑張ってーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!




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