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いちょう団地の日本語教室 ―多文化共生のまちづくり―

「自分の住んでいる地域のニュース」というテーマで、宣伝会議主催の編集・ライター養成講座の課題として作成した記事です。御一読下さい。
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昨夏の緊急事態宣言のあおりを受けて2 ヶ月余りにわたって休止を余儀なくされていた 日本語教室が、昨秋から活動を再開し、以前にも増して多くの学習者を集めている。 

1994 年に数名の学生ボランティアによって始まった日本語教室は、四半世紀にわたって地域の国際交流 を担ってきた「多文化まちづくり工房」の活動の原点だ。個々の学習者のレベルに応じた、きめの細かい マンツーマン指導を基本とし、多くのボランティア講師やサポーターに支えられて希望者全員の受け入れ を実現している。費用は無料。会場は旧いちょう小学校の敷地内にあるコミュニティハウス。朝は火曜と 金曜の 9:30~11:30、夜は水曜と土曜の 19:00~20:40。週1回のみの参加でも可。ボランティアスタッフ も常時募集中とのこと。 

創設時のメンバーで、現在も代表を務める早川秀樹さんは、コロナ禍でも日本語教室が続けられるよう に関係者と協議を重ね、さまざまな工夫を凝らしてきた。参加者の検温や健康チェック、施設や備品の消 毒はもちろんのこと、従来は向かい合わせになっていた座席を横並びにし、互いの距離を十分にとり、感染対策を徹底している。

「多文化まちづくり工房」は、「多様な文化背景を持った人たちが、それぞれの個性を出し合い、ともに 楽しく暮らせる『まち』をつくる」という目的を掲げるボランティア団体である。レギュラーの日本語教 室に加えて、外国籍児童の放課後補習教室やプレスクール等のこどもサポート、緑道保全活動、あいさつ ロードプロジェクト、多文化農園プロジェクトなど、いちょう団地を拠点とした多彩な活動を繰り広げてきた。 

横浜市泉区と大和市の境に位置するいちょう団地は、3500 世帯の 4 分の 1 を外国籍住民が占める日本有数の多言語・多文化集住地域である。1970 年代にインドシナ難民を受け入れた大和定住促進センターが 近くにあった関係で、古くからの住民にはベトナム・ラオス・カンボジア出身者が多い。90 年代以降は中国からの帰国者や留学生、南米からの日系移住者なども増加し、住民の国籍は 20 ヶ国以上にわたると いう。若い世代ほどその比率が高く、飯田北いちょう小学校 では全校児童の半数以上が外国につながるルーツを持つそうだ。そんな中で、日本語教室をはじめとする 多文化まちづくり工房の活動は、どれほど心強い草の根の生活支援となってきたことだろう。 

かつて日本語教室で学んだ外国籍の子供が、大学生や社会人となってからボランティアスタッフとして 教室に戻ってきてくれる例もあるらしい。愛着を持って帰れる場所を「ふるさと」と呼ぶならば、いちょ う団地は異なる文化背景を持つ人々にとって共通の「ふるさと」になり得ていると言えよう。コロナ禍の 荒波を乗り越えた日本語教室が、これからも「ふるさと」を支える大切な活動のひとつとして続いていくことを願う。


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