「ご注文はうさぎですか?」最新話の感想まとめ(まんがタイムきららMAX2024年12月号)
「すべてが、かわいい」のキャッチコピーでおなじみの、「ご注文はうさぎですか?」。本記事は、ごちうさ最新話の感想をまとめていきます。
内容の都合上、本誌のネタバレを含む文章となっています。未読の方は、あらかじめ本編に目を通してから読んでください。リアルタイムで成長していくココアたちの物語を、一緒に追いかけましょう!
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【扉絵】
今月号を迎えるにあたり、やはり一番楽しみだったのはチノ、ナツメ、エルの三人がどんな仮装で登場するか?です。チノの仮装は前々回の流れから予想できた一方で、ナツメとエルはどういう方向性で来るのか全く読めませんでした。なにぶん神沙姉妹ですから、どんな仮装がお出しされても読者は受け止める覚悟が必要です。では実際はどうだったかといえば、二人とも中華系の衣装がすごく似合っていて、驚きました。キョンシーとは王道でありながら意外性があって面白いです。衣装も本格的で、この日のためにナツメとエルが気合いを入れて準備したのが伝わってきますね。
本編のナツメとエルもキョンシーの格好をしていますが、色やデザインが扉絵とはまた別物となっています。ただし、頭に黄色いお札が貼ってあるのはどちらも一緒。このお札は調べた所によると、どうやら本来は「勅令随身保命」と書くのが正解みたいです。
道士が呪術の力で死体を操るのが目的なので、「私を守れ」的なニュアンスの文言を書くのが正しいんですね。ところが、二人のお札はなぜか「勅令"我遊"保命」となっています。「私と一緒に遊びなさい」と命令するための呪符でしょうか。本来の意味に従うならこれは道士側の命令であり、ナツメとエルは命令によって遊ばされている形になってしまいますが…。二人はきっとそこまでは考えていないでしょう。単純に、自分たちと一緒に遊んでほしいから書いたんでしょうね。
「私たちと一緒に遊んで」とは、神沙姉妹らしいお願いです。見所は衣装だけでなく、エルのいたずらっぽい表情や、ナツメの「がおー」と言いたげなポーズもかわいいです。あと二人がなんだか狛犬みたいに見えました。背景にカルーセルがありますが、あれはもしかしなくともゴーストゲーセンですよね…?
ひょっとするとゴーストゲーセンは、木組みの街の守り神が住む神聖な社だったりするのかな、と思いました。実際、今月の神沙姉妹はゴーストゲーセンを呼び寄せて、チノをその内部へ引き入れる使い魔の役割を果たしています。周囲に浮かぶあんこやティッピー、ワイルドギースのメンダコも、なんとなく使い魔っぽいです。
孤立した子供にしかその姿を捉える事ができない点も、ある意味では「となりのトトロ」っぽいな、と。ゴーストゲーセンが、木組みの街の主が住む社だったとしても、あり得ない話ではなさそうです。
いずれにせよ、神沙姉妹のハロウィン仮装でインパクトを与えつつ、幻想的な雰囲気も併せ持つ素晴らしいイラストでした。ちなみに余談ですが、フユの姿が扉絵にあるにも関わらず、本編に一度も登場していないです(ひょっとして初期の構想では、フユが登場していた…?)
