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日本の失われた30年を見つめるBBC記者の目

ネットで流れてきたBBC記者の日本語訳記事が、Noteでも試訳版として流れてきたので、思わず両者を比較してしまった。

Note上で凄い数のいいねを集めているように、オリジナルの記事(BBC日本語版)も多くのPVを集めているのだろう。英国人がよく指摘するのだが、とかく日本人は海外から自国がどのように思われているのを気にする国民なのだ。少なくとも、英国人はそう見ている。

この記事を読んでどう感じる人が多いのか、やはり日本人なだけに大変気になるのだが、元々の記事は英語で書かれただけあって、日本人向けに書かれた訳ではない。恐らく、日本人が思うほど、英語圏の人たちからは注目されていないだろう。

英国人の日本に対する視線は今でも極端だ。基本は、知らないか興味が無い。日本は中国の一部と思っている人すら多い。興味がある人でも、アーサーゴールデンが描いた芸者の世界(オリエンタル趣味丸出し)か、テクノロジーが進んだロボットの国(没個性的で人間性の欠如を暗喩)、可愛い萌キャラの多い国(ロリータ嗜好を揶揄)あたりが定番だ。映画「ロスト・イン・トランスレーション」のミステリアスな国の印象を持つ人も多い。どれも実態からほど遠いか、一面だけを取り上げた感が強いのだが、それだけ遠い縁の無い国なのだ。

個人的な経験ベースで恐縮だが、この記者が最初に来日したという1993年当時、私は英国領香港に留学していた。キリスト教徒の香港人ばかりが集められた学生寮に入り、英国人や米国人と一緒に英語で広東語を学ぶクラスに在籍していた。

そんなこともあり、1993年当時の、香港人、英国人、欧州人が、どのような目で日本や日本人を見ていたかを、昨日のことのように思い出すことが出来る。

正確には、生粋の香港人だけではなく、広東語圏以外から来た香港に住む中国人、英国人と言ってもアングロサクソン人とスコットランド人、アメリカ人といっても白人、アメリカ生まれの中国系、ハワイアンなど多様だった。欧州人はもっと多様で、フランス人、ベルギー人、元東ドイツ人などだが、みな全然違っていた。

ただ、日本に対して共通していたのは、①日本は世界一物価が高く、②技術が進んでいて、③日本人は頭が良い、というものだった。どれが原因でどれが結果なのかは甚だ不明だが、整理をすると、どうも日本人は、①教育水準が高くみな頭が良いので、②次々に新しい技術を開発でき、③競争力のある驚異的な製品を作ることが出来、④結果、日本製品は高くても売れるので、⑤日本人は皆お金持ちなのだ、という感じだった。

逆に、金持ちで進んでいる日本だから、日本の文化は素晴らしく、人は賢く、礼儀正しく真面目で、生み出される文化はアニメや漫画など素晴らしいし、音楽だって次々と優れたオリジナリティのある新曲が生まれている。日本料理は寿司を始め美味しくてヘルシーだ。日本語の響きも母音が多く美しい。

それ以上はないくらいの誉め言葉のオンパレードだった。

もちろん、留学先では、私の周りには、何らかの形で日本に好印象を持つ人が集まってきていたからということもあるだろう。日本に関心の無い人が、わざわざ近寄っては来ない。

私は正直、この状態に対し、現実との乖離が大きいと感じ、なんとも落ち着かない気持ちでいた。評価が明らかに身の丈にあっておらず、過大評価されていると思ったのである。

現在はどうだろうか?私は、やっと身の丈にあって来たような気がしてならない。過剰評価が薄れ、興味を持つ人の層も厚くなって、いい意味で普通の国になった。

過剰評価されていた過去の栄光にしがみつけば、失われた20年か30年になるだろう。しかし、本当の常呂、元々そんなものはなかったし、海外からの評価を気にすること自体が問題で、そもそも自意識過剰だったのだ。

普通の国になろう、日本。卑下するのでもなく、自意識過剰になるのでもなく、身の丈を出来るだけ正しく認識して、明日の為に今日出来ることをしよう。

改めてそう思わされる記事だった。