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怪談水宮チャンネル⑦

冷えるねー❗️こんな時はおでん🍢に熱燗、怪談だよね。

①妖怪たち

精神科に措置で一回、医療保護で三回、任意で一回入院した。意味はググってちょん。

で、その精神科の隔離病棟の中でもさらに恐れられている通称「保護室」「ガッチャン部屋」などと呼ばれる独房がある。
別に犯罪者ではないが、自傷他害のおそれのある患者はそこへ一時的に入れられる。ひどく暴れていたりすれば全身グルグル巻き&おむつ。窓はなく、あっても外は見られず、便器とトイレットペーパーひとつにベッドマット以外何もない。本当にそれだけ。ボールペン一本すら所持を許されない。ナースコースは、無い。

そこに入れられた時のこと。
ただでさえ恐慌状態の私は、食事を運び入れられる以外決してドアを開けられることのない独房で、おかしなものを見た。
部屋の隅に、顔のヒョロ長い、体の細長い、変な江戸時代の筒っぽみたいな絣の着物を着たのっぺらぼうのようなものが、ぼうっと、浮いている。見た途端、顔もないのに邪悪なものだと分かった。
震え上がる私の上に、天井からあおぐろい蛇がどさどさと降ってきた。私は絶叫した。
恐怖や絶望が生み出した幻、としても、もう二度とあそこへは戻りたくない。


②壁の巨大な天使

その数日後。どのくらいの日数そこに入れられていたのかは分からない。そういう感覚も失われるからだ。
ある朝、壁に巨大な十字架と、白い大きな天使が浮かび上がった。ガブリエル、と直感した。
キリスト教には全くゆかりがない。それも幻としても、美しく、有り難く思った。


③金の池

そこへ入れられる直前。私は衰弱しきって救急搬送されたのだ。
原因は分からないが、家族が気づいた時には痩せ細り、ある日出かけたと思ったら泥だらけで帰宅し、そのまま昏倒したという。

私はいつのまにか、春のように暖かく心地よい、巨大な金色の池のほとりに一人立ち尽くしていた。水面も空も地も金色。向こう岸にはシルエットで、五重塔が見えた。瞬間、
「ああ、ここは帝釈天さまのお池なんだ。だからもう大丈夫だ」となぜか思った(後日、友人と柴又帝釈天さまへお礼に行った。初めて行ったがほんとに池があり驚いた。夢とは違ったが)。
ふと、向こうからつがいの水鳥が泳いでくる。
孔雀の尾羽を取って、全身金色にしたようなやつだ。
二羽は私の目の前へ来ると、長い首でさかんに池の水をすくうような動作をしてみせる。
「なに?この水を飲めってこと?」
で、私はひざまずき、池の水を飲んだ。
砂漠でさまよって干からび死ぬ寸前に渡されるリッターのポカリ。ネクタル。ソーマ。アムリタ。なんでもいい。ともかくそういうものだった。何リットルでも飲めた。味も覚えている。体ではなく魂に染み入るような、極上の養分。
(これ飲んだら帰れってことか。まだやることが残ってるらしい)
そして目覚めた私を、世話してくれながらナースがめちゃめちゃ叱っていた。
「あなた死ぬとこだったのよ❗️」


④不死鳥なあかんぼ

それ以外にも何遍か死ぬ目には遭っているが、最初は生後八ヶ月という。
私は斜頸で、親が首のマッサージに連れて行った。
マッサージをされていた赤ん坊の私は、ふと息をしなくなった。みるみる紙のように白く、冷たくなっていく私を親は車をぶっ飛ばして病院に連れて行った。運悪く日曜日。どこも閉まっていたが、すんでの所で蘇生措置を受けることができた。生まれてすぐあっちへ還ってしまう所だった。

私はそうして何度も戻ってきた。
ここでターミネーターのテーマ入れてね。


⑤同じバッタ

受験勉強をしていた夜、自室の観葉植物の鉢植えに、ショウリョウバッタ(精霊蝗虫)が止まっていた。私は捕まえて、そっと外へ逃した。翌晩、またいる。逃したのと同じやつだ…ある一本の脚が欠けている。逃しても逃しても、その同じ個体は毎晩私の部屋をいつの間にか訪っているのだった。


