【移管記事】ICT弁護士奮闘記 プロローグ 法曹界のガラパゴス的アナログ環境

COVID-19の影響か、リモートワークやテレビ会議に注目が集まっている。私はそんなの以前から、ICTを活用した弁護士事務所を目指して日々試行錯誤を繰り返してきたのだが、ようやく周りが追いついてきた感じが・・・
しなかった。
法曹界というのはとことんアナログである。裁判所への書類の提出は、未だに対面、郵便、FAXである。書記官室には考古学の資料のごとくに紙媒体の事件記録が並んでいる。そして、どうでもいい事務連絡にやたらと電話をかけてくるのが裁判所である。以前に切手や印紙のことをぼやいたが、どうも裁判所の周りは違うときの流れで動いているらしい。
それはCOVID-19のこのご時世でもあまり変わっていない。せっかく、Microsoft Teamsを用いてWEB会議による民事訴訟の進行を進めていたのに、いざその出番かと思われたら全然使われていないのである。私もTeamsのお試し会に参加したが、なぜかログインIDをFAXで送ってくるという珍現象に遭遇した。
FAXと言えば、同じ法曹界の検察庁もFAXで連絡をよこしてくるが、検察庁にはさらに珍ルールがあり、最初にテスト送信のFAXを送って電話をかけ、届いていたら本送信をするという謎の儀式が全国的に執り行われている。テスト送信の時に間違えなくても、本送信の時に番号を押し間違えることだってあるだろうに・・・今時、メールでパスワードを送る際に2通に分けてもあまり意味がないといわれているというのに・・・
普通に考えて、裁判所や検察官とのやり取りをメールで済ませることに何の支障もないはずであるし、わざわざコピー屋を雇って事件記録をコピーするくらいなら(しかも1枚40円とか、場合によっては80円を請求されたりするから驚きである)、最初からPDFでくれよといいたいのだが、PDF?なにそれオイシイの?というくらいのノリなのではなかろうかと疑ってしまうのである。
こういうことを言うと、デジタルはセキュリティがー!!と叫ぶ人がいるのだが、そういう人に限って、パソコンのモニターに付箋でパスワードを貼り付けていたり、エレベーターや電車の中で事件記録を広げていたりするから、それはデジタルというよりあなたのセキュリティの問題でしょう、と言いたくなるものである。現に裁判所では、窓を開けたら事件記録が風で飛ばされて流出するという、いまどき少女漫画にも出てこなさそうな事件が実際に起こっている。
散々裁判所や検察庁のアナログぶりを指摘してきたが、じゃあ弁護士はどうなんだ!!と言うと、そこは察してほしいところである。
本連載は、そんなガラパゴス的アナログ環境の中で、ICTを用いて、時にヒンシュクを買いながら差別化を図ろうとするしがない弁護士のトライアルアンドエラーにしようと思っている。弁護士のアナログぶりも、問題ない(と筆者が思う)範囲でバクロしていくことにしよう。

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