かげきしょうじょ__

斉木久美子『かげきしょうじょ!!シーズンゼロ』が最高すぎた

先日発表されたアイカツ!シリーズのオールスタープロジェクト『アイカツオンパレード!』について取りまとめる作業も一段落して少し暇になったので「あらすじを読む限りどう考えても好きなんだよなぁ」と気になっていた斉木久美子の『かげきしょうじょ!!』……の前日談にあたる『かげきしょうじょ!!シーズンゼロ』に取り掛かったのだが、やだこれ傑作じゃないですか。

『かげきしょうじょ!!』は大正時代に創設され、女性だけで構成された「紅華歌劇団」。その紅華歌劇団の音楽学校「紅華音楽学校」に入学した、人間不信で男性恐怖症で平穏な生活を目指す元アイドル・奈良田愛と、「紅華歌劇団のトップだけが演じる事が許される『ベルサイユのばら』のオスカルになる!」と公言する天真爛漫な少女・渡辺さらさ、そして彼女たちと一緒に入学した第100期生達を描いた物語だ。
今作はその前日談に当たる物語ということで、さらさと知り合った愛が「波風の立たない平穏に時間だけが過ぎていく世界」から脱却し、天に高く輝くトップスタァを志すまでが描かれているわけだが、何が素晴らしいかって家庭環境や幼少期に負ったトラウマのせいで「他人どころか自分にすら何も興味がない」「何もしたくない」「やりたいことも特にない」という奈良田愛が他者に興味を持ち、世界に歩み寄り、未来を目指すまでをわずか二巻でやりきっていることに尽きる。「よくここまでやったな!」と感動した。

家庭環境や幼少期の体験、アイドルとしての最後から見ても奈良田愛の生きてきた世界は、彼女に常に刃を向け続けていた。そこから己を守るために世界に興味を持たず、他者との関わりも最低限にしてきた。
そんな彼女が紅華音楽学校の入学試験で知り合った渡辺さらさがきっかけで、他者に興味を持ち、歩み寄り、ついには夢を語るところまで辿り着くのだ。もうその成長っぷりだけで「最高」だが、最後のエピソードがアイドル経験のある彼女だからこその他者への心配なのも素晴らしい。
同期生達に対しては心を開いているこの感じ。『シーズンゼロ』冒頭とは違いすぎて泣けてくる。

またさらさについても面白い。『シーズンゼロ』において、さらさは狂言回しのような役割を担っているわけだが、さりげない言葉で「貴方はオスカルになれない」と呪いをかけられた上級生の呪いを解いていくし、物怖じしない性格なのでどんどん突き進んでいく。
それは漫画としても痛快なものであるし、同時に作中でも述べられているように彼女に宿った「スターの資格」でもある。全体を通してそこは一切外れていないので本当に最高だ。

そして今その本編を読んでいるわけだが、本編ではしっかりとさらさにスポットが当たっていて滅茶苦茶面白い。いやー最高すぎでは?『シーズンゼロ』を踏まえての本編の最高具合はたまらなすぎる。
アイドル物や舞台演劇物といったショービジネス物好きとしては「好きなものしかない」なので読み進めるのが楽しみだ……。



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