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対局中に「考える」ことの難しさを説明したい

牌効率であれ、押し引きであれ、対局中には考えることがありすぎる。それでも、勝つには正しく考える必要がある。他プレイヤーよりも正しく考えて考えて考え続けることで差がつくようになる。でも、正しく考えるとはどういうことなのだろう。

そもそも何のために考えるのかというと、良い判断をするためだ。何をもって良いとするかは勝つため、楽しむため、見せる為など、人によると思うけれど、とりあえずここでは勝つためとする。

考えるためには二つの材料が要る。それは知識情報だ。

ここで知識というのは既に自分の頭に入っているものを指す。ピンフドラ1はリーチとか、親のリーチにリャンシャンテンは押せないとか、そういったものだ。ここまで明確なセオリーでなくてもいいし、経験知でも言語化できていなくてもいい。対局前から既に自分の頭に入っているものは全て知識だ。

そして情報というのは、自分の外に存在しているものを指す。基本的には盤面にある、自分の手や点数状況、相手の河などだ。配牌を開けたり、一巡毎に河が増えたり、リーチが入ったりと対局中に情報はリアルタイムで増えていく。それを常に取得し続ける必要がある。

自分の頭にある知識とリアルタイムで取得した情報。

良い判断をするために、この二つの材料を組み合わせて脳内で比較検討することを「考える」という。

知識と情報
「判断/考える」のメカニズム


例えば、「ピンフドラ1はリーチ」という知識を持っていれば、「自分の手牌がピンフドラ1」という情報を取得できた場合、「ピンフドラ1はリーチなのでリーチ」と判断できる。

上記は単純な例なのであまりにも当たり前に見えるが、実際はより細分化した知識、例えば「子のリーチに対して良形の場合○○点以上なら押せる」のような知識をもとに、「8巡目対面の子から先制リーチ、スジが5本通っている、自分は両面2000点テンパイ、押す牌は両無筋」のような情報を取得した上で考えたりしている。(勿論実際に脳内で上記の流れをイチから丁寧に行っているとは限らない。慣れていくことで思考はショートカットできるようになる。)

ここで、どうすればより良い判断ができるかを考えてみよう。判断は考えるという行為の精度に依存する。そして考えるという行為は知識と情報を材料にして行われるのだから、知識と情報を増やす必要がある。より多くの知識と情報があれば、より細分化された比較検討=考えるという行為ができるようになる。

よって、知識と情報を増やすことでより良い判断ができるようになると言える。

では、情報を増やすためにはどうすればいいか。
実は情報の取得には限度がある。
極端にいえば親で開局時1巡目には配牌とドラという情報しか存在しない。初心者でも上級者でもこれ以上の情報を取得することはできない。

局が進むにつれて河、鳴き晒し、リーチ、手出し等情報が一気に増える。
これらの情報を適切に取得するにはどうすればいいか。
すべての盤面情報の変化を視覚で記憶できるような能力があれば、理論的には全ての情報を取得することができる。
しかし、人はそこまで注意力・記憶力があるわけではない。
人は意味のある情報以外は中々取得・記憶できないようになっている。逆に言えば、情報に意味を持たせることができれば取得も容易になる。


初めて名前や意味を知ったものが、その後世の中にやたらと存在していると感じたことはないだろうか。
例えば、コンプライアンスという言葉を知ったあと、やたらTV等でコンプライアンスという言葉を耳にしたり、ハスラーという車種を知ったあと、意外なほど街中でハスラーを見かけたり。
「齟齬」の読み方を知ったあと、やたらとこの言葉を見かけたり。

これらは別に知ったあとに偶然沢山出会う機会があったわけではない。
知る前から既に名のない背景として出会っていたのだ。
ただの背景だったそれらに名前や読み方といった意味を見出した結果、ただの背景ではなくそれそのものとして認識できるようになり、結果的に「知ったあとにやたらと出会う」という感覚をもたらしている。

つまり、情報を情報として認識するためにはそれに対する意味・知識が必要になるということだ。
そもそも意味・知識を知らないと情報に出会うことができない。

話を麻雀に戻す。

盤面に存在する情報は知識を付けないと取得できるようにならない。
これは特に河読みや手出しツモ切りでよく言われることだが、意味も分からず河を見たり手出しツモ切りを見たりしても情報にはならない。
それはただの背景として目に見えているだけで、情報にはならない。
その河が何を意味するのか、手出しだから何なのか、あらかじめ知識として入手しておくことで初めてそれらを認識できるようになる。

「4切り→安牌字牌→2切りリーチ」という河は通常より同色1が危険になりやすい。
この知識を得る前と得た後では「4切り→安全字牌→2切りリーチ」の河に出会う頻度が変わるはずだ。
勿論これは特定の河に意味を見出したから、それに気づけるようになるということだ。

考えるために必要な情報は、その情報に対する知識の有無で取得効率が大きく変わっていく。結局のところ知識が必要になる。

考えることは情報と知識の比較検討なので、単純な知識も増やしていく必要がある。

「ピンフドラ1はリーチ」しか知らないとピンフドラ2が来たときに対応ができない。
ピンフドラ2ならどうなのか、ドラ3なら?というように細分化した知識をどんどんインストールする必要がある。

知識の入手は書籍などで比較的体系化されたものをそのままインストールするのが最も手っ取り早いはずだ。
ただの暗記だと思われるかもしれないが、知識が必要なゲームでただの暗記を本当にできる人はそれだけで十分強い。
勿論それだけでは足りないので牌譜検討だったり動画学習だったり色々と試行錯誤してみると良いだろう。

知識の幅が増えると、取得した情報から比較検討が細かくできるようになる。
ピンフドラ1だからリーチという検討と、「南〇局で子で打点が〇〇点で〇巡目に待ちが○枚あるピンフドラ1、自分の持ち点は○○点で相手は・・・」といった細かい比較検討だと、比較検討の精度がかなり違う。

このように知識と情報を増やすことで考えるという行為の精度があがる。この精度の違いが実力差になっていく。

考えるという行為は、ときにある種のクリエイティビティが必要で、個性的で、オリジナリティを伴うようなもの、と思われることが多い。

けれども、少なくとも麻雀のように良い判断を下すために行う思考というのは、最終的には比較検討して一番近い条件にあったもので判断を下すという機械的なものだったりする。
機械的であるということは再現性があるということでもある。
ぜひ知識と情報を武器にこの難解なゲームと戦ってみてほしい。


参考図書

思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践

他note

座学と実戦の違い

勉強しているのに麻雀が全然分からなくなったとき

麻雀のメンタル崩壊パターンと、メンタルがミスに与える影響

youtube

水埜隈一

雀魂と牌譜検討を配信しています


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