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ごちうさ最新話の見どころまとめ(まんがタイムきららMAX2023年1月号)

「ご注文はうさぎですか?」(以下、ごちうさ)にはたくさんの魅力がありますが、いざ人に説明しようとすると、何から話せばいいか迷いますよね。

キャラクターの成長?ストーリーの伏線?自分の中では素晴らしいものだと分かっているつもりでも、それを言葉にしようとすると、案外難しいものです。

まんがタイムきららMAXの最新話を読むたびに、この作品の奥の深さを実感する自分がいます。

特に、今月のごちうさは大きな転換点を迎えました。人によっては、胸にぽっかりと穴が空いてしまったような寂しさを感じている方もいると思います。

ですが、今月のお話も、面白いところはたくさんあります。この記事は、そんなファンが道を見失うことがないように、今月のお話を寂しいだけでは絶対に終わらせないために、あえて「あの話」以外の部分に焦点を絞り、まとめたものとなっています。

さて、今月もごちうさの最新話が公開されました!

お話に関わる重要なシーンをピックアップしていきますので、よろしければ最後までお付き合いください。

注意:本記事は、まんがタイムきららMAX2023年1月号掲載のごちうさに関するネタバレを含みます。

■ 魔女のココアちゃんと幼いチノちゃんが登場!でもこのイラスト、どこかで見たような…?

まんがタイムきららMAX2023年1月号

白い衣装に身を包んだ、魔女の恰好のココアちゃん。両手には幼いチノちゃんを抱き、その左頬を人差し指で軽くつついています。一方のチノちゃんも、ココアちゃんの右側の頬を指でつまんでおり、なんだかとても微笑ましい気持ちになるイラストですね。二人の親密さがよく現れた一枚だと思います。

ココアちゃんの服は、おそらくサキさんの衣装と同一のものでしょう。今までにもココアちゃんが魔女の恰好をしたことはありますが、サキさんと同じ白い衣装に身を包んだのは、おそらく初です。

サキさんといえば、ごちうさの起点である「はじまりの魔法使い」なだけに、この姿を見たときは衝撃を受けました。

帽子の奥にはまるで四次元空間のように、広がる夜空。後ろのモニュメントには、よく見ると金色の列車が走っていて、帽子の形に広がる星空と相まって、まるで銀河鉄道です。

銀河鉄道といえば、きらマの最新話を追っている方なら、多かれ少なかれ思うところはあるのではないでしょうか。

今月のごちうさは…と、この話はここまでにしておきましょう。それより、今月の扉絵は一目見た瞬間にデジャブを感じました。

というのも、1年前の扉絵と対称的になっているんですよね。2022年1月号では幼いココアちゃんを今のチノちゃんが抱く、という構図になっていました。

反対に、今月の扉絵は幼いチノちゃんを今のココアちゃんが抱いています。二人の年齢設定と役割が逆転しているのがわかると思います。

まんがタイムきららMAX2022年1月号

さらには本編を振り返ると、こちらも実は両者が互いにシンメトリーになっているんですよ。1月号がココアちゃんの夢から始まったのに対して、今月のお話はチノちゃんの夢から始まります。

どちらのお話も最終的には、「ココチノが仲良くラビットハウスに帰る」という方向に収束しますが、「誰の夢から始まるか?」が明確に異なっているというわけです。

このように、今月のお話は明らかに1月号を意識しているため、扉絵も本編も既視感がありました。

どうして1月号がオマージュの対象に選ばれたのかというと、それは11巻の収録話数と無関係ではないでしょう。おそらくですが、今月のお話は単行本11巻の最終話になります。

ごちうさのコミックは1冊13話構成になることが多いです。今月のお話はちょうど11巻の13話目に当たるため、単行本への収録もここで区切られる可能性が高い、というわけです。

そして話の掲載順が時系列通りになるとすれば、11巻の最初に来るのは、2022年1月号。つまり今月と1月号は、11巻における立ち位置が「始まり」と「終わり」の関係に当たるため、扉絵も本編も対になっているのではないでしょうか。

まだ実際に11巻が発売されたわけではないので、断言はできませんが、可能性は高いと思います。

いずれにしても、今月の扉絵は1月号との対比が美しいイラストでした。ちなみにごちうさは他にも対になっている扉絵がいくつかあるので、時間があったら探してみてください。

■ 時を超える物語。ホットベーカリーと、ラビットハウスの「共演」

まんがタイムきららMAX2023年1月号

本編に入る前に、前回のお話を軽く振り返っておきましょう。前回のお話は、ホットベーカリーの「外」が大きなテーマでした。

光に満ちた、優しい街。おおらかで、のんびりした人々。保登姉妹の街はまさしく、二人が育った場所だと大いに納得できるものでした。街の風景と人々が、二人の本質的な温かさを育んだのではないかという話は、noteで語った通りです。二人はこの街に生まれたからこそ、今の性格があるのだと知りました。

対して今月のお話は、ホットベーカリーが主な舞台です。モカ姉とココアちゃんは相変わらず息の合った姉妹プレー。しかし、今回ホットベーカリーを切り盛りするのは、二人だけじゃありません。そう、今回は何とチノちゃんがホットベーカリーのお手伝い!