【ストーリー】
チノがミラーハウスの中から迷い込んだのは、「何か」が足りない世界。そこに広がる日常の風景は木組みの街とそっくりで、一見すると元の世界と何も違いがないです。しかし、チノに対する周りの反応は確かに違和感があって、ここが元の木組みの街とは似て非なる場所である事を教えてくれます。鏡の中の世界はおそらく、「ココア不在の並行世界」。それは本編を読み進めていけば、多くの人が最終的にはたどり着く答えだと思います。しかし、当事者のチノだけでなく、読者すらもすぐにそうとは気付かないほど細かい部分がリアルで精密なのは怖いですね…。リゼシャロ千夜の異変に関しては、ココア不在の延長線上にあるのは比較的分かりやすいです。しかし、驚くべき事にチマメ隊の呼称までリセットされていました。チマメ自体はリゼが思い付いた呼称ではあるんですけど、そこに至るまでの過程にはしっかりとココアが絡んでるんですよね。マヤメグがラビハに来たのはココアの代わりを務めるためでした。そもそも、チノがマヤメグを呼んだのはココアと一緒に生活する中で、友達を家に呼ぶハードルが下がっていたからでもあります。ココアがいかに多くの人に影響を与えていたか。その存在感の高さをミラーハウスが鏡の性質で、そっくりそのまま映し出したのがあの並行世界なのかな、と思いました。
何より、一番大きな因果関係はやはり、ココアとマスターです。ココアが街にやってきて、チノが昔の笑顔を取り戻し、将来の夢を見つけた結果として、マスターは安心し、天国に行きました。マスターに魔法をかけたのがココアなら、その魔法を解き、マスターをあるべき場所へ帰したのもまた、ココアなんですよね。ココアの存在とマスターの消失は、遠縁ながらも確かな因果律でつながっていると言えます。だから、「ココアのいる世界」を選べば、「おじいちゃんのいる世界」は消えてしまう。逆に今の世界を選べば、ココアのいる世界には永遠に帰れない。そして決定を下したら最後、もう後戻りはできない現実を、チノは多分察したんじゃないでしょうか。チノが「選ばなきゃいけないんですか?」と言ったのは、きっとそういう事なんだと思いす。
ココアとおじいちゃんのどちらが大切か?なんて、そんなの選べる訳がないですよ。チノにとっては二人とも大切な、かけがえのない存在であるのは今さら言うまでもありません。二人が笑いながら生きている世界こそがチノの一番の望みであり、それ以外の世界なんて考えうるはずもないでしょう。現実世界でチノがおじいちゃんの魂の消失を知ったとき、チノはココアが気付くまで、たった一人で涙していました。だからチノの選択は「どちらが大切か?」ではなく、「チノが挫けなかった」その事実こそが大事なのだと思います。そう、チノは厳しい選択に涙しながらも、決して挫けなかったんです。
ちなみにこれは完全に私見ですが、チノはパンの香りがしたとき、ココアの存在と同時にSOSも感じ取ったんだと思います。最後のコマで「私が忘れるわけないじゃないですか」ってチノが言いますよね?あの一言はココアがチノに何かしらのメッセージを伝えていなければ出てこない言葉です。ココアがずっと胸中に隠してきた「忘れてほしくない」を知ったから、チノはああいう風に答えを返したのではないでしょうか。だから走り出したときのチノはもう居ても立ってもいられなくて、ただ必死でココアを探す他になかった。そんな風にも受け取れます。そして、チノの方もただ街を探し回るばかりではなく、無意識のうちにリプラビ世界に干渉していました。先月号にて、ココアのポケットにチノが手を突っ込むシーンがありましたが、あれが何よりの証拠です。
やっぱり、あの行動は少し唐突だったんですよね。いくら小腹が空いた時用の食べ物を確認するためとはいえ、人のポケットにいきなり手を突っ込むのは常識では考えにくいです。あの言動もココアの持ち物に、ココアにとって一番大切な「思い出」があると知っての行動と考えれば、理解できるんですよね。だから少々不自然だとしてもココアのポケットに手を入れて、飴の存在に気付かせる必要があったって話ではないかと。
荒廃した異世界で、仲良しのみんながいない世界を知り、やっぱり自分はみんなから忘れてほしくないと手を伸ばしたココア。鏡の中の並行世界で、ココアと過ごした記憶を思い出し、「忘れるわけがない」と手を伸ばしたチノ。二人の指先が、触れ合う瞬間を見た気がします。
そういうわけで今月号も前回に引き続き、ココチノ回でした。なかなか本音を話さない姉妹ですが、ここにきてようやくほんの少しだけ本質的な部分で二人が歩み寄れたと思うと、嬉しいです。
あとは並行世界を解くカギが、「ココアとチノが幼い頃に最初に出会った場所」に設定されていたのも素敵だと思いました。チノが選んだ世界、そして私たち読者が愛してきたごちうさは、全てあのトラムから分岐した世界線なのかもしれないですね。ナツメとエルが張り切っているので、来月こそはみんなで楽しいハロウィンパーティーを迎えたい所です。あとはユラ問題のみ。来月号で解決なるか…!?