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空の底、地の上で

月から産み落とされて、見離されたと感じた。宇宙の闇にぶるぶると震えた。(自由かもしれない。けれども、なんという孤独だろう)

決められた地は遠くない。めざすのは青い星。

その星の大気圏に突入するとき、燃えに燃え、すべての記憶を剥がされた。

しかし、その星に抱きとめられたとき、眩い光に包まれた。あたたかな熱を感じた。

地底の光は、透明な粒子でしかないわたしをも、見逃しはしなかった。触れえたときに熾されたのは、歓びの黄金だった。この輝きに包まれて、“わたし”は生まれた。

光輝く地球に憧れ抜いて、ここにいる。目を瞑ると、そう感じる。

けれどもそれは、わたしの願いや憧れだろうか。託されて、ここにいる。そう思うほうが自然で、そう思えることを済いと思う。

「はやく還りたい、還らせて」と、わたしは月を眺めては泣いていた。けれども月は、「これでいいんだよ。そこにいていいんだよ。生きて在る、それだけで」と、何度も何度も何度も諭した。

何度でもわたしを照らした。

空の底、地の上で、地底の光へ根を伸ばし、月の光へ手を伸ばす。そうして、わたしは、ここにいる。

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