まんがタイムきららMAX2023年1月号

このチノちゃん、すごく可愛いですよね。パーソナルカラーと同じ青色の制服がよく似合ってます。

飾り気のないシンプルな服装がチノちゃんの清楚さとマッチしててGOOD。スカートの裾をつまむ仕草も、女の子らしくて魅力的です。

おしゃれで可愛いラビットハウスの制服も良いものですが、簡素なエプロン姿もまた、グッと来るものがありますね。そして、今回はラビットハウスとホットベーカリーのコラボが実現したと言えるのではないかと思います。

というのも、チノちゃんがモカ姉の代わりに「サプライズブレンド」を淹れたからです。ホットベーカリーはラビットハウスの影響で、コーヒーを出すことにした模様。しかし、モカ姉が淹れるコーヒーは絶望的に味がマズく、ちょこさんに「泥水」と言わしめるほどの特級呪物。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

なんでもそつなくこなす多才なモカ姉ではありますが、ことコーヒーに関しては、珍しく苦戦しているみたいです。売り物として出すからにはそれなりのクオリティになったのかと思えば、ちょこさん曰く「ようやく泥水から白湯になった程度」。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

焦ったちょこさんは急いでメニューの看板を外しますが、時すでに遅し。テラスの女性客から、サプライズブレンドの注文が入ってしまいます。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

サプライズブレンド。それは、モカ姉が感性の赴くままにコーヒーを混ぜるという、約束された地獄。

当たり前ですが、そんなものをお客さんに出すわけにはいかないので、代わりにチノちゃんがコーヒーを淹れることになります。チノちゃんが淹れるコーヒーはもちろん、モカ姉の泥水とは違います。それどころか、チノちゃんはホットベーカリーのパンの味に寄せたブレンドを提供。自身は決して目立つことなく、主役を引き立てるそのコーヒーは、健気で優しいチノちゃんだからこそ出来る最高の一杯です。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

かくして、ブレンドは大好評。偶然その場に居合わせたチノちゃんの予想外の大活躍により、ホットベーカリーはクレームの危機を免れたのでした。

つまり今月のお話は、ラビットハウスのコーヒーとホットベーカリーのパンが共演した、いわば奇跡の回だったわけです。

うさちょこの二人は、この光景を想像したでしょうか。おそらくですが、二人とも一度はお互いの店とコラボする夢を見たと思うんです。

ひょっとしたら学生時代の楽しい会話の最中に。あるいは家庭を持ってから、互いの近況を報告し合うちょっとした通話の最中に、「いつかコラボできたらいいね」と、話した機会が全くのゼロだったとは思えません。

それは、夢を見たことすらも忘れてしまうほどの過去。二人の距離はあまりにも物理的に離れすぎているがゆえに、そして二人とも生活が非常に忙しかったがゆえに、夢は実現しなかった。

それが今、時を超えて実現したのかと思うと、ロマンがありますし、ごちうさはやはり「継承」の物語だと思いますね。

チノちゃんがマスターのコーヒーを受け継ぎ、木組みの街から外に出て、自分の世界を広げていこうと決意したからこそ、今があるわけですから。

■ リゼちゃんとマメはどうして三人だと料理を失敗するのか

まんがタイムきららMAX2023年1月号

一方その頃、ラビットハウスでは少々問題が起きていました。ココチノが庭で子供の遊び相手をしていると、着信が。

電話越しのリゼちゃん曰く、「このままでは私たちは悲しき怪物を生み出し続けるだろう…」。ラビットハウスに一体何が…!?と詳しく話を聞いてみれば、要はティッピーパンの焼き方が分からなくて、困っているみたいです。ティッピーパンが原作に登場したのは久しぶりですね。

記憶が正しければ、1巻4話に登場したのが、最初で最後です。「ティッピーは焼いてはいけません」というタイトルのそのお話は、ラビットハウスの看板メニューを開発しよう!というものでした。あずき、梅、海苔、いくら、納豆と食欲が減退するラインナップの中、看板メニューの座を見事勝ち取ったのが、ティッピーパンでしたね。

リゼちゃんとマメが作った今回のティッピーパンを見てみると、なるほど確かに、数体が融合して、一つの塊になってます。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

