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美術展レビュー

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美術展・展覧会や現代アート、旅先で訪れた美術館などのレビューです。絵の「額」を見るのも好きなので、やっぱり生で鑑賞するのがいちばん。海外は額まで含めて写真が撮れるからうれしいな~
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#展覧会レビュー

オラファー・エリアソン「ときに川は橋となる」超おすすめ

オラファー・エリアソンの個展「ときに川は橋となる」がめちゃくちゃよかった……。半日休をとって平日に行ってきたんだけど、空いてる平日に行くのを全力でオススメする。全部の展示をじっくり見られたし、光のアートを独り占めできる時間もあった。 この展覧会のテーマは、気候変動やサステナブル。公式HPには、 オラファー・エリアソン(1967年生まれ)はアートを介したサステナブルな世界の実現に向けた試みで、国際的に高い評価を得てきました。本展覧会は、エリアソンの再生可能エネルギーへの関心

初アーティゾン美術館 鴻池朋子さんの展示が圧巻

都内の美術館も日時指定でぽつぽつと再開し始めたので、前から行ってみたかったアーティゾン美術館を予約。鴻池朋子さん、メアリー・カサットたち(女性印象派画家)の展示をとっても楽しみにしてました。結論、もうみんな見にいって!!鴻池さんの展示がエネルギッシュで圧巻過ぎました。 鴻池さんの作品ステキだな、と思ったのが2019年の瀬戸内芸術祭。ハンセン病療養所のある大島での展示リングワンデルングを観てからです。 1933年(昭和8年)に青松園青年団が北の山にぐるりと1周つくった全長1.

ゴッホ展すべりこみ もう今年はギリギリ鑑賞やめる!

13日で東京会期が終わってしまうゴッホ展に滑り込んできた(次は兵庫)。 わたしは毎度こんな感じで、「この展覧会行きたいな~」と手帳にメモするくせに、いつも会期終了ギリギリになって「ヤバイ、この休みを逃すともうチャンスがない」って時にようやく重い腰が上がる。 なんで観たいのに重い腰なんだろ。 飛行機使う旅にはピュッと行けるくせに、展覧会とか1時間弱の行き先にはがぜん動きがにぶる。誰かこの現象に名前をつけてくれ。 誰かと無理やり約束するしかないのかなぁ、でも展覧会は自分のペー

ゆっくりウサギや蛙を鑑賞…中之島香雪美術館で鳥獣戯画

鳥獣戯画、知ってますか。日本最古の「漫画」ともいわれています。 わたしこの鳥獣戯画に出てくる動物たちが大好きで。 めっちゃ表情豊かなんですよね。ウサギは蛙と相撲とって耳に嚙み付かれてたり、サルを追っかけてたり。口をパカッと開いてなんか蒸気?出してる蛙も、リアルなカエルの特徴とらえていてほんとかわいい。 5年前、修理後に初公開されたとき(@京都国立博物館)は、2時間並んで見たんです。その間にヘトヘトになっちゃって…。 入ってからもすし詰め状態。じっくり見たいけど止まっちゃ

将軍のヘタウマな絵「へそまがり日本美術」展

へそまがり日本美術。終わってしまう前に滑り込んできました(5月12日まで!)。 いやーとってもよかった。かなり展示替えがあったみたいだから、前期も行きたかったなぁ。 簡単に言うと、「へそまがりな感性」から日本美術を見返そう!という展示です。 <みどころ1> 日本初!「へそまがり」で美術史を俯瞰する展覧会。 中世の水墨画から現代のヘタウマ漫画まで、日本人の「へそまがりな感性」が生んだ絵画の数々を展望する初めての展覧会です。 <みどころ2> 破壊力のある作品が勢ぞろい!「お

女のひと大好き!が伝わってくるクリムト 額縁好きにもたまらん

めちゃくちゃ楽しみにしていたクリムト展。実はGW中に行ったので今更ながら振り返りを…… いやぁ本当に豪華だった。クリムトの描く女性の官能的な表情、ほれぼれしちゃう。 ポスターにもなっている<ユディトⅠ>は想像以上によかった~。 これまで写真とかでは上半身部分しか見たことがなくて、ホロフェルネスの首があんなにリアルに描かれているのは知らなかった… わたしが美術館に行く理由のひとつに「絵の額縁が見たい」があるんだけど、(その絵がどんな風に愛されているのか・大事にされているの

死の影や不在を感じさせるボルタンスキー展

9月2日までのボルタンスキー展に滑り込んできた。(会期終了間際に「うわ!もう終わる!」って慌てるクセをなんとかしたい。始まった時には覚えてるのになぁ…反省) でも、空いてる夜の時間を狙ったのがよかったのか、混雑はそれほどでもなかった。 作品のタイトルやキャプションは全く置いてなくって、会場で配られるタブロイド新聞を手に、作品を鑑賞していくスタイル。 まず最初の「咳する男」の映像作品で、こっちまで苦しくなる……かぶりものをした男が、ただただ咳き込み、血を吐くという……ボル

あいトリレビュー③名古屋市美術館 産む・生まれる、ジェンダーとは

「産む」とか「生まれる」という生物としての「生」とか、社会的な意味での性、ジェンダーとかを考えさせる展示が多かったな~という印象の名古屋市美術館エリア。 シャーレの中の刺繡のモチーフは、染色体で…入ってすぐにあるのが、シャーレのような布のオブジェが天井からつり下げられている碓井ゆいさんの「ガラスの中で」。作品タイトルの英語名は「in vitro」。医療系の論文で勉強したなぁ…と遠い目(試験管レベルの実験などはin vitroで表現されるので)。 シャーレの中に刺繡されてい

あいトリレビュー④四間道・円頓寺 重いテーマに言葉を失う

あいちトリエンナーレレビュー、ラストです。名古屋駅から歩こうと思えば歩ける……ぐらいの四間道・円頓寺エリアについて書きます。 これまでのレビューは「情の時代」に着目した作品について振り返った①アートで社会課題をとらえなおす、喜楽亭に圧倒された豊田エリア②旅館と戦争の記憶が一体化、名古屋市美術館で考えた③生まれる・産む、ジェンダーとはの3本。 四間道・円頓寺エリアは商店街や長屋、県の指定文化財がアートの舞台になっていてとても面白かった。観光や出張ついでにふらっと行けそうだっ