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マーガレットとご主人の底抜け珍道中/望郷篇


本日はこれにします。
坂田靖子さんの漫画、上下巻の下巻。


イギリスに暮らすマーガレットとご主人のタルカム夫妻。
ご主人は普通の勤め人で趣味はガーデニング。でも、このマーガレット奥さん、クセがすごい。


超のつく旅行好きで、思い立ったら旦那さんとでも一人でも、地球どこにでも直行。旅ばかりでなく市内ミステリーツアーだの古代遺跡だの昆虫だのなんにでも興味を示す。


ご主人は振り回されながらも、いつも二人はなんだか仲良し、しあわせーというほのぼの一話完結の宝石箱。


こんなふうな夫婦になりたいな、と思って、夫T兄に貸したことがある。


T兄は、たいへん驚いたようすで、「恐竜って一億六千万年も生きてたの?じゃあ地球っていつできたの?」
と、言った。


「46億かー。俺らなんか一瞬しか生きられないんだね。大事に生きないといけないなあ。
ねこ子の持ってる本て、イガイガぎすぎすしたもんがないんだね」


マーガレットは好奇心旺盛で気まぐれ。誰にでもおそれを持たず笑いかけ話しかける。
それが(旦那さんにとっては)トラブルのもとになったりハラハラのもとになったりするが、彼女が起こす行動はしばしば夫を喜ばせようという可愛いたくらみで、旦那さんは少しでも疑った自分をあとで恥じてこっそり反省するというオチも愛らしい。


もろ手をあげて人を無邪気に信じ切り、どんなトラブルも発見や思索や冒険のタネに変えて楽しんでしまうマーガレット。
いつもダイエットしなきゃと嘆く軽いメタボの旦那さんをからかいつつ、つい美味しいパイを焼いてしまう。料理も美味しそうだ。ゲームパイ、レモンタルト、肉や豆を入れて煮るプディングにクリスマスプディング、桜のケーキ、ウェルシュラビット、おだんごのシチュー、ニシンの燻製。


これじゃダイエットも禁酒も恋もままならない。悩めるシャイな中年心。


マーガレットは先祖返りなのだ。
ようこそ、あなたが好きですよ。まあこれはなあに?とはじめから笑いかける素朴さ、疑わないという素直さ、すこやかさ。


心がすこやかな人は、体もすこやかで、たいてい美しくてみんなにモテモテ。で、そのことに気づいてすらいない。美しくなろうとがんばる必要すらない。だってみんなが彼女を好きだもの。
これは最強。


だから、楽しみながら「強さ」を知るために、この本をよく手に取る。


どんなに頭が良くても力が強くても顔がよくても金持ちでも、なんのチャンピオンだって、優しくすなおに笑う可愛いひとにはまず勝てない。


つまりマーガレットは、霊長類最強のしあわせなひとなんですよ。きちんと考えるけどぜんぜん悩まないしね。


#読書の秋2021

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