正規品としてお客さんに出せないのは当然として、失敗作として売り出すにしても、切り離すのが大変そうです。結局、怪物はみんなで仲良く食べることにした模様。

それにしても、「ミストラル」が料理を失敗するのは不思議ですね。ミストラルは、リゼ・マヤ・メグの三人によるユニット名です。

三人とも、決して料理が下手というわけではないじゃないですか。リゼちゃんは特にラビットハウスの調理を担当しているわけで。

料理が得意なばかりか、ココチノの苦手な食材や常連さんの好みまでしっかり把握しているのは、原作7巻の通りです。一方、マヤメグが料理する機会はそれほど多くありませんが、原作9巻にシャロちゃんともやし料理を作るシーンがあります。

出来上がったレシピはとても美味しそうに出来ていました。マヤメグも、決して料理が苦手というわけではないでしょう。にもかかわらず、ミストラルになると、なぜか失敗してしまう。

この法則は今に始まった話というわけではなく、「ご注文はうさぎですか?? Selection of April Fools' Day」の収録曲「ショコらびゅサバイバル♪」の中では、砂糖と塩を間違えてガトーショコラを失敗してしまいます。

また、「ご注文はうさぎですか?~Sing For You~」主題歌「しんがーそんぐぱやぽやメロディー」のカップリング曲、「ギミ×デミぱーりないっ♪」では、タマネギが足りずにデミグラスソースが作れない!という事態に。

どういうわけか三人が組むと必ず何かトラブルが起きて、作りたいものが作れないんですよね。

呪いなのか何なのか。とにかく、ミストラルの失敗の法則はごちうさの中でも割と不思議なミステリーの一つだと思います。

■ チノちゃんが目指す喫茶店

まんがタイムきららMAX2023年1月号

最後になりますが、チノちゃんの「夢」について考えていきたいと思います。幼いチノちゃんがラテアートに描いたのは、「おっきくなったらなりたいもの」。チノちゃんの目標は言うまでもなく、おじいちゃんの後を継ぐことですが、小さい頃からチノちゃんの目にはおじいちゃんの姿が素敵なものとして映っていたようです。一生懸命ラテアートを描く姿が微笑ましいですね。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

今でもその思いは変わっておらず、チノちゃんの夢は一貫して、マスターの喫茶店を守ることです。しかし今回、必ずしもそれが夢の全てではないことが、チノちゃんの言葉で分かります。チノちゃんはマスターの後を継ぎつつ、「自分なりの喫茶店」を持ちたいとも考えているようです。

まず語るべきは、チノちゃんがココアちゃんと同じ成長を辿っていること。かつてココアちゃんは、モカ姉の背中をずっと追いかけていました。

しかし、背中を追うだけでは隣に立てないと気付いたココアちゃんは、モカ姉と対等になるために、自分だけの道を探し始めます。

悩んだ末に、ココアちゃんは「都会でのパン修行」を選びました。それは、かつてモカ姉が選ばなかった道です。モカ姉とは違う場所でパンの道を極めることで、「姉の背中を追う自分」から抜け出せると、ココアちゃんは考えたのです。

今回のチノちゃんも、自分なりの喫茶店をやりたい意思に気付きました。そしてチノちゃんもまた、マスターという憧れの人の背中を追い続けていた者の一人です。誰かの背中を追う中で、自分だけの道を見つける。これは、二人の最も大きな共通項なのではないかと思います。

やっぱりココチノは、姉妹ですね。こういう人生の指針めいたものがしっかり被ってくるあたり、二人は紛れもなく姉妹だと思います。

ところで、チノちゃんが言う「私なりの喫茶店」って何でしょう?

まんがタイムきららMAX2023年1月号

この夢はまだチノちゃんの中で「漠然としている」そうですが、それはあくまで解像度が低いだけだと僕は思っています。

すなわち、言葉で表現するのがまだ難しいというだけで、チノちゃんの夢はすでに確かな実体を持っている、ということです。そう考える理由は最近のラビットハウスが明らかに一つの方向性を持って進化しているから。

この進化を端的に物語るエピソードが一つあります。2022年5月号のごちうさを思い出してください。

リゼちゃんが言うには、ラビットハウスの客層が少し変わりました。以前よりも子連れのお客さんが来店するようになったみたいです。幼い子でも楽しめるような可愛い食器を買うために、リゼちゃんはシャロちゃんを誘って、街の食器店に出かけます。

まんがタイムきららMAX2022年5月号

チノちゃん、実はこの姿勢に賛同しているんですよね。可愛い食器を置くのはリゼちゃん一人で決めたことではなく、チノちゃん、そしておそらくココアちゃんも含めた三人で話し合った結果です。

