見出し画像

さまあたいむぶるうす

さまあたいむぶるうす 聞こえてくるよ
オイラの声は枯れちまったけれど
さまあたいむぶるうす おまえのギターの糸は
まだサビついちゃ いないかい

13歳の時 ビートルズを知った
タジオから流れる歌に耳傾けた
バンドを組もうって誰かが言った
誰もが夢見てた そんな時代だった
ギターのコードも何ひとつ知らない奴らが
リヤカー引っ張って楽器を借り集めた
何一つ持たない旅立ちだったけど
若さと夢だけしっかり抱いてた

ドラムを叩いてたカズオって奴は
でっかい体して そのくせ気は小さくて
いつもコンサートじゃアガりまくってた
ふくれたホッペタが ピクピク震えて
就職が決まって東京へ行ったカズオは
課長とケンカしてクビになって帰ってきた
ガキの頃から嘘のつけない奴だった
嘘で固めた世の中で生きてゆける筈もなかった

さまあたいむぶるうす 聞こえてくるよ
オイラの声は枯れちまったけれど
さまあたいむぶるうす おまえのギターの糸は
まだサビついちゃ いないかい

ギターを弾いてたゴンボって奴は
根っから純情なロマンチストだった
好きな女がいるんだと俺に
顔赤くしながら話してくれた
恋を失うことで人は悲しみを知り
悲しみに耐えることで人は優しさを知る
傷つきやすいアイツの心を
あたたかく包む人がきっと現れるだろう

ボーカルをやってたマサルって奴は
ガキの頃からの俺の悪友で
気が短くてケンカっぱやく
食いつきそうな目をしていつも歩いてた
村の公民館での初めてのコンサート
アイツの歌声は今も心に響いてる
16ビートのリズムのように
駆け足で生きている そんな男だった

さまあたいむぶるうす 聞こえてくるよ
オイラの声は枯れちまったけれど
さまあたいむぶるうす おまえのギターの糸は
まだサビついちゃ いないかい

曲がりくねった この世の中で
一直線に生きていた そんな奴らがいた
飲めもしない酒をあおりながら
夢を語り明かした そんな奴らがいた
街角でふと見かけたアマチュアのコンサート
丸坊主の中学生が歌ってた さまあたいむぶるうす
たどたどしいギターと汗の匂いの中に
あの日の俺たちが見えるような気がした

さまあたいむぶるうす 聞こえてくるよ
オイラの声は枯れちまったけれど
さまあたいむぶるうす おまえのギターの糸は
まだサビついちゃ いないかい

*大学時代、ひとりでライブハウスで歌い始めた頃に作った歌です。 7分を超える大作(?)で、当時のライブでは、最後にこの曲のサビを延々繰り返し、無理矢理大合唱に持っていくという力技で締めるのが、定番のパターンとなっていました。
 「中2病」という言葉がありますが、昔も今も中学生の勘違いパワーは侮れません。はじめてバンドを組んだ中2の頃。振り返ってみると、周りに迷惑かけまくりの、こっ恥ずかしい思い出ばかりなのですが、良くも悪くも、それがあったからこそ今の自分があるわけで、思春期の自由とは勘違いする自由なのだとも思います。
 中2病上等。今を生きる中学生たちも、思い切り勘違いして、はっちゃけてほしいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?