⑥割れたパワーストーン

昔、パワーストーンに凝っていたことがある。なんの、お金がないから宝石なんか手が出ないのと、数百円でも綺麗だと思ったので。それに神秘的なアレもいいじゃん?
クリソコラ、というのが私の誕生月のものらしかった。
ジェムショップでそれと、サンストーンとかいったか、きらめくオレンジ色の小石を買った。
オレンジ色のは心臓を守るとか。私は何度目かの入院の際、ブラの左胸にそれを入れた。
べつに病院では普通に過ごし、戻って驚いた。
大事に扱っていたはずのサンストーンも、部屋の机上に置いてあっただけのクリソコラも、割れてしまっていた。身代わり、という言葉が頭に浮かんだ。




⑦鳳凰

最初の夫を看取った時。もうナースも来ない。ご実家の家族は遠方で間に合わない。
ふいに、瀕死の彼の上の空間が宇宙空間みたいになった。
そこに、浮かぶように羽ばたく大きな鳥がいた。静かだった。
五色の羽根。そのすがた。
私は泣くことすら出来なかった。
「あなたが連れて行くんだね。どうか。ゆっくり連れて行ってあげて。お願い」
やがて鳥は消え、夫の鼓動も止まった。


⑧怪談パンチドランカー

母が頭を洗っていると、「シャワーの音が校長先生、校長先生と聞こえたの」と言う。母は「ほら、父さん(私の祖父)むかし校長先生だったからかしら」
私「ママ。その怪談ダメだよ。オチがついてる」
怪談を聞き過ぎ体験し過ぎて、なまじなやつではもうビクともしない水宮ではあった。


⑨夢百夜

一、虹の織物

夢の中に、目にも彩な虹の錦の織物が現れた。「心の中の虹を大切にしよう」と、なぜか思った。


二、猫がついて来る

森の小道のような所を歩いていると、可愛い小さな猫がついて来る。
のちに、とても仲良くなった野良猫に出会った。草木の繁る道で。彼女は小さくて、とても可愛い猫だった。


三、炎の海

炎の海にいる。焼け死んでしまう。緊迫した私を見つめる、炎の向こうの、こわい様子の神さま?が居た。そして、
「越えて来い❗️」と怒鳴った。私はなにも考えずに炎の中へ飛び込んで行った。これも後に訪れる災難をなぎ払って今は笑っている状況を予知したものか、本当にそんな神さまがいるのか、定かではないが。


四、パネルクイズ

昔テレビのクイズ番組で見たような、小型パネルが沢山並んでいる番組に出演している。回答者は私一人、しかも周りが暗闇なのが妙だ。
パネルの中にいくつか選択肢があり、その中に「女々しさ」というのがあった。私はそれを選ばなかった。暗闇の中に声が響いた。
「正解」。
このように、日頃使わないとか、その時は意味の分からない言葉が出てくることがしばしばあった。起きて寝ぼけまなこでメモって、あとで調べるとその時直面してた問題に対する最良のヒントだったり、自分に欠けている要素だったりしたことが何度もあった。



➉帰り花

銀座でよく出ていたオフ会の帰り、フランジパニ(プルメリア)の花のよく出来た髪飾りを拾った。
通行人に「誰か落とされましたよー」と呼びかけても誰も振り向かず、落とし物係を探したが広大な銀座駅は詳しくなくて結局見つからず、ポケットに入れて持ち帰った。
フランジパニの花を私はとても愛していた。香水を使っていたこともあるし、鉢で咲かせたこともある。バリ島に行ってから、運命の花のように愛してきた。あのバニラの色も、あまい香りも。
髪飾りは本物そっくりで、私はこれも愛した。
ところが、(今はラブラブだけど)今の夫と暮らし始めた頃の様々なトラブルの日々の中、出かけた先で何度も落としてしまった。うっかりしていたのだろう。
落ち込んでいると、後日なぜかとんでもない所に落ちているのを拾った。少なくとも二度は外で。
車に轢かれた痕さえあったが、大事に洗ってケアしたら、なんと綺麗に直っているではないか。
「悪かったね。もう失くさない。ごめんね」
花は私のアクセサリーを入れる器を飾り、たまに私の髪も飾ってくれる。

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