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トワイライトQ「迷宮物件」これたぶん監督の実体験

アマプラで一話110円という安さもあって、押井守のトワイライトQを見ていたが、二話目の迷宮物件がとにかく凄かった。昭和末期の猥雑な街並み、バブル期のギラギラの残り火、独り言とも演説とも取れる妙に熱っぽい独白・・・。サムネに借りてきた画像の画作りからしてヤバいのが伝わるよね。

全く依頼がなく、干上がる寸前の探偵に舞い込んだ久しぶりの仕事は全く奇妙な依頼だった。怪しげなアパートに住まう親子を調べる、それも開発が途中で放棄された埋め立て地の、管理人も大家も逃げているのになぜか水道ガス電気が通っているというものだ。


※以下ネタバレあり。というか見た人にしか分からん


調査対象に接触するべからずという探偵界のタブーを犯して対象の部屋に潜入した探偵だったが、大きな錦鯉と女児が布団で寝ているだけだった。あらかじめ設定されたメッセージがファックスから吐き出されてくる。そこに書かれた真実は驚くべきものだった。なんと、対象の父親風の男は未来の自分だった。女児のほうは最後まで語られないが(一緒にいればすぐ分かるとだけ言って男は鯉に変わった)、たぶん神っぽい存在。


うーん、これ監督の実体験ですよね?鳴らない電話、ボロアパートにやることも無くボーっとしてる、自分が存在してるかもはっきりしない、世界を気まぐれに操る白痴の神性・・・

時代的にも、「天使のたまご」の後なので、干されて仕事無い時の経験が下敷きになっているように思われる。独白調の語りも妙に重みというか現実味を感じる。監督が声優もやってるかと思っちゃったよw

探偵は監督で、娘は作品(イデア)。監督は自分が主人のようで、実のところ自分の内にある神とも言える創作物に振り回されていた。それがあの最も近い隣人でありながら、血のつながった娘とは言い難い少女の正体だろう。

そして終盤で、鯉に変わった未来の自分と入れ替わるところだが、あそこでは入れ替わった探偵の力で世界に変化を起こしている事が分かる。
神性に振り回されて世界を作っていたが、何のことは無い。自分自身にも同じ力が備わっていたのだ。

湧き上がる想念に任せて作品を作っていたら「訳の分からん物を作る監督」として敬遠されてしまった。しかし、もっと自分が制御していいんだ。自分が主導となって作品を導いていいんだ。

「じきにどういうものか分かる」

そう未来の自分から、過去の監督に宛てた宛先不明のメッセージなのだ。私はそう受け取った。

おわり


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