フランス語の記事を読んでみた2

またまたいつものように、Twitterで小魚先生のツイートを見ていると、

Juge Édouard Durand : violences conjugales et parentalité

というフランス語の記事が話題になっていた。「家庭内暴力と親」というテーマで、フランスの裁判官にインタビューをした記事のようである。

前回同様、機械翻訳だと意味不明なのであるが、一旦、Google翻訳で英語にしてみると、Google翻訳は英語とフランス語の翻訳は絶妙にうまいようで、読める英語がアウトプットされてきた。そこで、またまた前回同様、全文を言ったんGoogle翻訳で英語に直した上で、日本語に翻訳してみた。

英語をざっと読んだだけでも、小魚先生が普段ツイートされている内容さながらであり、激しいデジャビュを覚えるような内容であった。やはりその方がグローバルスタンダードなわけである。以下、訳文を紹介する。もっとも、上記のような手順での翻訳であることや、私の英語力の問題もあるので、いくつか訳出が怪しいところもあるので、フランス語に詳しい方がチェックしていただけると幸いである。例によってベタ打ちなのはご容赦願いたい。

また、ただ単に訳出するだけでは芸がないので、筆者独自の解説を加えている。あくまで私見であるので、読み飛ばしていただいても一向にかまわない。

 

以下、訳文である。

 

Édouard Durandは、家庭内暴力と、家庭内暴力という文脈における子どもの権利に

大変関心を持っている。彼は、子どもを保護することは、必然的に、その母を保護することから出発すると考えている。Édouard Durandは、虐待をする親とのつながりを維持することは、必ずしも子どもの最善の利益にならないと考えている。

 

Édouard Durandとは?

Édouard Durandは、家庭内暴力や、母を守ることが子を守ることであるという書籍を出版している。Bobigny裁判所の判事である。彼は、国立児童保護委員会のメンバーである。また、危険にされされている子どもを監視する国立委員会の科学者委員でもある。

Édouard Durandは、「家庭内暴力と親、母を守ることが子を守ることである(2013)」の著者である。読むことを強く勧める。この本を読むと、家庭内暴力や、児童虐待を生み出すメカニズムについての理解が深まるし、これらの論点についてのあるべき正義や法の在り方を変えていかなければならないことがよく分かる。

中略

Édouard Durandの主張とは

家庭内暴力は、子どもの発達に深刻な影響をもたらす。Édouard Durandによると、母を保護することなくして子を保護することはできない。それゆえに、家庭内暴力の被害を受けている母を保護することが、子どもを保護することの出発点となる。

Édouard Durand曰く、虐待をする親、配偶者に暴力を振るう人には、いくつかの特徴がある。

・怒りの感情を我慢出来ない。

・共感性がない

・子どもの利益と、自分の利益や欲求を区別せず、混同する。

・影響力を行使する環境を設定することで、配偶者や子に対する支配を維持しようとする。

・何をしでかすか予測できない。いい人と、怒り、暴力を振るう人との側面を使い分ける。

・何をしでかすか分からない親は、励ましたり褒めたりしたかと思えば恥をかかせたりするので、前の行動から次の行動を予測できなくなり、子どもはとても不安な気持ちになる

 

*訳注 小魚先生は、「DV加害者は、常に機嫌が悪くなるリスクを伴っており、ご機嫌取りのために被害者は常に加害者の顔色をうかがって疲弊してしまう」とおっしゃっている。上記の特徴も、まさにそれに当てはまるものであろう。予測可能性は法治国家の基本であることが想起される。家庭内暴力は、まさに「人による支配」なのである。

 

家庭内暴力

Édouard Durandは、配偶者に暴力を振るう親、毒になる親、虐待をする親とのつながりを維持することは、必ずしも子どもの最善の利益にはならないと考えている。

「私たちは、配偶者間で起こっていることと、親子の間で起こっていることとを区別して考えがちです。あたかも、パートナーに対する暴力は家族に影響しないかのように思われていますが、これは非現実的です。これにより、子どもは家庭内暴力にさらされるという危機に置かれており、家庭内暴力を振るう者が家族に対する支配を維持することにつながっているのです。子どもと二人きりの時、そうした人は、母親を害し、その信用をおとしめ、母親について聞き出すなどして怖がらせることをします。しかしそれは好ましいことではありません。」

Le Mondeの聴き取り(2019/3)

 

