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ちょうど1年前のこと

【記事を書くにあたって】
基本的に瑞野は時事ネタとかセンシティブなニュースなどに関しては、noteでは話さない姿勢を取っています。が、どうしても後世に伝えたい、忘れてはいけないと思ったことは記すようにしています。


その日も今年と同じような気だるい湿気と刺さるような日差しが降り注ぐ、いい夏の日でした。こうしてこの記事を書いているだけでも、あの日のジリジリした日差しの感覚が、皮膚に戻ってくるような気がします。

私はいつも通り会社に出社し、デスクで仕事を片付けていました。難しい事務処理に眉をひそめながら、キーボードを叩きます。その合間、ふとスマホをチェックすると、Yahoo!ニュースの速報が通知欄に表示されていました。

「安倍元首相、遊説先の奈良で倒れる」

速報の段階ではまだ「銃撃された」とは断定されていませんでした。ただ、これは只事ではない事件だということだけがその文面からは伝わり、また大阪に程近い場所で起こったというのもあって、にわかにオフィスの中はざわついてました。

「どうやら撃たれたらしい」
ふと耳にしたその言葉は、
やがて本当だったと分かることになります。

午前中の仕事を切り上げてバーガーキングで昼食を取っている間にも、状況が刻々と変わっていきます。私はそれを、ネット配信の速報ニュースで追いながらただただ呆然としていました。

「銃撃と見られる」「犯人確保」
「安倍元首相ヘリで緊急搬送」
「選挙活動にもに混乱」
「夫人、奈良へ急遽移動」

次から次へと字幕スーパーで流れる信じ難い状況。まさに情報の洪水が、日本中で起きていました。その日はちょうど参院選の最終盤に当たる日で、各政党は最後の追い込みをかけて各地に大物を派遣し、演説に精を出していたのです。それを狙っての犯行、そして安倍元首相を選んだということの背景。情報は錯綜を極めていました。

なんとなく心がざわざわして落ち着かず
気を紛らわそうと思い、近くの本屋で
面白そうな本を探していました。

そういえばその日は、レジ前で本を探してるおっちゃんに「にいちゃんちょっとええか」と声をかけられ「僕店員ちゃうんすよ」って申し訳なく返したってな出来事もありました。

「ああ、すまん見間違えてもうた。堪忍やで兄ちゃん」

なんていうコテコテの関西弁。クシャッと笑うおっちゃんの笑顔にちょっと心が救われた気がして、ざらざらしていた気持ちが少しだけ落ち着きました。

そうして、1日が終わりました。


このままでよくはない。でも、どうするべきなのか明確な答えがない。そして、何もないままに日々が過ぎていく。そうしているうちに、あれからちょうど1年ですね。

もう1年経ったのかと思うと、時の流れは残酷なような、正常なような。何かが変わったと言われれば変わった気がするし、変わってないと言われればそうだなと同意するぐらい、淡々と世界は回っていきました。

でも、たった一つだけ。
「これから日本はどうなるんだろう」という
漠然と心配が僕らに付き纏っていることだけは
あの日のままな気がしています。