『仮面ライダーリバイス』の完結に寄せて ~あるいはキングカズに塗り潰されてしまう一年の物語について

8月28日『仮面ライダーリバイス』が終わった。
仮面ライダー生誕50周年記念作品の一つとして発表され、「一人で二人の仮面ライダー」「悪魔と契約して変身する」「家族×仮面ライダー」など興味をそそられる要素が数多く盛り込まれた本作であるが、丸一年間も見続けてきた感想は「この一年間は一体何だったんだ……」に尽きる。
何だかんだ言いながらも「一年間」という長い旅に付き合う日々を繰り返している人生を過ごしてきたが、『仮面ライダーリバイス』を見てきたこの一年ほど全身の力が抜ける一年はなかった。
手に汗握る展開も、胸を熱くするような展開も皆無だった。心を動かされた瞬間は「今回の脚本、数行前に書いた自分の文章を読めてないのでは?」と感じる展開が来た瞬間と、声優・井上和彦の無駄遣いとしか思えない黒幕の格のなさを見た時ぐらいだ。
嘘だ。面白くなりそうな部分をスピンオフ作品送りして、そのスピンオフ作品の最期を飾るエピソードをTVシリーズでやる適当さ加減には考えが分からなくて怖かった。

シナリオ面での穴だらけの酷道っぷりが目につくが、アクション面でも見るところが少なかった。
序盤こそ目新しさとレジェンドライダー要素で見れていたが、話が進むにつれて新鮮さと共に、幹部級などの強敵達が雑に失われていく。おかげで終盤に残っている強敵と言えるのは一人だけである。話の都合上倒させるわけにもいかないので、仮面ライダー達が戦うのは量産型怪人ばかりである。主役ライダーであるリバイとバイスの最強フォームに至っては初戦が量産型怪人だ。設定では確かに最強だし、脚本上も魅力を盛った説明がされているのだが、実際にやっていることは雑兵狩りなのでアクションが全く面白くない。
こうした様子が中盤から終盤にかけて詰め込まれているので本当に見るところがなかった。面白かったのは途中参戦してきた橋下じゅんが演じていた幹部との最終決戦ぐらいだろうか。それ以降のアクションが全く記憶にない。

こうした展開もあって、最終回の印象は「キングカズは良い事を言うなぁ。この一年間の物語のテーマと全く関係ない言葉だけど」である。
「一年」という長い時間の中で描いてきた仮面ライダー達の姿や台詞や物語よりも、最終回でサプライズ登場したキングカズの「夢に遅いも早いもないよ。1センチでもいいから前へ出ようぜ。君の全盛期はこれからだよ」の方がよっぽど印象的だった。
一年もの間しっかりと見てきた『リバイス』のどのキャラクターよりもキングカズの方が魅力的なキャラクターに見えた。
まあ正確に言えば、神谷浩史(本人役)とか鈴村健一(本人役)とか木村昴(バイス役ではなく木村昴本人役)とか伊藤美来(本人役)とか堀川りょう(本人役)とか空気階段(本人役)とかも魅力的だったのだが、最終回が味がしなくなったガムよりも見所がない映像だったことがキングカズの魅力を底上げしていると思う。
演技に関しては素人だったが、言葉の意味と価値を真剣に伝えようとする姿勢だけであそこまで見させるのはさすがキングカズである。
個人的には戸次重幸が「仮面ライダーに変身できた!」ということで喜んでたので、そこだけは掛け値なしに良かった。

とまあ、『仮面ライダーリバイス』に最後まで脱力感を与えられ、「次こそは半年面白いライダーであってほしい。残りはダメでもいいから」という気持ちになっていたところ、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が「『リバイス』も最終回だから『ドンブラザーズ』も最終回だ!」と最終回ネタ被せをしてきて「こいつら容赦ないな」と思った。
ただ『リバイス』のことが本当にどうでもよくなった。
ありがとう『ドンブラザーズ』。次回予告で狂った映像を見せられたことは忘れないよ(来週もあります)。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。