織物〔詩〕

まっすぐな気持ちも
ねじくれた気持ちも
うれしい気持ちも
かなしい気持ちも
みな一緒に
一枚の布に織り込んでしまおう

選別はしない
分けることになんの意味もない
ただ毎日
一つ一つ
気持ちを織り込んでゆくのだ
あらゆる色をもった気持ちたちを

そうして出来上がる一枚の織物は
名付けることのできない色
今このときにしか見ることのできない
ただ一度きりの色
そこには
愚かな私の不揃いな足跡が
浮かび上がってくる

これらの織物を
強く輝く、太陽の光のもとにさらして
一枚、また一枚と並べてゆく

そうしてまた
この身の裡に生まれる気持ちを
一つ一つ
織り込んでゆくのだ


2023年11月7日
(2023/12/13 神戸新聞文芸・入選)

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