*訳注 配偶者に対する暴力と、子どもとの関係を区別したがる考え方は、我が国においてもしばしば見られる。しかし、両者が密接に関わっていることが、ここでは示唆されている。後半部分は、「DVにさらされる子どもたち」でも全く同様の指摘がある。

 

家庭内暴力の目撃者としての子ども

不幸なことに、Édouard Durandによると、子どもはただ単に受動的に家庭内暴力を目撃しているわけではなく、完全な被害者とみなされなければならないという。40~60%の子どもは、直接的に、虐待をする親からの家庭内暴力の被害に遭っている。このため、虐待をする親との面会交流を維持することは、虐待をする親が、分離後も支配や暴力を維持することにつながりかねない。

法的手続、福祉において、子どもの福祉の元で合意を成立させ、そのために交渉し、あるいは話し合いが行われ、保護されるべき側の親が、虐待をする親に対して子どもを交流させるよう求められるのであれば、それは不可能を求めているにひとしく、もはや子どもを守っているとは言えない(やや訳出不正確)。「子どもの意見表明なき罪悪を変えていかなければならない理由」という記事を読んでほしい。

司法関係者は、子どもを理解することのみならず、自らが加害者の面前にいること、加害者は勿論、子どもの親であるけれども、やはり加害者であり、加害者は権力と暴力をすり込むことで家族を運営しているのだと言うことを銘記すべきである。

最後にÉdouard Durandは、配偶者間の暴力の被害者のうち、80%は母親であり、家庭内暴力の被害を受ける母親を保護することは、社会を保護することであると主張する。そして、実際上、家庭内暴力は、圧倒的に男性から女性に対する暴力であるという。Édouard Durandは、Françoise Héritierの先行研究と関連付けて、男性による支配に疑問を呈する。

家族法の歴史を少し遡ると夫の権利、父親の権利という原則に従って統治がなされていたことが分かる。1938年になってやっと、夫の権利という概念は廃止された。そして1970年と最近、ようやく父権は廃止され、親の権限という態勢に移行したのである。

家族間、家庭内暴力、女性に対する暴力、子どもに対する暴力

権限(authority)と権力(power)とは区別して考える必要がある。権力と異なり、権限というのは暴力の行使を許容せず、あらゆる手段の強制を認めない。カップルの間の暴力は、支配関係であり、暴力を振るうパートナー、しばしば男性は、妻や子どもに対する権力を確立する方法を探し求めている。

このことに気がついたときから、何故、司法は、暴力を振るわない親、子どもを守る親に対して、暴力を振るう親を理解するよう求めることができないのか分かるようになる。暴力を振るう親は、常に権力関係を行使しようと試みている。さらに、権力関係の維持のために、離別後長期間経過しても、法的手続に訴えてこれを利用しようとする。

共同養育は、両親が互いに相手を尊重し合えるときはとても良いものでしょう。しかし、この原則には例外があることを念頭に置いておく必要があります。支配力、権力を行使する加害者の場合、共同養育はあり得ません。

子どもの安全が十分に保障されていない、すなわち虐待をする親が、なお親の権限を行使することを通じて母子を支配する関係が残っている場合には、監視付面会交流を実施する余地はない(訳出不正確)。

Nouvel Observateurへの2018/1/26のインタビュー

 

2020/9/21の控訴審による昨今の進展

この事例では、父親は、2019年に、娘の面前でその母親を殺害しようとした罪で、懲役8年、保護観察5年を言い渡された。その結果、母親は、父親の親権を没収するよう求めたものの、裁判所はこれを却下した。裁判所曰く、父親との関係を断ち切ることは子どもの利益にならないとのことであった。

母親はこれに上訴して、2020年9月21日、ヴェルサイユ高等裁判所はその上訴を認容し、父親から親権を剥奪した。こうして裁判所は、娘の面前で自らのパートナーを殺そうとする者は、良き父ではないということを認識するに至った。

不幸にも、親の権限というものが、暴力的な男性を許容し、それは離別後も、元配偶者を支配しようとし、誹謗中傷し、圧迫することにつながること、そして子どもがが暴力を振るう親によって、母親に執着し、これを害するための道具として用いられることは、銘記されるべきである。

それゆえ、このヴェルサイユ高等裁判所の判断は朗報である。これが判例となることが望まれる。

この事案の詳細を知るには、Vanessa Boy-Landry in Paris Matchの記事(2020/9/25)を読むことをおすすめする。

最後に、Edouard Durand判事の考え方をより詳しく知るためには、RMCにおける2020/6/16のインタビューや、La Croixの2020/9/17の記事を読むことをおすすめする。

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