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何切る問題はよく考えると何切る問題ではない

平面問題(自分の手牌のみの何切る問題)であれ、立体問題(自分の手牌に加え、他家の河や点数状況も踏まえた何切る問題)であれ、何切る問題は「何」切ると呼ばれてはいるものの、それを上達に活かすためには何を切るのが良いのかを当てるだけでは不十分だ。

「この状況から何を切る?」という問いに対して、「〇切る」だけで完結させてもあまり意味はない。それだと単に自分の中で1巡経験しただけに過ぎない。

結果的にその答えだけが戦術書や上級者の答えと合っていたかを比べるのもあまり意味がない。なぜ〇切りになったかの理由、ロジック部分まで合っていないと、類似場面での再現性がないからだ。即興クイズとして遊んでいるならともかく、強くなりたくて解いているなら、より深く何切る問題に付き合う必要がある。

では具体的に何切るはどう考えていけばいいのか。考え方の方向性は大きく分けて2つある。

それは「なぜ(WHY)」と「どのくらい(HOW)」だ。

これら2つを経て「何(WHAT)」が決まる。

まずは、「なぜ」について考えていく。

なぜそれを切るのか?(WHY)

「なぜそれを切るのか?」

この質問に答えようとすると、「〇切りが一番受け入れ枚数が多いから」、「○切りより△の方が最終形が良くなりやすいから」といったように、自然と選択のメリットを挙げることになる。

「自分が切った牌の理由を説明できるようになれば初心者卒業」と言われることがある。

これは(答えが正しいかは別としても)打牌選択の理由を挙げる、という基本的な姿勢が身についているからだ。

何切る問題においても、自分がそれを選んだ理由をしっかり挙げることで正しい比較・選択ができるようになる。正しい比較・選択ができるようになるというのはつまり、麻雀が上達するということだ。

ここで重要なのは、「自分が選んだ選択と、自分が選ばなかったが有力な他の選択」の選択理由(=メリット)をできるだけ多く挙げることだ。感覚的に答えを導きだしたとしても、一度丁寧に理由を挙げてみると気づきがあるだろう。

大抵の何切る問題には有力に見える選択肢が複数ある。最終的に自分が選ばなかった選択でも、その選択についてのメリットを挙げて比較することが大切になる。

一つ例を出して考えてみよう。

以下のような牌姿だ。

想定:東一局6巡目、西家ドラ北、東は安牌

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有力な選択肢は、1m、3p、7s、東あたりだ。

各打牌のメリットを挙げていこう。

1m

・受け入れと東による守備力の両立ができる

・赤で最低限の打点があるので、先制リーチに対して東で受けてから押し返しルートも結構ある

・ロスになる1mは愚形ターツにしかならないくっつきなので、スピードは東切り以外では最速

3p

・打点と守備力の両立ができる

・マンズ一気通貫の最大打点を狙える

・2m3m5s8s引きの際、余剰牌の無いイーシャンテンに取れる

・ポン材ができるので、仕掛けも想定すると7sよりテンパイ率が高い

7s

・打点と守備力の両立

・3p切りに近いが、こちらの方が良形待ちになる可能性が高く、アガリ率で勝る

・ピンズくっつきでピンフに変化しやすく、最大打点と守備力を持ったまま、リーチ効率が高い

・打点、受け入れ共に最大

各選択のメリットは以上のようになった。見た感じだと3pが一番メリットが多く、東が一番メリットが少ないように見えるが、それだけで決めていいのだろうか?

※ここでは選択のデメリットは書いていない。メリット同士、あるいはデメリット同士を比較することで正しい比較となる。打牌Aのメリットと打牌Bのデメリットを比較するようなことはしないこと。

各理由をどのくらい重視しているか?(HOW)

さて、それぞれの選択の理由を列挙したが、沢山理由があるものを選べばいいのかと言うと、勿論違う。

そもそも、「なぜそれを切るのか?」に対する「理由の個数」というのは、人によって細かさが異なる。よって、「なぜそれを切るのか?」の理由だけで結論を決めるのは早すぎる。

理由だけではなく、「各理由をどのくらい重視しているか?」を考慮しなければならない。それぞれの理由には重要度が存在する。

場合によっては「受け入れが最大」という1つの理由が、「守備力がある」「打点上昇の変化がある」という2つの理由よりも圧倒的に重要になる場面も存在する。

このように局面に応じてその理由の重要度を考慮するのが、「どのくらい?」に当たる考え方だ。

「打点」「速度」「守備力」のような要素の重要度はルールや牌姿、巡目、更には点数状況によって変化する。大抵の場合これらはトレードオフで、何かを確保しようとすると他の何かを失う。そのとき最も取りこぼせない重要な要素は何で、他の要素とどのくらいの差があるのかを意識すると良い。

牌譜検討をする際にも、上級者が選んだ選択について、どの理由をどのくらい重視しているのかを聞くことで、自分の感覚とのズレを検討することができる。

最後に「どのくらい?」に注目しながら例題を解説して終わる。

想定:東一局6巡目、ドラ西、東は安牌

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まず、この問題は東切りとそれ以外で根本的な違いがある。それは守備力の差だ。攻撃最大化であれば東切りが答えで、守備を加味しないといけない場合に初めてそれ以外の選択肢が生まれる。

そして、東一局6巡目であれば、守備の価値は高くない。よって、シンプルに東切りが正解になる。その次に1m、7s、3p、となる。

ここで大事なのは、重要度が「守備力(東)<受け入れ(3p,7s)+打点(1m)」となっている点だ。守備の重要度よりも、受け入れ+打点の重要度の方が高くなっている。

逆にいうと、仮に「守備力(東)>受け入れ(3p,7s)+打点(1m)」という状況があれば、正解は東以外になる。例えば、放銃すると2着順落ちる危険な点数状況であれば、守備の価値が高まるため1m切りが優位になるだろう。

また、打点が必要な点数状況の中盤であれば、最高打点を追いつつ後手を踏んだ際の保険として守備も維持したいだろう。打点と守備の重要度が高いのであれば受け入れ要員を減らすしかなく、7sが一気に有力になる。

なお、3pが有力になるケースはあまりない。ほぼ7sの下位互換に近い。ピンフ率が下がり平均打点が下がるからだ。ポン材は残せるので形式テンパイまで込みで考えるなら7sよりもテンパイ率は高いが、そもそもポンする可能性が低いため7sよりも弱い。

このように考えると、この何切るをパッと見て「東でいいでしょ」と軽く流すよりも、色々なことを学べるはずだ。

「なぜそれを選ぶのか?(大抵は打点、受け入れ、守備力の3要素に注目することになる)」と「各要素にどのくらい差があるのか?」を検討してから「何を切る」という答えを出すことで、自信のある答えが出せる。

もしそれで本や上級者の答えと違うのであれば、「メリットを挙げきれてない」か「各要素の差の認識が違う」ということになる。

初心者であればあるほど、WHYが足りない「メリットを挙げきれてない」ケースが増える。上級者であっても、HOWの「各要素の程度の認識が違う」ケースはよく見られる。

考え方が分からない何切るや、なぜか上級者と違う答えになる何切るに対しては、WHYとHOWに分けてどちらに原因があるのかを探ろう。修正が容易くなる。沢山のWHYを出して、何度もHOWを考えることで微差の問題に対する解像度もあがるだろう。

そうやって何切るを解いていくといつのまにか実力も上がっているはずだ。


参考にしたサイト

・麻雀何切るシミュレーター

https://pystyle.info/apps/mahjong-nanikiru-simulator/



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