つまり、チノちゃんはお客さんに合わせて、「変化する喫茶店」をやりたいわけです。5月号では食器の変化が話題になっていましたが、これは何も食器だけに限った話ではありません。ホットベーカリーのパンに合わせてブレンドを変えた今月号。そして過去の話を見れば、凛ちゃんさんのために苦手な人でも飲みやすいコーヒーを淹れたこともありました。「変化する喫茶店」はつまり、コーヒーの味も含めて変わる、ということです。

ご注文はうさぎですか?6/Koi

では喫茶店のあらゆる要素を何でもかんでもコロコロ変えるのがチノちゃんの理想像なのでしょうか。それは違います。なぜなら、チノちゃんは変わっていくことの寂しさも知っているからです。

また5月号の話に戻りますが、この回はシャロちゃんが珍しくネガティブな感情を吐露する話でもあります。大人になっていく先輩が寂しい。大好きな先輩に、置き去りにされたくない。冒頭でシャロちゃんが何度も何度も自分の髪を直していたのは、大人になっていくリゼ先輩の隣を歩いても恥ずかしくない自分でありたいという、必死さの表れでした。

まんがタイムきららMAX2022年5月号

限界を迎えたコップの縁から水が零れ出すように、シャロちゃんの寂しさが堰を切って溢れるシーンがあります。

そんなシャロちゃんを前にして、リゼちゃんはある作戦を考えます。それは、シャロちゃんをいつものラビットハウスに連れていくこと。

大学生になったリゼちゃんは、進学を機に、髪型を変えました。しかし、「子供のウケが良い」というリゼちゃんらしい理由から、彼女はバイト中だけはツインテールを継続しています。

ツインテールはシャロちゃんが大事な先輩と過ごした日々の記憶。かけがえのない思い出の結晶と言っても、過言ではありません。だから、リゼちゃんは悲しむシャロちゃんをラビットハウスに招待しました。移りゆく季節の中にも、変わらない景色があることを見せるために。シャロちゃんにとって、ラビットハウスはリゼ先輩との思い出が残っている唯一の場所だったんです。

まんがタイムきららMAX2022年5月号

変化とは、決して無条件で喜んでいいものではないんです。なぜならそれは、変わらないことを願う人たちを裏切るのと同義だからです。

チノちゃんはこのことを、自身の体験を通して前から知っていました。原作7巻最終話。新しい店が少しずつ増えていく見慣れた街の景色を見て、チノちゃんはこんな言葉を残しています。

「でも少し寂しいですね」「これからどんどん環境が変わっていって」「自分も自分でなくなってしまうような」

変化を望む人がいる。でも、変わってほしくない人もいる。だったらもう、一つ一つ選んでいくしかないじゃないですか。

変化することも、変わらないことも、どちらかのスタンスをずっと永遠に取り続けていいとしたら、きっと楽です。でもそれは、一方の誰かを必ず裏切っていくことになる。優しいチノちゃんは、そんな安易で楽な道は絶対に行きません。何を変え、何を残すのか。それらをしっかり自分の意思で丁寧に丁寧に選んでいくことこそがチノちゃんの道であり、哲学なんです。

つまり、こういうことです。チノちゃんは、お客さんに合わせて変わる喫茶店も、おじいちゃんから受け継いだ変わらない喫茶店も、どちらもやりたい。それらは決して両立不能な対立概念などではなく、健気で誠実なチノちゃんだからこそできる、新しい「強欲」の道。

実際、5月号のラビットハウスはまさにこの方向に進化していて、変化するものとして「食器」が、変わらないものとしてリゼちゃんの「ツインテール」が描かれていました。「変わっていくけど変わらない場所」というシャロちゃんの印象的な言葉も、ラビットハウスの未来の姿を端的に表しているようです。

奇しくもそれは、コーヒーの豆を厳選するのに似ています。変わっていくものの中から、変わってほしくないものを残すこと。それが、チノちゃんのやりたい真の喫茶店なのではないでしょうか。

まんがタイムきららMAX2023年1月号

夢の喫茶店は、いまや眠りから目を覚ましました。今後は、この夢がどんどん具体性を帯びていくことでしょう。マスターのいない世界で。チノちゃんが自分の足で歩く、自分だけの、道の先で。

■ おわりに

ご注文はうさぎですか?/Koi

さて今回は、ホットベーカリーとラビットハウスの共演や、ミストラルの謎、そしてチノちゃん新しいの夢の展望が気になる回でした。いかがでしたか?

ここでご紹介したものは、あくまで一個人の解釈です。本記事を手がかりに、みなさんも自分なりの解釈を広げてみてください。

またね!

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